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McLaren “Albert” Speedtail
最終ロットの1台に設定されたMSOのスペシャル仕様

「アルバート スピードテール」は、106台が生産されるスピードテールの最終ロットの1台で、最初のテスト用プロトタイプへのオマージュとして製作された。
このアルバート スピードテールは、2021年8月8日にロサンゼルスのサンセットプラザで開催される、オ・ガラ・ビバリーヒルズが主催のイベント「サンセット GT(Sunset GT)」で一般公開される。
マクラーレン F1から受け継がれたプロトタイプの名称

1992年、マクラーレン F1のテスト車両が、開発拠点の英国・ウォーキング「アルバート・ドライブ」に因んでアルバートと名付けられたことに倣い、同じ3座を持つスピードテールのプロトタイプにもアルバートの名称が引き継がれた。
アルバートと名付けられたスピードテールのプロトタイプ車両は、センターに配置されたドライビングポジションを検証するために使用。ドライバーのエルゴノミクスや視界、リヤビューカメラの位置などがテストされた。また、720Sのフロントパネルを流用して製作されたアルバートは、スピードテールとして初めて公道を走行している。
マクラーレン F1から受け継がれたボディカラー

2018年当時、プロトタイプのエクステリアに施されたカモフラージュは、カウル上のエアフローを表現。その複雑なデザインは、シンプルなビニール製ボディラップによって表現されていた。アルバート スピードテールではこのカラーリングをリスペクトし、MSOが手掛けたなかで最も複雑なペイントテーマに取り組んでいる。
アルバートへのオマージュとして選ばれたカラーは、1992年のモナコGPにおいてマクラーレン F1のロードカーが初公開された際のカラーであるマグネシウムシルバーと、1995年のル・マン24時間レースで優勝したF1 GTRのカラーであるウエノ・グレーの2色が組み合わされている。
マクラーレン・ビバリーヒルズのパリス・マリンズは、アルバート スピードテールについて次のようにコメントした。
「マクラーレン・プロダクション・センターで製造される最後のスピードテールの1台の仕様をどうするかと考えた時、マクラーレン・ビバリーヒルズとしてはブランドの豊かな伝統を尊重し、特にマクラーレン F1というアイコンに敬意を払うことを考えました」
「私たちはMSOと、コンセプトアイデアを含めたすべての段階で協力し、マクラーレンの革新性とデザインの素晴らしさを称えながら、真のオーダーメイドで美しいディテールを持った1台を製作しました。幸運なことに、当社のトップクライアントのために『アルバート』をお届けすることができ、完成した成果に心から感激しています」
繊細なカラーリングを実現したマスキング作業

アルバート スピードテールは、マクラーレン・プロダクション・センター(MPC)で製造された。ペイントワークのデザインは非常に複雑かつ細かいため、MSOチームはまずテストパネルを作り、ペイントプロセスを確認した上で、ビジュアライザーチームと協力してレンダリングに改良を加えている。
アルバート スピードテールの完成までには12週間を要しており、マスキングに2週間、ペイント工程に6週間、その後4週間をかけて、車両の乾燥と再アセンブリが行われている。
カラーリングのマスキングは、大判プリントされたレンダリングデータをもとに、2名のペイントスペシャリストが担当。このマスキング作業は、デザインがボディワークに沿って流れるよう、パネル間の正確な位置を合わせをするために、ホイールを装着した完成車両で行う必要があった。さらに、この凝ったデザインレイアウトを完成させるためには、約2kmにも及ぶマスキングテープが使われたという。
6週間のペイント工程では、完全な精度と完璧な仕上がりを実現するため、一度組み立てられた車両を分解する必要があった。今回、フロントセクションはウエノ・グレー、リヤセクションはマグネシウムシルバーに塗り分けられた。1回目の塗装後、すべてのボディパネルを処理し、完璧なアラインメントを確保するために再アセンブリし、最後にクリアコートが塗布されている。