愛媛までルノー・ルーテシアでエコランしてみた

「ルノー ルーテシアE-TECHフルハイブリッド」で800kmエコランしたらとんでもない数字になった

2モーターを搭載して25.2km/リッターの低燃費を誇るルーテシアE-TECHフルハイブリッド。このクルマで横浜から松山まで、およそ800kmのエコラン大会が実施された。柄にもなく燃費走行に挑戦するチームGENROQ、果たしてその結果は!?

RENAULT Lutecia E-Tech Full Hybrid

横浜~松山の燃費チャレンジ!

スタート地点の横浜・日産自動車グローバル本社前にて。チームGENROQは永田(右)と吉岡(左)の2名がドライバーで参加。
スタート地点の横浜・日産自動車グローバル本社前にて。チームGENROQは永田(右)と吉岡(左)の2名がドライバーで参加。

常日頃から800PSだとか350km/hだとかいう世界が大好きな『GENROQ』にとって、エコランなんてまったく縁遠い世界だと思われているだろう。どちらかというとエコランよりもキャノンボールの方が向いている、と我々自身も思っている。だからルノージャポンから「ルーテシア・メディア対抗燃費チャレンジに参加しませんか」とのお誘いを受けたときは正直戸惑った。しかし、今はスーパースポーツカーも環境を考えなければいけない時代。踏む時は踏む、抑えるときは抑える、このメリハリが大事なのです!(よくわからないけど)。というわけで意を決して本大会へのエントリーを決断した。

このチャレンジはルーテシアE-TECHフルハイブリッドに乗って横浜から愛媛・松山まで走り、その行程の燃費を競うというもの。出発時間やルートは自由、記録は車載の燃費計で行い、燃費の数字が同じ場合は走行時間が短い方が勝ちとなる。日頃、取材で長距離の運転をこなすことが多い我々も、さすがに東京から松山までドライブすることはまずない。燃費走行しながらこの距離を走るのは相当にキツそうだ。そして戦う相手は猛者揃いの他自動車メディアの編集者たち。勝つのはそう簡単な話ではない。

ということで私、永田とゲンロクweb編集長の吉岡は、ない知恵を絞った結果、まず夜にスタートし、途中宿泊はせずに徹夜で松山まで走り続けることにした。理由はコールドスタートを減らすためと、日中の渋滞を避けるためだ。もちろん同燃費の場合は所用時間勝負となることも大きな理由。走行速度はもっとも燃費のいい80km/hにした。何しろ高速走行で一番の抵抗は走行風なのだ。

吉岡の証言①

実のところ坦々と走るのは嫌いではない。ロータス エキシージで青森を目指した際、もっとも燃費と快適性のバランスがいい速度域で走るのは筆者にとって苦ではなかった。血気盛んな若かりし日にも、北海道まで自走で行くのにフェリーの出航時間(青森発か仙台発かも検討しつつ)と平均車速の燃費を計算し、もっとも効率の良い方法を模索したこともある。長年乗っていたクルマ(ラリー車ですが)なので、ある程度データも揃っており、予想通りの給油量だった時は感無量だった。他にもバックミラーのクラウンを気にしたり、前走車に詰まってイライラすることもないし、なにより給油回数を減らした方が早く着くかもしれない(800km先まで、ずっと300km/hで走れるなら話は別だが、そんなクルマはないし、日本ではありえない)。だから今回のイベントは、エコランではなくロングドライブの平常運転で臨んだ。

新東名を駆け抜ける(70km/hで)!

夜に横浜の日産グローバル本社をスタートした我々は、保土ヶ谷バイパスを経由して東名高速に入る。そして新東名、伊勢湾岸道とひたすら西を目指して進む。もちろんスピードは出せない。多少速度を上下してみた結果、80km/h前後よりも70km/hの方がEV走行の領域が増えると判断、70km/hキープで走行を続けることにした。前走車との距離を微妙に保ちながら、とにかくスロットルを踏まないように、踏まないように。さすがに70km/hで一番左の車線を走ると前車に詰まることもなく、一定のペースを保てる。

ところでルーテシアE-TECHフルハイブリッドは1.6リッターの直4に走行用と充電用の2基のモーターを搭載、フルハイブリッドという名前もこれに由来する。その燃費は素晴らしくWLTCモード燃費は25.2km/リッター。走行中はエンジンとモーターを使い分けて走行するのだが、メーターを見ていないとその切り替えにも気づかないくらいにスムーズだ。トランスミッションはドッグクラッチ式のATで、一般的なクラッチやシンクロを持たず、エンジン側に4つ、モーター側に2つのギヤを組み合わせた12通りの変速比を持つという。しかし普通に乗る分には一般的なATと同じようにスムーズで、変速ショックなどは皆無。ハイブリッドとはいえドライバビリティはかなり高く、スポーティな走りにも応えてくれそうだ。

吉岡の証言②

本稿では肝心なことに触れていないが、ルーテシアE-TECHフルハイブリッドには3種のドライブモードが備わる。「マイセンス」「スポーツ」「エコ」である。当然エコラン競争なのだから、「エコ」を選ぶべきだが、驚くべきことにスタートを担当したゲン永田は最初の交代まで、このモードの存在を知らなかった。マジか! 結構走っちゃったぞ……。それにしても人間とは不思議なもので、普段交通をリードするような速度で走っていたとしても、70km/hで走り続けるとそれに慣れてしまう。その結果、90km/hを速いと感じるようになった自分に驚いた。もう怖くてサーキットが走れなくなるかもしれない。

最後はEVモードで……と思いきや

しかし今回はひたすら我慢の走りが続く。吉岡と運転を交代しながら、眠気とも闘いながら走り、一時は燃費表示が2km台後半/100kmを示していた。途中で雨が降ったので走行抵抗が増えることを危惧したが、さほどの降りにはならずひと安心。幸い渋滞にハマることもなく、山陽自動車道から瀬戸大橋に差し掛かる頃にはうっすらと夜が明け始めた。ここで燃費計の数字が徐々に増えていく。いかん、せめてこれ以上悪化しないようにしなければ……。

そこから松山ICまではさらに全神経を集中し、少しでもエンジン停止に持ち込もうとスロットルは極力踏まずに走る。松山ICを降りた時は心底ホッとした。何故ならここからゴールの萬翠荘までは数kmの距離なので、EVモードで走りきれるだろうと思ったのだ。バッテリーはまだ1/3ほど残っている。だがなんと、たまにエンジンがかかるのだ! その度にヒヤヒヤしたが、何とか最後の坂を登り切ってゴールすることができた。燃費は……30km/Lをちょっと超えた。

結果は全参加者が走行が終わった後の3月31日に発表となる。果たしてチームGENROQは優勝できるのか!? 結果は次号で発表……できるほど良ければいいのだけど。

吉岡の証言③

正月は実家で駅伝を見るのが常だが、選手を叱咤する監督の存在意義はなんなのだろうと思っていた。伴走車から応援したり指示を出している(だけのように見える)が、選手は内心「それなら、お前が走れ!」とか思ったりしないのだろうか……。だが今回のエコランで、明け方のスティントを走るゲン永田はまさに脱水症状でふらふらの駅伝選手のよう。伴走するカメラカーから無線で思わず「ゲンスケ頑張れ!」「あと少しだぞ!」と叱咤してしまった。これが監督の心境か……。それにしても普段こういった勝負に情熱を見せないゲン永田が、近年まれに見るほど結果に執着しているのはなぜか? 優勝チームにはフランス取材(旅行?)が用意されるからだ。最近浮かれ気味のゲン永田だが結果発表(本誌編集時点では3月31日とされていたが、4月中旬となった模様)によっては、近年まれに見るほど落ち込むかもしれない。

REPORT/永田元輔(Gensuke NAGATA)
PHOTO/平野 陽(Akio HIRANO)
MAGAZINE/GENROQ 2023年5月号

SPECIFICATIONS

ルノー・ルーテシア Eテック・フルハイブリッド

ボディサイズ:全長4075 全幅1725 全高1470mm
ホイールベース:2585mm
車両重量:1310kg
エンジン:直列4気筒DOHC
総排気量:1597cc
最高出力:67kW(91PS)/5600rpm
最大トルク:144Nm(14.7kgm)/3200rpm
モーター最高出力:36kW(49PS)/1677-6000rpm(メイン)
モーター最高出力:15kW(20PS)/2865-10000rpm(サブ)
モーター最大トルク:205Nm(20.9kgm)/200-1677rpm(メイン)
モーター最大トルク:50Nm(5.1kgm)/200-2865rpm(サブ)
トランスミッション:ドッグクラッチ マルチモードAT
駆動方式:FWD
サスペンション形式:前マクファーソンストラット 後トーションビーム
ブレーキ:前ベンチレーテッドディスク 後ディスク
タイヤサイズ(リム幅):前後205/45R17(7J)
燃料消費率:25.2km/L(WLTC)
車両本体価格:339万円

【問い合わせ】
ルノーコール
TEL 0120-676-365
https://www.renault.jp

1.6リッター直4エンジンとメインモーターのシステム出力は140ps。加速は数値から想像する期待よりも上だ。

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著者プロフィール

永田元輔 近影

永田元輔

『GENROQ』編集長。愛車は993型ポルシェ911。