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McLaren 650S Coupe / 650S Spider
MP4-12Cに代わる新世代モデル
2011年に「MP4-12C」でスーパースポーツの世界に復活を遂げたマクラーレン。その第1世代ともいえる「F1」が鬼才ゴードン・マレーによって生み出されたのは1992年のことで、その生産は1998年まで続いた。それからマクラーレンは、メルセデス・ベンツとの共同プロジェクトである「メルセデス・ベンツ SLRマクラーレン」シリーズの開発や生産に携わり、F1GPと同様にスーパースポーツの世界においてもその存在を主張し続けたのだった。
マクラーレンがMP4-12Cを世に送り出すと、彼らの評価はスーパースポーツの世界では瞬く間に確固たるものになった。それはストイックなまでに追求されたエアロダイナミクスと軽量化技術に象徴される運動性能への取り組みがカスタマーに評価された結果であり、我々の限界はそのようなレベルにはないと言わんばかりに、翌2013年にはアルティメット・シリーズの第1弾モデル、「P1」を発表。このPHEVのシステムを採り入れた375台の限定車は、まさにその名のとおり究極の1台なる評価を得た。
2014年のジュネーブ・ショーで、マクラーレンは早くもそれまでのMP4-12Cに代わる新世代モデルをデビューさせる。その名は「650S」。ボディバリエーションにクーペとスパイダーがあるのはMP4-12Cと同様。さらに「モノセル」と呼ばれるカーボンファイバー製のモノコックシャシーや、ミッドに搭載されるM838T型3.8リッターV型8気筒ツインターボエンジンも、基本的にはMP4-12Cのそれと変わらない。ただしエンジンの中身はピストンとシリンダーヘッドを新設計したほか、カムシャフトのタイミングやエグゾーストバルブを見直すことによって、さらに高出力を可能にしている。最高出力は車名に示されるとおりの650PS。最大トルクは678Nmというのが正式なスペックだ。これに2ペダルの7速DCTを組み合わせる。
ノルドシュライフェのタイムを7.2秒も短縮
モノセルの単体重量がわずかに75kg、乾燥車重はクーペが1330kg、スパイダーでも1370kgに収まる650C。その運動性能もまた魅力的な数字が並ぶ。クーペのデータでは0-100km/h加速は3.0秒、0-200km/hが8.4秒、最高速は333km/h。スパイダーでも0-100km/hはかわらず、0-200km/hが8.6秒に、そして最高速が329km/hと、わずかな違いがあるのみである。またマクラーレンはニュルブルクリンクのノルドシュライフェでのラップタイムをMP4-12Cと650Sで比較し、一気に7.2秒短縮したことも発表している。それはまさに驚異的な進化といえる。
エクステリア・デザインも、その基本的なコンセプトはMP4-12Cのそれに等しいが、フロントマスクは大きくそのイメージを変化させている。P1のイメージ、そして独特な弧を描く、マクラーレンのスピードマークを連想させるヘッドランプまわりの造形や、レーシングモデルの12C GT3から受け継がれた3ピース形状のリヤバンパーなど、そのディテールは650Cでは大きく変わった。結果MP4-12Cからさらにダウンフォース量は24%増加。ボディまわりでもその進化はじつに著しいのである。
カーボンセラミックブレーキが標準装備
サスペンションのセッティングも、MP4-12Cよりやや硬めの設定になった。ドライバーは例によってキャビンのロータリースイッチで、パワートレインとシャシーの各々を独立して、「ノーマル」「スポーツ」「トラック」の各モードを選択することが可能。走行シーンに応じて最適なセッティングを自らの意思で選ぶことができる。ブレーキは、カーボンセラミックブレーキが標準装備となる。
MP4-12Cのメカニズムを受け継ぎ、さらに魅力的なモデルへと進化した650S。それは市場でマクラーレンの存在感をさらに強める、重要な役割を担ったのだった。