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世界的に”カーボンニュートラル”が叫ばれる中、スズキ株式会社もクルマ、バイク、マリンといった製品の電動化と、生産設備等のカーボニュートラル化を強く推し進める戦略を発表。同社の製品のみならず生産体制や研究開発、そしてそれらへの投資などが、スズキの社是と行動理念に基づいて行われるという。
発表では、現在のスズキ車ラインナップにはないBEV(バッテリー電気自動車)の早期投入も明言された。スズキが展開する市場によって、投入時期や展開車種は異なってくるが、やはり日本での展開が最も早い時期となっている。
日本では2023年度、インド・ヨーロッパでは2024年度にバッテリーEV投入
■日本市場
現在、スズキは同社のラインナップにバッテリーEVを持っていない。しかし、今回の発表で日本市場には2023年度投入と明言している。
スズキのEVといえば、2023年1月11日にインド・デリーで開幕した「オートエキスポ2023」において、世界初公開となった新型EVのコンセプトモデル「eVX」が記憶に新しい。
2023年度にBEVを日本市場に投入し、その後2030年度までに6車種をラインナップ。パワートレイン比率としてはBEV20%:HEV(ハイブリッド)80%となっており、スズキらしい地に足のついた現実的な数値設定だ。
展開される6モデルについては、軽自動車から小型車、SUV系が例として挙げられており、軽EVでは200万円を切り100万円台での販売を目指しているという。資料のシルエットにはスズキの軽自動車の代表モデルであるワゴンRらしきモデルの他に、エブリイのようなモデルも見受けられた。2022年7月にトヨタ、スズキ、ダイハツが商用軽バンEVの共同開発と2023年度の導入を発表しており、いよいよその時期が来たということだろう。
また、インド・デリーで開幕した「オートエキスポ2023」において、世界初公開となった新型EVのコンセプトモデル「eVX」や新型SUV「フロンクス」らしきモデルもあり、日本市場への投入が予定されているのかもしれない。
■インド市場
スズキがシェア1位を占め、1981年からインド政府と合弁企業(マルチ・ウドヨグ→マルチ・スズキ・インディア)を設立し現地生産をしているインド市場では2024年からのBEV投入を予定。インド政府はインドにおけるBEV比率を30%と発表しているが、スズキは広大なインドにおける充電インフラの状況などを鑑みあえて15%という数値を挙げている点も、スズキの行動理念である「現場・現物・現実」主義を顕したものと言える。
■ヨーロッパ市場
1991年に設立され、2022年で小型車生産20周年を迎えた現地生産法人マジャール・スズキを擁し、ハンガリーではシェア1位のヨーロッパ市場においても、インド同様に2024年からBEVを投入し、2030年までにSUVを軸に5モデルを展開予定としている。また、電動化への意欲の高いヨーロッパ市場だけに、販売BEV比率も80%を目標に掲げた。
ここまでで予想される各市場でのラインナップを見るに、新型SUV「フロンクス」は世界戦略車としてBEVモデルも前提に展開されるようだ。加えて、常々噂されてきているジムニーEVがヨーロッパ市場に投入される可能性が高い。
なぜヨーロッパ市場のみに?と思えるが、ジムニーの用途を考えれば、充電インフラが整っておらず、しかもジムニーの走破性が求められるような地域ではジムニーEVを使用するのは難しいという判断かもしれない。
電動化への投資額はマツダ以上!? カーボンニュートラル時代の”スズキ”へ
なお、スズキがカーボンニュートラル実現の軸となる電動化関連(研究開発・設備)投資は2兆円を予定しており、同様に電動化加速向けて投資を進めるマツダの1.5兆円を上回る規模だ。またそのうちの0.5兆円(5000億円)は、電動化の重要なポイントとなる電池関連に向けられる。
国内工場のカーボンニュートラル化は2035年度を目標とし、基幹工場である浜松工場では当初2030年度を目標としていたが2027年度に前倒しした。「現場・現物・現実」主義基づくスズキだけに、実現の目処が立っているとみて間違いない。
スズキは冒頭の社是と「現場・現物・現実」、フットワークの軽い「中小企業型経営」、小さく少なく軽く短く美しい「小・少・軽・短・美」を行動理念に置き、スズキ独自の価値を手の届く価格で提供することで、人と社会に必要とされる会社であり続けることをカーボンニュートラル社会においても目指す。
そこには創業者・鈴木道雄氏が作り上げた鈴木織機の「母の織物を楽にしてあげたい」という思いが、今もなお連綿とそしてこれからも受け継がれていく。