時代の波に呑まれ、最後のワークスと言われた4代目
ボディが大きくなるも、車重は軽く670kg
ボディサイズの拡大で、面白く走れる。いや、車重がかさんで動きが鈍る。希望と懸念の新規格移行も、4代目ワークスRS/Zの諸元には驚かされた。
前期型の車重は、3代目と大差なし。全長100mm、全幅80mm、全高70mm。これだけ増しても車重は、5MTのFFが670kg、フルタイム4WDでも720kg! もちろん、エアコンやパワステ、ABSも標準装備で、である。スズキ渾身の新規格対応は、技術の粋でボディの剛性、安全性、軽量が並立している。
外観はめかした異形ヘッドライトと、押しのある形のフロントバンパーが硬軟な見た目をつくる。リヤビューは、初のフルゲートスポイラーでぐるりと締める。エンジンはK6A型がトルクアップ。正にRS/Zの「Z」を表す、最進化形だった。
K6A型エンジンをパッケージにして搭載
K6A型の基本部分は3代目用を受け継ぐ。内部は①ピストンの形状が変わり、圧縮比が8.6にアップ、②バルブスプリングのバネ定数変更、③ダイレクト点火化などの改良が行なわれた。
周辺部では燃料配管の帰路を廃した。簡単にいうと排ガス対策、簡略化、軽量化に繋がる。全体としては、エンジン上部にエアクリーナーケースとインタークーラーが組まれ、K6A型はひとつのパッケージとなった。
97年発売のワゴンRワイド用K10A型から始まった、新車の生産性を求めた形式だ。そして、重量の低減がある。鉄の塊、エンジン搭載用のサブフレームがなくなり、下まわりがスッキリ。これは車両前部の軽量化、ひいては快適性、操安性にも効いたという。
前期5MTは電スロとVVTでトルクが11kgm
カプチーノはさて置き、3気筒DOHCターボエンジンはグレード名にRがつくワークスだけのもの。それも3代目からは過去形となり、後発車両にK6A型が次々と積まれる。思うに部品共通化の促進と、対ダイハツの政策だ。4代目では5MT車に限り、補機で専用が籠められた。軽では類のない、電子スロットルとVVT吸気可変バルブタイミング機構の併載である。
ターボは小型で、最先端の制御によって約1.0kg/㎠のブーストを掛け、最大トルクが11kgm/3500rpm。先代のワークスRと並んで軽トップの座につく。だが、翌年にはスロットルが通常の機械式に換わり、VVTも省かれ、仕様の基本が4AT車や他車同様になる。後期型RS/Zへの移行だ。それでも最大トルクは10.8kgm。レブも7800rpmから 8300rpmに上り、満足のゆく定格だった。
駆動系は別モノ。ギア比のみ継承
5MTのギア比は3代目に倣う。改良点は、まずシフトコントロール。これまでFFは操作感を重視したロッド式だったが、4WDと同じケーブル式に変わった。
続いて4WD系。先代まではトランスファーがミッション後部と一体で、かさばったが、4代目はミッションの右横に配置する別体式だ。さらにカップリングのRBCが、リヤのデフケース内からプロペラシャフトの中間部に移された。
目的は動力伝達経路の効率化。小型化。軽量化。共通化。搭載性。この新駆動系は、記憶では構造が似るワゴンRワイド後期型に先行して採用された。
アルト名のワークスでは最後の4輪ディスク車
RS/Zのブレーキは、フロントに13インチ用ベンチレーテッド式ローターとキャリパーがつく。リヤはソリッドローターの4輪ディスクである。タイヤサイズが155/55R14で、アルミホイールも大径だから「映え」たのだ。
ie系も設定。だが、ワークス史は一度閉幕
高圧縮9.2の実用志向で最高出力60㎰。ie系には、新発想のF6A型SOHCターボエンジンが積まれた。しかし、4代目RS/Zは圧倒的なシェアの獲得前に、加えて高速道路100㎞/h時代を迎えながら、発売2年後の2000年末に車種設定から消える。
後継モデルはなく、一時代が閉幕した。
ワゴン系の市場活況に気圧された。最後の真正ワークスである後期型RS/Zを、俺は筑波サーキットの最終コーナーで転がした。滑りに滑って、オチは止まった先がSUZUKI SPORTの看板前。縁がある。
仕様・諸元(一部) 駆動方式(RS/Z):2WD(FF) (RS/Z):フルタイム4WD 型式(2WD RS/Z):GF-HA22S (4WD RS/Z):GF-HA22S エンジン:K6A型DOHC4バルブ直列3気筒インタークーラー付きターボ ボア×ストローク:68.0mm×60.4mm 総排気量:658cc トランスミッション:5速MT/4AT(FF) 全長×全幅×全高:3395mm×1475mm×1450mm(4WD 1455mm) ホイールベース:2360mm トレッド:フロント1305mm(4WD1300 mm)/リヤ1290mm(4WD1290 mm) 車両重量:670kg(2WD)/720kg(4WD) 乗車定員:4名 タイヤ:155/55R14 車両規格:平成10年10月施行 現行新規格 ※車重等の数値はDOHCターボエンジン搭載車の初期モデルを掲載