ボディサイズ拡大で、面白く走れる? 車重がかさんで動きが鈍る?【連載|スズキ・アルトワークスを語り尽くす】

希望と懸念の平成10年新規格移行! 4代目スズキ・アルトワークス|Dr.SUZUKIのワークス歴史講座_Vol.6

スズキ・アルトワークスの脚周りの写真
エンジン下部のサブフレームがなくなり、エンジン・ミッションはブラケットとマウントでボディフレームに直接留められる。
1998(平成10)年10月施行の軽自動車の規格改定により、ボディサイズが全長+100mm、全幅+80mmとひとまわり大きくできるようになった。各社は98年10月初旬、一斉にニューモデルを投入。アルトワークスも、マッチョな1台に仕上げられた。4代目となる新RS/Zの登場である。
人気連載・週刊【スズキ・アルトワークスを語り尽くす】。ワークスを語り始めたら終わらない(?!)スズキ博士の “ワークスの歴史” を繙く連載、第6回。

TEXT / PHOTO:スズキ博士(Dr. SUZUKI)
アルトワークスの掲載される誌面の写真

スズキ・アルトワークス3代目は、軽自動車初! オールアルミDOHCターボエンジンを採用|Dr.SUZUKIのワークス歴史講座_Vol.5

排気量660ccモデルの発売から4年半が経過した94年秋、そこはかとなく2代目の面影を残した3代目ワークスRS/Zが登場した。ボディは最新の保安基準を満たす構造。一番のトピックが軽自動車「初」のオールアルミDOHCエンジンの搭載だ。これにより、ワークスは軽トップの最大トルクを達成! 人気連載・週刊【スズキ・アルトワークスを語り尽くす】。ワークスを語り始めたら終わらない(?!)スズキ博士の “ワークスの歴史” を繙く連載、第5回。 TEXT / PHOTO:スズキ博士(Dr. SUZUKI)

時代の波に呑まれ、最後のワークスと言われた4代目

DOHCターボ車のグレード名はRS/Z。FFとフルタイム4WDを設定。FFには5MTと4ATがラインアップされた。車両価格は各約110万~、約118万~(写真は後期ieの特別仕様車)

ボディが大きくなるも、車重は軽く670kg

ボディサイズの拡大で、面白く走れる。いや、車重がかさんで動きが鈍る。希望と懸念の新規格移行も、4代目ワークスRS/Zの諸元には驚かされた。
前期型の車重は、3代目と大差なし。全長100mm、全幅80mm、全高70mm。これだけ増しても車重は、5MTのFFが670kg、フルタイム4WDでも720kg! もちろん、エアコンやパワステ、ABSも標準装備で、である。スズキ渾身の新規格対応は、技術の粋でボディの剛性、安全性、軽量が並立している。
外観はめかした異形ヘッドライトと、押しのある形のフロントバンパーが硬軟な見た目をつくる。リヤビューは、初のフルゲートスポイラーでぐるりと締める。エンジンはK6A型がトルクアップ。正にRS/Zの「Z」を表す、最進化形だった。

前期型はヘッドライトの内部が黒色。ドアミラーとドアノブの外面も黒色。後期型はヘッドライト内部がめっきの銀色。ドアミラーとドアノブの外面はボディと同色になった

K6A型エンジンをパッケージにして搭載

K6A型の基本部分は3代目用を受け継ぐ。内部は①ピストンの形状が変わり、圧縮比が8.6にアップ②バルブスプリングのバネ定数変更③ダイレクト点火化などの改良が行なわれた。
周辺部では燃料配管の帰路を廃した。簡単にいうと排ガス対策、簡略化、軽量化に繋がる。全体としては、エンジン上部にエアクリーナーケースとインタークーラーが組まれ、K6A型はひとつのパッケージとなった。
97年発売のワゴンRワイド用K10A型から始まった、新車の生産性を求めた形式だ。そして、重量の低減がある。鉄の塊、エンジン搭載用のサブフレームがなくなり、下まわりがスッキリ。これは車両前部の軽量化、ひいては快適性、操安性にも効いたという。

前期5MTは電スロとVVTでトルクが11kgm

カプチーノはさて置き、3気筒DOHCターボエンジンはグレード名にRがつくワークスだけのもの。それも3代目からは過去形となり、後発車両にK6A型が次々と積まれる。思うに部品共通化の促進と、対ダイハツの政策だ。4代目では5MT車に限り、補機で専用が籠められた。軽では類のない、電子スロットルとVVT吸気可変バルブタイミング機構の併載である。

ターボは小型で、最先端の制御によって約1.0kg/㎠のブーストを掛け、最大トルクが11kgm/3500rpm。先代のワークスRと並んで軽トップの座につく。だが、翌年にはスロットルが通常の機械式に換わり、VVTも省かれ、仕様の基本が4AT車や他車同様になる。後期型RS/Zへの移行だ。それでも最大トルクは10.8kgm。レブも7800rpmから 8300rpmに上り、満足のゆく定格だった。

性能曲線のイメージは機械式スロットル・VVTなしの4代目用K6A型と、それ以前の660㏄エンジンとの比較。最新K6A型は4000rpm前後のトルクが太い。性格が読み取れる

駆動系は別モノ。ギア比のみ継承

5MTのギア比は3代目に倣う。改良点は、まずシフトコントロール。これまでFFは操作感を重視したロッド式だったが、4WDと同じケーブル式に変わった。
続いて4WD系。先代まではトランスファーがミッション後部と一体で、かさばったが、4代目はミッションの右横に配置する別体式だ。さらにカップリングのRBCが、リヤのデフケース内からプロペラシャフトの中間部に移された。
目的は動力伝達経路の効率化。小型化。軽量化。共通化。搭載性。この新駆動系は、記憶では構造が似るワゴンRワイド後期型に先行して採用された。

上が旧5MT。右下が新5MTで、トランスファーはFF用5MTのデフ右側出力とドライブシャフト間にある。当初、FFの新5MTはヘリカル式L.S.D.を装備。もうひとつの図はRBCの配置

アルト名のワークスでは最後の4輪ディスク車

RS/Zのブレーキは、フロントに13インチ用ベンチレーテッド式ローターとキャリパーがつく。リヤはソリッドローターの4輪ディスクである。タイヤサイズが155/55R14で、アルミホイールも大径だから「映え」たのだ。

フロントキャリパーは肉厚のある片持ち式を採用。写真はリヤでサイドブレーキを兼ねる。なお、サスの仕組みは3代目と同一だが、車幅などの違いから主要パーツの互換性はない

ie系も設定。だが、ワークス史は一度閉幕

高圧縮9.2の実用志向で最高出力60㎰。ie系には、新発想のF6A型SOHCターボエンジンが積まれた。しかし、4代目RS/Zは圧倒的なシェアの獲得前に、加えて高速道路100㎞/h時代を迎えながら、発売2年後の2000年末に車種設定から消える。

後継モデルはなく、一時代が閉幕した。

ワゴン系の市場活況に気圧された。最後の真正ワークスである後期型RS/Zを、俺は筑波サーキットの最終コーナーで転がした。滑りに滑って、オチは止まった先がSUZUKI SPORTの看板前。縁がある。

かつて開催された壮大なレースごっこ、K4-GPセパン24時間耐久。RS/Zの部品を丸ごと移した知人の同系アルトで2回、チーム参加した。いずれも24時間後の昼にゴールできた
4代目フルモデルチェンジ アルトワークス 1998年10月~2001年
仕様・諸元(一部)
 駆動方式(RS/Z):2WD(FF)
     (RS/Z):フルタイム4WD
 型式(2WD RS/Z):GF-HA22S
   (4WD RS/Z):GF-HA22S
 エンジン:K6A型DOHC4バルブ直列3気筒インタークーラー付きターボ
 ボア×ストローク:68.0mm×60.4mm
 総排気量:658cc
 トランスミッション:5速MT/4AT(FF)
 全長×全幅×全高:3395mm×1475mm×1450mm(4WD 1455mm)
 ホイールベース:2360mm
 トレッド:フロント1305mm(4WD1300 mm)/リヤ1290mm(4WD1290 mm)
 車両重量:670kg(2WD)/720kg(4WD)
 乗車定員:4名
 タイヤ:155/55R14
 車両規格:平成10年10月施行 現行新規格
 ※車重等の数値はDOHCターボエンジン搭載車の初期モデルを掲載
アルトワークスのカタログと広報資料メモ

15年の沈黙を破り5代目スズキ・アルトワークスが帰ってきた|Dr.SUZUKIのワークス歴史講座_Vol.7

2015年12月24日、アルトでのワークスの名が復活。4代目の販売終了から15年余り、突如5代目ワークスが発表され、その日から早くも5年以上が経った。ここで改めてスズキが5代目に籠めた(もう、あえて“籠めた”を使いたい!)WORKSの魂を見ていこう。 人気連載・週刊【スズキ・アルトワークスを語り尽くす】。ワークスを語り始めたら終わらない(?!)スズキ博士の “ワークスの歴史” を繙く連載、第7回。 TEXT / PHOTO:スズキ博士(Dr. SUZUKI)

キーワードで検索する

著者プロフィール

スズキ 博士 近影

スズキ 博士

当時の愛車、初代ミラターボTR-XXで初代ワークスと競って完敗。機会よく2代目ワークスに乗りかえ、軽自動…