目次
先代は「ミリ波レーダー+単眼カメラ」新型は「単眼カメラのみ」で大丈夫?
先代ヴェゼル(2016年式 ハイブリッドZ Honda SENSING FF )から新型ヴェゼル(e:HEV Z FF)に乗り換えて3カ月経ったが、ロングドライブをする機会も少なくオドメーターは2000kmに未だ届いていない。そんな走行距離が少ない筆者の新型ヴェゼルだが、このサイトのとある取材で伴走車として参加することになり往復330kmのちょっとしたロングドライブができた。常磐自動車道を往復で使う取材行程で、その間に使ってみたHonda SENSING のACC(アダプティブクルーズコントロール)とLKAS(車線維持支援機能)のフィーリングについて先代ヴェゼルをベースに比較してみたい。
新型の感想を前にまずはおさらい。先代ヴェゼルと新型ヴェゼルのHonda SENSINGは、システムで使うハードウェアが大きく変更されている。前方を監視するシステムが先代では「ミリ波レーダー」+「単眼カメラ」のふたつの組み合わせだったのに対し、新型では単眼カメラのみでの対応となっている。新型では、高速画像処理チップにより、これまでミリ波レーダーで行なってきた対象物との距離計測を単眼カメラで実現したとのこと。新型で採用したフロントワイドビューカメラは約100度の有効水平画角で広範囲に遠方まで車両や道路境界線を認識するらしい。旧型のカメラは50度角で遠方になる程認識幅が狭まり、遠方はレーダーのみでの監視だ。素人的にはレーダーとカメラのふたつの組み合わせの方が確実で性能が高そうに感じてしまうが、新型ではカメラひとつでそれを上回るという。
筆者、じつは単眼カメラのみでも凄い性能があることを2年程前に体験していた。メガサプライヤーであるZF社が次世代先進技術の試乗会を開催、その取材にカメラマンとして同行した。取材当日は土砂降りの雨、カメラマンとしては辛い状況での撮影が続いた。プログラムに、ACCとLKASを単眼カメラのみで制御する試乗体験があった。試乗車はスズキのスペーシア、それを高速道路上で試乗して貰うというもの。運転する編集者を撮影するため筆者は後席に乗り込んで試乗がスタート。外は前述のとおり土砂降りで高速では前を走る車がほとんど見えないような状況だった。にもかかわらず、ZFの単眼カメラを装着したスペーシアは、しっかり前方を認識して走っている。その性能に筆者は衝撃を受けると共に「????」だった。何が「????」なのかというと、先代ヴェゼルではワイパー使用時LKASは、キャンセルされてしまうのに、これはワイパーが動作中でも制御が続いていたからだ。単眼カメラだけでもこんなに大丈夫なんだと感心したことを想い出す。
新型ヴェゼル採用の単眼カメラはZF社のものではなくフランスのヴァレオ製だが、どちらにせよ単眼カメラで充分な性能があるのは確かだろう。ちなみに新型ヴェゼル、ワイパー使用時でもLKASはキャンセルされず使用できるようになっている。
さて新型ヴェゼルのLKASを使ってみた印象をお伝えする。
直進時のレーンキープは若干左寄りのように感じる。先代ではどちらかというと逆に右寄りだったのでちょっと違和感あるのかもしれない。寄りすぎというほどではないので慣れが解決してくれるだろう。コーナーでのアシストは新型での進歩が感じられる。先代ではトレースしてくれないようなRでもしっかりコーナーを捉えてくれる。アシストの感じもスムーズになっている。先代では少しカクカクした感じで「機械がやっているな」という感じがあった。新型のそれは基本悪くはないのだが、首都高のようなRの少しきついコーナーでは、ステアリングを戻すのが遅いというか切りすぎという感じがする。実際それで問題はないのだがちょっと筆者のリズムと今のとこ合わないようで気にはなる。
新型のアシスト加減は、先代より断然優れているのだが、じつは先代も納車直後は悪くなかった。先代も当初は高速出口のきついRでもぐいぐいとアシストしてくれ「これはすごいな」と感心していたのだが、半年後の定期点検に出した時から明らかにアシスト量が落ちたと感じた。ちょっときつめのコーナーでは早々とその役目を放棄するようになったのである。問題の多かった1モーターハイブリッドのi-DCDは点検の度にロムの書き換えが行なわれていたようだが(点検後の低速でのシフトタイミングの感じが違うので筆者はそう思っている)、Honda SENSINGも点検時にある理由でロムが書き換えられたのではと思っている。
ホンダの先進技術発表会として「Hondaミーティング」というものが数年毎に行なわれている。4、5年ほど前だろうか、その催しで現在レジェンドに搭載されている自動運転レベル3の実験車両に乗せていただく機会があった。その実験チームの担当者に前述の旨を話し「ヴェゼルのホンダセンシングの制御レベル変えました?」と聞いたところ「うーん、やったかもね」と曖昧な返答を貰ったことがあった。筆者の先代ヴェゼル、事故もしてないのでセンサーの位置がずれたということも考えられないし、新車購入から半年後くらいで劣化するには早すぎる、きっとホンダ側が何らかの理由でコーナーでのアシスト量を減らしたのだと筆者は勝手に思っている(あくまで個人の感想です)。
それはさておき、先代よりLKASは進化しているのは間違いない。ただ使用できる上限の速度は120km/hまでと変わりがない。
ACCは、新型では渋滞追従機能付ACCとなった。高速道路の120km/h区間ができたことで上限は先代の115km/hから135km/hとなり、下限では先代が車速25km/h未満になったところで自動解除されていたところを新型では車速0km/hまでとなり渋滞追尾も可能になったのが大きな進化だ。
渋滞時「これはいい、らくちんらくちん」
今回の取材帰りの常磐道で運よく(!?)渋滞に巻き込まれたのでその実力を体感してみた。
この手のデバイス、最初は本当にまかせて大丈夫なのかどうか慎重になってしまう。一応何かあったらすぐブレーキを踏めるようにと足をブレーキペダル上に待機してACCの動作を見守った。前走車の速度ダウンに合わせこちらも速度が落ちていく。先代ヴェゼルだと30km/hを切ったあたりでピーと警告音がなりACCのシステムが切れてしまうが、新型では低速でもきちんと追従し完全に停止する場面でも怖いと感じることなく制御してくれた。
渋滞時、完全停止することが幾度かあったが、停止してからわずか数秒で前の車が動き出せば自動で発進してくれる。「これはいい、らくちんらくちん」渋滞時のストップ&ゴー程疲れるものはない。スバルのアイサイトや日産のプロパイロットでは渋滞追従はすでに前から実現している機能で、すごく羨ましく思っていたので新型でのACCの進化は素直に嬉しい。
完全停止状態が長く続くと自動で発進はしてくれない。再スタートはステアリングのACCのスピード設定のRES/+を押すかアクセルオンすることで発進、ACCが再開される。ただこの時少し気を付けなければならない。停止が長く続いてシステムが待機になった状態で先行車との距離を10mほど開けてしまってから発進すると、ドキッとするほど加速していくので注意が必要だ。またノロノロ渋滞中の隣車線からの進入車はフロントの単眼カメラはあまり感知していないように感じる。前後バンパーの角についているソーナーとドアミラーのカメラ(筆者のヴェゼルはマルチビューを装備している)が連動して他車が接近してきた場合ナビ画面が切り替わって映像で知らせてはくれるが、その先、ぶつからず止まってくれるのか定かでない。この点は今後経験値を積んでから再度報告できればと思う。まだまだ慣れぬ部分があり運転に集中しなければいけないが、それでも随分と楽になり「クルマは最新モデルが安心で最善」と感じた筆者であった。
今回の取材の燃費もお知らせしておこう。総走行距離326.4km、平均燃費は21.9km/ℓだった。撮影のため、他の取材車と並走したり頻繁に止まったりした割には悪くない数字だと思う。家から首都高に乗り常磐道の守谷SAまでの51kmを帰りも同じ区間止まらず走っていたので比較も兼ねてお知らせする。平均燃費は往路26.2 km/ℓ、復路25.2 km/ℓだった。走行時間もそれぞれ64分と67分と条件はほぼ変わらないので渋滞にも巻き込まれず淡々と走行できればこれくらいの平均燃費になることがわかったのが今回の収穫かな。