スズキ新型スペーシアは三代目へ正常進化!後席の使い勝手を大幅に高める「マルチユースフラップ」を新たに採用

スズキ・スペーシアカスタムハイブリッドXSターボ(左)、スペーシアハイブリッドX(右)
スズキの国内最量販車種に成長した軽スーパーハイトワゴン「スペーシア」が6年ぶりにフルモデルチェンジ。通算三代目となる新型の標準仕様「スペーシア」とエアロ仕様「スペーシア カスタム」が、11月22日に発売される!

REPORT:遠藤正賢(ENDO Masakatsu) PHOTO:中野孝次(NAKANO Koji)/スズキ

堅実に正常進化を遂げた新型スペーシアが登場!

2017年12月にデビューした先代二代目スペーシアの時点で、プラットフォームは軽自動車用「ハーテクト」に一新されて走りは進化し、パッケージングも全面的に改良されて室内空間が拡大。内外装もスーツケースをモチーフとする極めて個性的なデザインとなった。こうしたポイントが購入ユーザーより高い評価を得たことから、今回の三代目では劇的には変化せず、堅実に正常進化を遂げている。

そのなかでエクステリアデザインは、そのモチーフをスーツケースからコンテナに変更。ボディ側面に角丸状の深いビード形状が横長に3本入るとともに、ピラーのボディ同色処理が先代のCピラーからDピラーへと移ったことで、窓ガラス周辺のイメージがスーツケースの持ち手から大容量コンテナへと変化した。

「カスタム」のサイドビュー。横長3本の深いビード形状が新型ならではの特徴

なお、2トーンのボディカラーを選ぶと、Dピラーにあるルーフ色とボディ色の境目に、シルバーデカールのピラーアクセントが装着される。標準仕様はさらに、ホイールキャップもシルバーとベージュの2トーンになり、モノトーン色とは大きく異なる特別感と存在感がプラスされるので、個性的なスタイルを求めるならばぜひオススメしたい。

標準仕様2トーンカラーのサイドビュー。Dピラーにシルバーのデカールが装着されるほかホイールキャップが2トーンに

フロントマスクは、標準仕様こそ先代のテイストを色濃く踏襲するものの、「カスタム」はフロントグリル内のメッキが鱗状から横長となり、押し出しの強さを残しつつもスッキリした印象に。また標準仕様、「カスタム」ともにLEDヘッドランプが全車標準装備となったのは、機能面においても大きなトピックだろう。

先代のイメージを色濃く残す標準仕様のフロントマスク。ヘッドランプはハイ/ロービームがLED式
カスタム」のフロントマスクはグリル内のメッキが横長に。ヘッドランプはフルLED式でシーケンシャルウィンカーも備わる

リヤまわりはコンビランプがバックドアガラスと並列だったのに対し、新型ではやや下側にオフセットされ、コンビランプ自体も縦長に大型化。またライセンスプレートまわりに横長の深いプレスラインがボディ側面と連続する形で入れられ、さらにルーフ幅も広がったことで、どっしりした佇まいとなっている。この部分が新旧スペーシアの識別点として最も分かりやすい。

標準仕様のリヤまわり。拡大されたルーフやコンビランプでどっしりした印象に
「カスタム」のリヤまわり。ルーフエンドスポイラーとエアロ形状のバンパーが装着される

そんなエクステリアに対し、インテリアは明確に変化した。こちらもデザインモチーフがスーツケースからコンテナへと変化しているが、それに伴って先代の大きなアイキャッチとなっていた助手席側インパネアッパーボックスが廃止。代わりに縁のついたオープントレーとなったことで、小物や軽食を気軽に置きやすくなっている。

「カスタム」の運転席まわり。黒を基調としてマットなボルドーのアクセントが随所に入れられている
インパネ助手席側にはオープントレーのほか小物入れが充実

そのほか、ドアトリムが立体的な造形となり、ステアリングのセンターパッドが丸型に変更されたほか、長方形のデジタルメーターが全車に装着。また加飾パネルの仕上げがマットになったのも新鮮だ。

インパネ助手席側にはオープントレーのほか小物入れが充実

新型スペーシア最大の目玉は「マルチユースフラップ」

そして新型スペーシア最大の目玉が、廉価グレード(標準仕様「ハイブリッドG」、カスタム「ハイブリッドGS」)以外に標準装備される、後席座面前端を前後スライドに加え上下回転も可能な「マルチユースフラップ」だろう。

フロントシートの形状などは先代と変わらず。標準仕様のファブリック生地は滑りにくくなりフィット感が向上した
「マルチユースフラップ」が装着されセンターアームレストも追加された新設計のリヤシート。写真は標準仕様
ラゲッジルームは後席格納時の床面がよりフラットなり荷室高が拡大

この「マルチユースフラップ」には、前に引き出して座面長を拡大し膝裏のサポート性を高める「レッグサポートモード」、やや上方向へ回転させてふくらはぎをサポート、脚を伸ばしやすくする「オットマンモード」、あるいは座面前端を真上に向けることで後席に載せた荷物の転落を防ぐ「荷物ストッパーモード」、計3種類のモードを実装。後席の快適性のみならず荷物置き場としての使い勝手もこれ一つで高めてくれる優れものだ。

レッグサポートモード
オットマンモード
荷物ストッパーモード

これ以外に、大型化されるとともに形状も変更されたことでタブレットなどを置きやすくなった格納式「パーソナルテーブル」、静粛性が高められた「スリムサーキュレーター」(空気循環器)、スペーシア初となるセンターアームレスト(注:いずれも廉価グレード以外に標準装備)など、後席をより快適にする装備が充実したのも見逃せない。

前方にスリットが入れられるなど形状が一新された「パーソナルテーブル」
エアコンの冷気・暖気を後席にも循環させる「スリムサーキュレーター」は静粛性が向上

先進安全装備が最新バージョンに進化

走りももちろん進化している。NA(自然吸気)モデルのエンジンがR06A型からより低燃費なR06D型となり、CVTも最新の仕様にアップデート。これにマイルドハイブリッドを組み合わせることにより、標準仕様「ハイブリッドG」FF車でWLTCモード燃費25.1m/Lを達成した。

R06D型NAエンジン+新CVT+マイルドハイブリッドを搭載する標準仕様「ハイブリッドX」のエンジンルーム

なお、その他のNA・FF車は同23.9km/L、NA・4WD車は全車とも同22.4km/L、R06A型ターボエンジンを搭載するカスタム「ハイブリッドXSターボ」はFF車が同21.9km/L、4WD車が同19.8km/Lとなっている。

R06A型ターボエンジン+CVT+マイルドハイブリッドを搭載する「カスタムハイブリッドXSターボ」のエンジンルーム

プラットフォームは軽自動車用「ハーテクト」を先代より踏襲するが、環状骨格構造や構造用接着剤を新たに採用してボディの連続性を向上。

さらに高減衰マスチックシーラーをルーフパネルとメンバーの接合部に、減衰接着剤をアンダーボディ接合面に、遮音バッフルを先代の前席周辺左右四ヵ所に加えて新型では後席周辺の左右四ヵ所にも用いるなど、静粛性を大幅に高めている。

これらの効果は、撮影会場内のラフロードでゆっくり走っただけでも体感できたので、舗装の荒れた幹線道路で雨の日に走ればより明確に感じ取れるに違いない。

そしてADAS(先進運転支援システム)も、水平視野角が従来のステレオカメラの2.6倍に広がった単眼カメラとミリ波レーダー、前後4つずつの超音波センサーを用いたものにアップデート。

衝突被害軽減ブレーキは単眼カメラとミリ波レーダーで車両、歩行者、自転車、二輪車を検知し交差点での検知にも対応する「デュアルセンサーブレーキサポート2」に進化し、前後の超音波センサーで前方と後方の障害物を検知し衝突被害軽減ブレーキを作動させる「低速時ブレーキサポート(前進・後退)」も全車に標準装備された。また車線逸脱警報・抑制機能は、左右の車線だけではなく、アスファルトと草・土などとの境界、縁石やガードレールなどの構造物も認識するよう進化している。

ADAS用センサー構成図と検知イメージ

さらに、標準仕様「ハイブリッドX」の「セーフティプラスパッケージ装着車」と「カスタム」全車に標準装備される、全車速追従機能付きアダプティブクルーズコントロールには、新たに停止保持機能や車線維持支援機能(レーントレースアシスト)、車線変更時補助機能(レーンチェンジアシスト)、カーブ速度抑制機能が追加。これに伴い電動パーキングブレーキとオートブレーキホールド機能も搭載されることで、高速道路のみならず市街地での疲労軽減も図られるようになった。

電動パーキングブレーキとオートブレーキホールド機能のスイッチはシフトレバーの上に備わる

ボディカラーは標準仕様がモノトーン8色・2トーン4種類の計12種類。カスタムがモノトーン7色・2トーン4種類の計11種類で、グレード構成と価格は別表の通り。奇しくも先代と同様に数ヵ月先んじて世代交代した最大のライバル・ホンダN-BOXにあらゆる面で追いつき追い越せる存在になる……か?

標準仕様のカラーラインアップ
「カスタム」のカラーラインアップ

【新型スペーシア グレード構成・価格】
<標準仕様>
ハイブリッドG(FF/4WD):153万100円/165万6600円
ハイブリッドX(FF/4WD):170万5000円/182万4900円

<カスタム>
ハイブリッドGS(FF/4WD):180万1800円/192万5000円
ハイブリッドXS(FF/4WD):199万5400円/211万5300円
ハイブリッドXSターボ(FF/4WD):207万3500円/219万3400円

新型「スペーシア」主要スペック

■スズキ・スペーシア「ハイブリッドX」(FF)
全長×全幅×全高:3395×1475×1785mm
ホイールベース:2460mm
車両重量:880kg
エンジン形式:直列3気筒DOHC
総排気量:657cc
エンジン最高出力:36kW(49ps)/6500rpm
エンジン最大トルク:58Nm/5000rpm
モーター最高出力:1.9kW(2.6ps)/1500rpm
モーター最大トルク:40Nm/100rpm
トランスミッション:CVT
サスペンション形式 前/後:マクファーソンストラット/トーションビーム
ブレーキ 前/後:ディスク/リーディング・トレーリング
タイヤサイズ:155/65R14 75S
乗車定員:4名
WLTCモード燃費:23.9km/L
市街地モード燃費:22.4km/L
郊外モード燃費:25.2km/L
高速道路モード燃費:23.7km/L
車両価格:170万5000円

スズキ・スペーシア「ハイブリッドX」

■スズキ・スペーシアカスタム「ハイブリッドXSターボ」(FF)
全長×全幅×全高:3395×1475×1785mm
ホイールベース:2460mm
車両重量:910kg
エンジン形式:直列3気筒DOHCターボ
総排気量:658cc
エンジン最高出力:47kW(64ps)/6000rpm
エンジン最大トルク:98Nm/3000rpm
モーター最高出力:2.3kW(3.1ps)/1000rpm
モーター最大トルク:50Nm/100rpm
トランスミッション:CVT
サスペンション形式 前/後:マクファーソンストラット/トーションビーム
ブレーキ 前/後:ベンチレーテッドディスク/リーディング・トレーリング
タイヤサイズ:165/55R15 75V
乗車定員:4名
WLTCモード燃費:21.9km/L
市街地モード燃費:19.3Km/L
郊外モード燃費:23.8km/L
高速道路モード燃費:22.0km/L
車両価格:207万3500円

スズキ・スペーシアカスタム「ハイブリッド XSターボ」

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著者プロフィール

遠藤正賢 近影

遠藤正賢

1977年生まれ。神奈川県横浜市出身。2001年早稲田大学商学部卒業後、自動車ディーラー営業、国産新車誌編…