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■米国で人気のシビッククーペを日本でも販売
1993(平成5)年2月19日、ホンダは前年より米国で販売され、好評を得ていた「シビッククーペ」を日本で輸入販売を始めた。シビッククーペは、5代目「シビックフェリオ」をベースにホンダR&Dノースアメリカ(HRA)が開発し、ホンダオブアメリカ(HAM)が生産している米国専用モデルである。

シビッククーペのベースとなった5代目シビックフェリオ
シビッククーペのベースとなったのは、1991年にデビューした5代目シビックのセダン「シビックフェリオ」である。ハッチバックとセダンが設定されたが、セダンはイメージアップのためにフェリオというサブネームが付けられた。
フェリオのボディサイズは、ハッチバックに比べて全長が325mm、ホイールベースが50mm長く、全高は25mm高く、ハッチバックより高級な雰囲気があった。スタイリングは、ロングホイールベース・ショートオーバーハングに傾斜を強めたフロントウインドウを組み合わせ、セダンながらスポーティかつスタイリッシュに仕上げられた。
エンジンは、1.3L直4 SOHCキャブ、1.5L直4 SOHCの仕様違い、1.6L直4 SOHCキャブ、1.6L直4 DOHC EFI、1.6L直4 DOHC VTEC-Eの4種が用意された。VTEC-Eは、VTECを利用した吸気弁停止のリーンバーン仕様である。
米国生産車への輸入は、アコードクーペ/ワゴンから始まった

米国生産車の日本への輸入は、1988年の「アコードクーペ」から始まった。アコードクーペは、1985年にデビューした3代目「アコード」をベースにして開発された。3代目アコードは、当時流行っていたリトラクタブルヘッドライトを採用して人気を獲得した。
アコードクーペは、左ハンドルでクルーズコントロールや本革シート、BOSE社の専用開発オーディオを標準装備するなど、スペシャリティカーらしさをアピール。日本では、左ハンドルの逆輸入車ということで、物珍しさからマニアックなクルマして貴重な存在となった。
1991年には、同じく米国生産車「アコードワゴン」を日本で発売。アコードワゴンは、4代目「アコード」をベースにして、高剛性ワゴンボディを使ったスタイリッシュで滑らかなフォルムと、利便性に優れた大型開口のリアゲートが特徴だった。

2.2L直4 SOHCエンジンを搭載したアコードワゴンは、日本では「アコードU.Sワゴン」を名乗り、アメリカンな雰囲気と使い勝手の良いワゴンのパッケージングで予想を超える人気を獲得。この頃、ちょうど日本でステーションワゴンブームが起こっていたことも人気に拍車をかけたのだ。

続いて日本に上陸したのがシビッククーペ

アコードクーペとアコードワゴンに続いて1993年2月のこの日、シビッククーペが日本でも販売を開始した。アコードクーペと異なり、初めから右ハンドル仕様とし車体左右にHAMのバッジが付いていた。

シビックの基本コンセプトと高性能はそのままに、空力性能に優れたクーペらしい洗練されたスタイリングを採用。またクーペスタイルでありながら、広々とした室内空間を確保し、後席は従来のクーペの概念を超えた広い居住スペースが特徴だった。

サスペンションには、低バネレート、ロングストローク化した4輪ダブルウィッシュボーンを採用。フロントのロールセンター高やL字形ロアアームを最適な設定とし、スポーティなハンドリングとしなやかな乗り心地が楽しめた。

パワートレインは、最高出力130ps/最大トルク14.8kgmを発揮する1.6L直4 VTECエンジンと4速ATの組み合わせのみ。駆動方式はFFで、VTECにより俊敏な走りと低燃費が実現された。
車両価格は、1グレードだけで177.1万円。当時の大卒初任給は18万円だったので、単純計算では現在の価値で226万円に相当する。ちなみに、2年前にデビューしたシビックフェリオの価格は、128.8万円だった。
シビッククーペは、1996年に2代目となったが、2000年に2代目をもって国内販売を終了した。米国ではその後も生産を続けたが、2021年に6代目をもって終了した。

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シビッククーペのような逆輸入車と呼ばれるモデルは、アコードとシビックがその先駆けだろうが、その後他社でも結構な投入例がある。タイ生産のようなコスト低減を狙ったものもあるが、メーカーにとっては少ないリソースで日本でのバリエーションを増やせる効果がある。ユーザーにとっても、欧州風や米国風の希少なクルマを入手できるメリットがあると思われる。
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