寝食分離が可能など、メリットたくさんの常設ベッドにも注目
ファンルーチェと言えば、クオリティが高いキャンピングカーを造ることで知られてるビルダーだ。日本国内のビルダーだが、内外装設計のセンスが良く、一見すると輸入車のようにも見える。
ファンルーチェはキャブコン専門のビルダーだが、お手頃価格のモデルが2台ある。1台は「パタゴニア」、もう1台は「ウラル エイジア」だ。どちらもハイエース バン・ロングをベースにしたモデルだが、前車はどちらかというと二人旅向き、後者はファミリー向きということになる。
今回ご紹介するのは、ウラル エイジアだ。
このモデルの特徴は、フロントエントリーで、車内後方に常設ベッドがあることだ。パタゴニアの方が車内空間にゆとりを感じるが、二人での使用を考えても、実はウラル エイジアの方が使いやすいのではないだろうか。
理由はいくつかあるが、まず常設ベッドの採用により、寝食分離の生活が可能になる。常設ベッドがないキャンピングカーの場合、ダイネットを崩してベッドにするため、食事をしたら必ず後片付けが必要になる。酔っていたりすると、これが意外と面倒になる。しかし、常設ベッドがあれば、ダイネットの後片付けは翌日にして、そのままベッドに潜り込むことができる。
またパーソナルスペースの確保という点でも、このタイプはメリットがある。夫婦やカップルでも、ずっと一緒では息が詰まるという向きには、一人は常設ベッド、一人はダイネットベッドで過ごすことができるからだ。
荷物の収納という点でも、常設ベッドモデルは有利だ。寝る時にベッドを展開するタイプは、その場所を収納として見込むことが難しい。同乗者がいる場合がなおさらだ。ところが常設ベッドの場合は、その部分を荷物スペースに充てることができる。ウラル もベッド下が収納になっており、積載可能重量内においてかなりの荷物を積んでいくことが可能だ。
ちなみにかつて出会ったユーザーの中には、「お客さんが来た時に、ベッドスペースが入口から見えにくいのがいい」という意見を言う人もいた。
装備については、申し分ないレベルだ。常設ベッドにダイネット、ギャレー、バンク収納、FFヒーターにツインバッテリー、ソーラー充電システムなど、欲しいと思うものは大抵付いている。オプションでルームエアコンを装着すれば、さらに快適な旅ができるだろう。
車内は明るいウッド調でまとめられており、オーソドックスが落ち着く空間になっている。だがファンルーチェで特筆すべきは、見えない構造にある。
この車両は、ご覧の通りハイエースの後部をカットして、キャンパーシェルを取り付けている。ハイエースは元来がフレームインモノコック構造のため、ボディ全体で剛性を保つようにできている。しかし、ボディの一部をカットすると剛性面で問題が出てくる。そこで、ファンルーチェは、車両後部にトラス構造の鋼製スペースフレームを入れて強固な剛性を確保しているわけだ。
ハイエースは高速での走行が可能だが、ハイスピードレンジでも車体が捻れるような感覚や剛性不足を感じることなく、スタビリティの高いドライブが可能になっている。
また、6層にもおよぶ多層断熱シェルを使っているのも、このモデルのポイントだ。断熱性というのは、実は家屋同様に大切で、特に寒暖どちらにもさらされるキャンピングカーではなおのこと。断熱性が低いと、冷暖房に無駄なコストがかかってしまう。逆に断熱がしっかりしていれば、冷暖房を使う時間が短くて済むのである。
ファンルーチェのキャンピングカーの評価が高いのは、こうした見えない部分をしっかり造っているからだ。車両価格は720万5000円〜だが、このプライスは内容を考えれば決して高くないと思う。キャブコンとして考えれば、むしろ安いのではないだろうか。