去る2022年7月20日に発表され、25日より発売になった日産の新型エクストレイルは、全車が『e-POWER』と呼称する日産が開発したパワートレインを搭載しているのが特徴です。今さらの話でしょうが、これはガソリンエンジンを発電専用として使う“シリーズハイブリッド方式”に分類されるパワートレインで、2016年のE12型ノートのマイナーチェンジの際に初登場しました。以来、細かな改良が加えられて進化を続け、今般の新型エクストレイルにはモーターとインバーターを刷新することで力強さ・なめらかさ・静かさを進化させた第2世代『e-POWER』が搭載されています。
さらに、モーターを駆動させるための発電機として用いられるガソリンエンジンに、日産が世界で初めて量産化に成功した、圧縮比を8~14まで自在に可変させる可変圧縮比エンジン、“VC(=Variable Compression)ターボエンジン”が採用されているのが大きな特徴です。
『e-POWER』用にチューニングされた“VCターボエンジン”は1.5ℓのK15DDT型で、排気量は1.5ℓでありながらも圧縮比を変化させることで、エンジンの回転数を抑えつつ2.8ℓエンジンに相当するパワーを得ることができます。最高出力は106kW/4400-5000rpm、最大トルクは250Nm/2400-4000rpm。これに組み合わされるBM46型フロントモーターは最高出力150kW、最大トルク330Nmで、リヤ側にもモーターを搭載する4WDモデルには最高出力100kW、最大トルク195NmのMM48型モーターがさらにセットされます。第2世代『e-POWER』はエネルギーマネジメントの最適化によって、競合他社の同セグメントのハイブリッド車と比べ、エンジン作動頻度を3分の1に低減しているといいます。
また、プラットフォームを一新、軽量化をしながら車体の高剛性化を実現しています。これらの要素を踏まえつつ、新型と先代モデルの燃費をざっと見比べてみましょう。
先代モデルのT32型には、日本ではMR20DD型2.0ℓガソリンエンジン搭載車と、2015年に追加投入された、それをベースにした1モーター2クラッチ・パラレル方式の独自のハイブリッドシステム『インテリジェント デュアル クラッチ コントロール』を用いたハイブリッド車があります。駆動方式は新型同様に2WD(FF)と4WDの選択が可能でした。
先代ガソリン車のWLTCモード・カタログ燃費は2WD車で12.8~13.2km/ℓ、4WD車が12.2~13.2km/ℓとなっています(数値の幅は発売年次等による)。ハイブリッド車は2WDが15.0km/ℓ、4WD車が13.8km/ℓです。特に2WDのハイブリッド車の燃費は注目に値するでしょう。一方、新型は2WDが19.7㎞/ℓ、4WDが18.3-18.4km/ℓ(3列シート車のみ18.3km/ℓ)となっています。
新型 | 先代 | |||||
ハイブリッド | ガソリン | ハイブリッド | ||||
駆動方式 | 2WD | 4WD | 2WD | 4WD | 2WD | 4WD |
燃費(km/ℓ) *WLTCモードによるカタログ記載のもの | 19.7 | 18.3-18.4 | 12.8-13.2 | 12.2-13.2 | 15.0 | 13.8 |
1km走行あたりのガソリン代(円/km) *1ℓ=166.2円で計算、小数点第二位四捨五入 | 8.4 | 9.0-9.1 | 12.6-13.0 | 12.6-13.6 | 11.1 | 12.0 |
年間ガソリン代(円) *年間平均走行距離6186kmで計算、小数点以下四捨五入 | 51962 | 55674-56293 | 77944-80418 | 77944-84130 | 68665 | 74232 |
1日あたりのガソリン代(円) *1年=365日で計算、小数点以下四捨五入 | 142 | 153-154 | 214-220 | 214-230 | 188 | 203 |
新型と先代との燃費の差はハイブリッド車の2WD同士で4.7km/ℓ、4WD同士で4.5~4.6km/ℓ。ガソリン車との比較だと2WD同士で6.5~6.9km/ℓ、4WD同士で5.1~6.2km/ℓとなります。1km走行あたりのガソリン代に換算にすると、2022年7月25日現在のガソリン全国平均価格が166.2円なので、その差はハイブリッド車の2WD同士で2.7円、4WD同士で2.9-3.0円。ガソリン車では2WD同士で4.2-4.6円、4WD同士で3.5-4.6円です。
ソニー損害保険株式会社が自家用車を所有する18~59歳の男女1000名に対して行なった、2022年7月現在最新となる2021年の調査では、年間平均走行距離は6186kmです。これを当てはめてみるとガソリン代の差額(小数点以下四捨五入)は、ハイブリッド車の2WD同士で1万6703円、4WD同士で1万8558-1万7939円。ガソリン車との差額は2WD同士で2万5982-2万8456円、4WD同士で2万1651-2万8456円。1か月あたりならハイブリッド車の2WD同士で1392円、4WD同士で1495-1547円。ガソリン車との差額は2WD同士で2165-2371円、4WD同士で1804-2371円となります。
ちなみに1週間のガソリン代の差額だと、一番差の少ないハイブリッド車の2WD同士でも320円ですから、毎週、『餃子の王将』でにんにく激増し餃子(税込319円/関東地方)が付けられ、『すき家』でたまかけ朝食のごはん大盛(税込310円)が食べられ、『マクドナルド』でチーズバーガー(税込160円)とマックフライポテトのS(税込150円)が注文できます。一番差額の大きいガソリン車の2WDや4WDとの差になると546円ですから、毎週、『餃子の王将』で醤油ラーメンや牛骨ラーメン、あるいは焼きそば(いずれも税込528円)を食べることができ、『すき家』で牛丼の並盛(税込400円)にみそ汁(が税込80円)とたまご(税込60円)が付けられ、『マクドナルド』ではビッグマック(税込390円)とマックフランポテトのS(税込150円)を注文できます(注:メニューを例示した各チェーン店は、2022年7月現在、各ジャンルで最多数の国内店舗を擁するチェーン店として選定しています)。
とは言え、新型の車両価格は319~504万円、対して先代モデルの新車価格は219~412万円でしたから、新型の車両価格は92~285万円ほど高くなっています(先代の最高額と新型の最低額の比較だと逆転して、93万円ほど先代の方が高価になります)。総合的な“経済性”を考える場合には、厳密にはこの車両価格の差額――当然ながら先代モデルは今後は中古車になるため確実に安くなります――やハイブリッド車ゆえの維持整備費などを考察する必要がありますが、ことWLTCモード・カタログ燃費については新型――第2世代『e-POWER』――の圧勝です。