時代錯誤かもしれないが、今しか買えない「純ガソリンエンジン」のZとCX-60が刺さった!【’22上期、最も刺さったこの1台】

時代錯誤かもしれないが、今しか買えない「純ガソリンエンジン」のフェアレディZとCX-60が刺さった!【’22上期、最も刺さったこの1台】

2022年の上半期をふりかえり、個人的に「最も刺さった1台」を選出してもらうこの企画。日本カー・オブ・ザ・イヤーの選考委員も務める自動車ライターの工藤貴宏さんが推したのは、高出力の純ガソリンエンジンを搭載した「今しか乗れないクルマ」だった。
TEXT●工藤貴宏(KUDO Takahiro)

新型フェアレディZはピュアエンジン搭載のラストサムライだ!

「気が付けば歳を取ったなあ……」
ここへきてそんなことを自覚する機会が多いのはきっと、過去を懐かしむことが増えたからだ。

「ハイブリッドだ、電気自動車だ。もうすぐ電動化車両以外は買えなくなる」ともてはやされている昨今、自動車ライターとして生計を立てている自分は本来なら迷うことなくそれらを買うべきだろう。でも、現実はそうとは限らない。どうも自分の本能は別を向いていて「今しか乗れないなら、モーターのついていない高出力エンジンを楽しんでおこう」という気持ちになってくる。古い価値が消えていくのを惜しむ気持ちだ。

そういう意味でいえば、2022年上期でもっとも刺さったのは「日産フェアレディZ」の新型である。モーターを組み合わせない405㎰のエンジンを搭載したスポーツカーなんて、今後の日産から出てくる可能性はほぼないだろう。新型フェアレディZはおそらく最後の、ピュアエンジン搭載のハイパワースポーツカーなのだ。時代の変わり目を生きるラストサムライである。

3.0LのV6ツインターボ搭載で405psを発生する新型フェアレディZ。日産の純ガソリンエンジン搭載のスポーツカーはこれが最後になるだろう。
日産・フェアレディZ

もちろん買おうと本気で思っていたのだけど、「もう少し頭金を貯めてから」なんて思っているうちに気づけば生産枠がいっぱいになり受注が締め切られてしまった。今は、残念ながら個人的に新たにスポーツカーを買うタイミングではなかったのが悔やまれる(1年前に2シーターオープンカーが納車されたばかりなので)。この先部品供給が正常に戻り、2年後くらいに受注再開してくれるのだろうか。それを期待したい。

実は、今年の上期に「マツダCX-60」の新車をオーダーした。

自分でお金を出して選んだという意味では、今回の記事テーマである「’22上期、最も刺さったこの1台」に対する答えは、新車をオーダーした「マツダCX-60」かもしれない。なにせ机上の空論とか妄想じゃなく、実際に選んだ1台なのだから。
今どき正気の沙汰とは思えない直列6気筒エンジンへの進出、加えて日産ですらモノコックボディではもう20年近くやっていない(そして今後はやらないであろう)FRプラットフォームの新開発。6気筒エンジンにFRだなんて、ノスタルジックすぎて涙が出てくる……。

マツダ・CX-60は、FRプラットフォームに直列6気筒エンジンを搭載する「絶滅危惧種」といっていい貴重な存在だ。
マツダ・CX-60

メルセデス・ベンツがAMGの超高性能モデルに4気筒エンジンを積む今、6気筒エンジン+後輪駆動にこだわるなんて、(マツダの前向きな狙いはともかくユーザーレベルで称えたくなるのは)古い価値観に過ぎないと思う。でも、いまこういうチャレンジをしたマツダには拍手を送りたいし、それと同時にそこに価値を感じて「今乗っておかねば」と試乗もせずにモーターのつかない6気筒モデルをオーダーした自分の正直な気持ちも冷静に考えてみると「年取ったなあ」だったりするわけで……(笑)

レクサス・IS500

いずれにせよ、ボクにとっての「’22上期、最も刺さったこの1台」のポイントは、モーターを組み合わせないマルチシリンダーエンジンを積んでいること。おもいっきり時代錯誤だけど、そういう視点ではもうすぐ詳細が明らかになる「レクサスIS500」も非常に気になる存在(きっと高くて買えないけど)。
大排気量のV8エンジンなんて、もうラストだろうね。控えめに言って欲しい(たぶん高くて買えないけど)。

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著者プロフィール

工藤 貴宏 近影

工藤 貴宏

自動車ライターとして生計を立てて暮らしている、単なるクルマ好き。

大学在学中の自動車雑誌編集部ア…