日本電産:世界初、アルミケージ搭載の高効率同期リラクタンスモータ「SynRA」を発売

日本電産「SynRA」
日本電産は、同期リラクタンスモータにかご型誘導モータの基本原理を組み合わせる世界初のアルミケージ搭載の高効率同期リラクタンスモータ「SynRA(Synchronous Reluctance Motor with Aluminum Cage Rotor)」をアメリカ市場向けに発売した。

かご型誘導モータは産業用の汎用モータとして使われているもので、商用電源に接続すれば起動でき、回転数を制御するインバータが不要なため導入コストを抑えることができるメリットがあり、ファンやポンプ、コンプレッサ、クレーン、エレベータ等、多くの産業機器に搭載されている。また、インバーターベースのエアコンや家電製品などの可変速需要には、シンプルで低価格のV/Fコンバータ*1で動作させることもできる。したがって、かご型誘導モータは、定速、可変速のアプリケーションに関係なく広く使用されている。一方、構造上ロータとステータの間に「すべり」と呼ばれる回転差(損失)が発生するため、後述の同期リラクタンスモータに比べて効率が低いという欠点がある。

「SynRA」はロータに特別なリラクタンス設計を行い、かご型誘導モータの「かご(ケージ)」構造を組み込むことにより、始動時には誘導モータとして回転し、運転時には周波数に同期して回転するもので、かご型誘導モータに比べ損失が少なく、高効率を達成することが可能。また、さらに高い効率を実現するためにコントローラを使用する場合にも、従来の「同期リラクタンスモータ」のようなベクトル制御や正確な制御パラメーターを装備する必要はなく、単純なV/Fオープンループ制御*2で達成することが可能。本製品は国際高効率規格において最高レベルのIE5を達成しており、さらに低コストで製品化できることが実証できており、かご型誘導モータからの置き換え需要が期待されている。

*1 V/Fコンバータ:電圧(V)を周波数(F)に、または周波数を電圧に変換する装置。電気信号は多くが電圧で出力されるが、伝送系の増幅度や直線性の変化により、電圧のままでは正確な信号伝達ができない。そのため、V/Fコンバータを用いて電圧の変化を周波数の変化に変換して伝送し、その後F/Vコンバータで伝送信号の復調を行う。

*2 V/Fオープンループ制御:インバータで交流モータの可変速を行う制御方式の一つ。構成が簡単で調整も容易である反面、一般的に制御応答性が高くないという制約があるが、SynRAにおいては、高い効率を出すことができる。

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