沖電気が、仏ミプソロジー社と共同でAI画像処理速度を従来の4倍に高速化する新技術を開発

FPGA化のイメージ図
沖電気工業(以下OKI)とOKIアイディエス(以下OIDS)、Mipsology SAS(以下ミプソロジー社)は、OKI独自のAIモデル軽量化技術「PCAS」(※1)とミプソロジー社のFPGA(※2)によるAI処理の高速化プラットフォーム「Zebra」を連携することで、AIモデルに内在する不必要な演算を自動的に削減かつ高速化し、従来の約4倍となるAI画像処理速度60fps以上を達成する技術開発に成功したことを発表した。

本技術は、OIDSとミプソロジー社との国内市場向けFPGA設計開発サービスに適用されることで、高度AIを搭載したアプリケーションを短期間で提供できFPGA実装の自動化を実現する。これにより、AI処理を高速化するために必要なAIプログラムのFPGA実装において課題であった専門的なスキルを持つ技術者不足や、開発時間の短縮・効率化を解決することができる。

AI開発の分野では、エッジ領域における自動運転、遠隔操縦ロボット、遠隔医療、映像監視などを実現するため、処理の高速化(リアルタイム化)と消費電力の低減が求められる。
高度なAIモデル(ディープラーニングモデル)は、大規模で複雑な演算処理を実行する必要があり、計算性能やメモリー使用量などに厳しい制約があるエッジデバイスに搭載するには、AIモデルの軽量化やその演算ロジックを実装するための論理回路設計など専門的な知識を持つ技術者が必要である。FPGAは、複雑な演算処理を並列処理し大容量のデータを高速に処理することができるデバイスだが、汎用的なCPU/GPUよりもさらに複雑な実装や専門知識が必要になることから、開発期間の長期化やコストが高くなるなどの課題があった。

OKIが開発した「PCAS」は、認識精度を最大限維持したままどのようなハードウェアにも最適なAIモデルの軽量化をするものである。ミプソロジー社のAI処理の高速化プラットフォーム「Zebra」と組み合わせることで、AIモデルの軽量化からFPGAへ実装までを自動化することが実現された。これにより、開発期間の短期化やコスト削減が可能となる。AI画像処理の評価実験(評価対象モデルに「YOLOv4(※3)」を使用)では、「PCAS」による軽量化未適用時に比べ4倍となるアプリケーションの実用化に必要な60fps以上の処理速度を達成し、高速かつ低消費電力の効果が期待される。

OIDSは、2020年11月にOIDSとミプソロジー社との国内市場向けFPGA設計開発サービスとの連携を開始している。OKIが提供する軽量化技術PCASとミプソロジー社が提供するZebraプラットフォームにより、顧客からお預かりしたAIプログラムを自動でFPGAへ実装することが可能になり、顧客が求める性能を短期間で実現することが目指される。また、OKIのイノベーション・マネジメントシステム「Yume Pro」の取り組みの一環である「PCAS」の開発を通じて、SDGsに掲げられている社会課題解決型のイノベーション創出活動を推進していく。

なお、本内容については、10月18日(火)より幕張メッセで開催される「CEATEC JAPAN 2022」のOKIアイディエス(ブースNo:K034)ブースでAIモデルを軽量化したFPGAのデモンストレーションの様子を閲覧することができる。

※1:AI軽量化技術PCAS

OKIが開発した、ディープラーニングモデルの演算数を削減して軽量化する技術。

※2:FPGA(field-programmable gate array)

製造後に購入者や設計者が構成を設定できる集積回路。広義にはPLD(プログラマブルロジックデバイス)の一種。

※3:YOLOv4

オープンソースソフトウェア(ソースコードが無償公開され、利用や改変、再配布が条件付きで許可されているソフトウェア)として公開されている物体検出を行うディープラーニングモデルの名称。検出精度が高く、さまざまなシーンで活用されている。

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