東レが炭素繊維複合材料部材の高速熱溶着技術を開発。航空機の高レート生産と軽量化に貢献

本技術を適用した航空機構造模擬部材(デモンストレーター)の熱溶着組立
東レが、炭素繊維複合材料(以下、「CFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastics)」)製の航空機部材を熱溶着により高速で接合する技術を開発したことを発表した。本技術により、CFRP製機体の高レート生産と機体の軽量化が期待されている。2030年以降の機体実用化に向けて実証が進められるとともに、CFRPのさらなる適用拡大が推進される。

開発の背景

世界の航空機需要は、新型コロナウイルスの影響を受け大きく低迷していたが、2025年までには再拡大期に入り、2030年以降には座席数120~240席の次世代航空機の大型需要が予想されている。航空機構造のメインフレームとなる一次構造材には、長年の使用実績から高い信頼性を備える熱硬化性CFRPが適用されているが、部材の組立における接着接合とボルトファスナー締結という煩雑な工程がボトルネックとなり、生産時間の点でアルミ合金製機体に大きく遅れを取っている。今後拡大が予測される大型需要を取り込むには、燃費改善に寄与する軽量化効果に加えて高レートでの生産が重要な課題となっている。

製品の概要

東レにより、航空機向け熱硬化性CFRP部材を溶接のように高速かつ高強度で接合する熱溶着技術が開発された。本技術は、熱硬化性CFRPの表面に熱溶着層を形成させる東レ独自技術が応用されており、部材表面を瞬間的に加熱して接着する簡易な接合方法となっている。この技術により、接着接合とボルトファスナー締結工程不要で熱硬化性CFRPの部材同士、さらには熱硬化性と熱可塑性のCFRP部材の高速組立が実現されている。

本技術を適用した熱溶着層をもつ熱硬化性CFRPは現行航空機向けCFRPと同等の力学特性を有している。また、熱溶着された構造体は現行航空機向けCFRP構造体の一体成形品と同等の接合強度を発現することが実証され、接合技術の実用化検討に向けての信頼性が確保された。さらに、航空機の要素形状を模擬したデモンストレーターにて、熱硬化性CFRPの部材を熱溶着で高速接合することに成功し、要素技術のコンセプトが確認された。この技術により、アルミ合金機体と同等以上の高レート生産が期待されている。

本技術を適用したCFRP製機体はアルミ合金製機体対比でライフサイクル全体のCO₂排出量削減に貢献し、ボルトファスナーの重量削減による機体の軽量化およびさらなるCO₂排出量削減も見込まれている。

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