MotorFan[モーターファン]

ニューモデル、テクノロジーからインプレッションまで、クルマと人生を楽しむニュースサイト

  • 2019/06/30
  • Motor Fan illustrated編集部

【難波 治のカーデザイナー的視点:連載コラム 2回目】Viva!小さなクルマたち! 傑作デザイン:ルノー・サンクとフィアット・ウーノ

このエントリーをはてなブックマークに追加
小さな車こそ、デザインが大事、だと僕は常々考えている。街が綺麗に見えるか、大人びて見えるかは、日常使いの小さい車のデザインレベルにかかっていると思う。今回取り上げるのは、ルノー・サンクとフィアット・ウーノ。どちらも傑作デザインである。

TEXT●難波 治(NAMBA Osamu)

 職業柄「お好きな車をお聞かせいただけますか」という質問を自動車誌の編集者からこれまで何度も受けてきた。だが僕はその質問の意図がどこにあるのかいつもわからなかった。彼らはいったい僕の何を知ろうとしてこの質問を投げてくるのかが理解ができなかったし、さらにはどう答えるのがこの質問に対する正しい回答なのかわからなかった。

 例えば「フェラーリ250LMですかねー」であるとか「911でしょう。もちろんナローですが」というような喰いつきやすい名前か「アルピーヌA110がいいですね」というような少々濃い目の車名が出てくることを期待されていたのかもしれない。そこから「僕」というデザイナーを「型」にはめて分類したかったのだろうか。

 いずれにしても残念ながら僕には沢山の好きな車が存在するし、そもそも自動車のデザイナーをやっているのだから「自動車が好きです」としか本当は答えようがなかったのだが、しかしそれでは少々失礼だろうと思い、気の利いた答えのために必ず決めていた車が実はあった。

 それはルノー5(2世代目でシュペールサンクと呼ばれていた時代のもの)とフィアット・ウーノである。(しかもウーノの場合は『5ドアの方』という注釈を付けて)果たしてこの2台の名前を挙げるとほぼ全員、どの編集者もきまって「え?」という顔をしたのを覚えている。確かにつまらない期待はずれの回答だと僕でも思うが……。

 実はこの両車は1984-85年くらいの同じ時期に登場していて僕がカーデザイナーとして働き始めて数年後、ようやく車の造形についてのイロハがなんとなく見え始めていた頃だったので大いに衝撃を与えられ、僕のカーデザイナーとしての基礎を教示してくれた大切な2台なのである。

 当時は自動車に課せられた衝突安全要件も今ほどは厳しくない時代で、大衆向けのサイズの小さな車は本当にコンパクトに作ることができていた。おまけに軽く作られていたから排気量の小さなエンジンでもキビキビと元気よく走った。だから車を無駄に大きくすることは許されなかったので、デザイナーとしてはデザインのために自由になるデザインしろの余裕がないコンパクトカーのデザインは簡単ではなかったのだが、そんななかでこの2台はとても良くデザインされていた。

 今回もまたクルマのスタンスの話になってしまうが、サイズの大きな車、特に全幅のある車は踏ん張りの効いた安定感あるスタイルを構築しやすい。全高に対する全幅の比率を考えてもらえば理解しやすいと思うが、乗用車の車の高さにはそんなに大きな差がないので幅のある車の方がカタマリとして安定しているように見えるし、事実トレッドも広く設定できるのでボディとタイヤの相対的なバランスの良い見せ方が可能になる。とにかく車は駆動力をタイヤを介して地面に伝えて走る乗りものなので、ボディに対するタイヤの位置取りはとても大切なのだ。車のスタイリング構築のうえでもっとも大切だと言ってもよいくらいだ。(プロのデザイナー同士では、基本的なアーキテクチャができている、とかできていない、とか表現する)

 そこでデザイナーはタイヤを出来るだけ外側に、ホイールアーチを形成する外板のツラまで出して欲しいとエンジニアにお願いをするのだが車体の構造上の限界や溶接の要件があったりしてなかなか簡単にはタイヤは外へ出てくれない。またサスペンションの形式にもよる。どのようなサスなのかによってタイヤの暴れ方も違ってくるし、さらには雪道でタイヤチェーンを装着してフルバンプまでも想定しその時にもタイヤとボディが干渉しないようにしなければならなかったりして、タイヤを外側にセットするのはどんどん難しくなってゆく。それだけに車幅のある車の方が絶対値としてトレッドを広く取れるので安定感あるスタンスを構築しやすくなるのだが、小さな車だって工夫次第でスタンスを良く見せることは可能だ。

 キーは4つのタイヤの位置と車の前後の絞り込みカーブの量の関係にある。人が普通に車を観察(鑑賞)する距離において《いかにタイヤが最外側にあるように見せられるか》それができるかどうかだ。そこで前号で紹介したボート理論を少し登場させよう。車体のW/B間(前輪から後輪までの間)のボディは、中に人が乗るのでほぼズン胴に近いがFOH(フロント・オーバーハング)部やROH(リヤ・オーバーハング)部は車幅の変化がつけられると説いたと思う。

RENAULT 5(Super 5)

ルノーで初めてモデル名を踏襲したサンク。先代は縦置きFFの機械配置で、小型車にしては比較的ノーズが長いデザインをまとっていた。いっぽう新型はジアコーサ方式の通常のFF。しかし先代の印象を踏襲しつつ、キャビンとエンジンルームのバランスを図っている。サンクは新旧ともに後輪スプリングとしてトーションバーを採用、ほぼ車体幅の長さとしたことで左右ホイールベースが異なっていた先代に対し、こちらは車体幅の約半分とすることでWBは同寸とした。

■RENAULT 5 3door
全長×全幅×全高 3590×1590×1400mm
ホイールベース 2407mm
トレッド Ⓕ1323mm/Ⓡ1280mm
タイヤ 155/70R13

自動車業界の最新情報をお届けします!

大車林

大車林

基礎原理から最新技術、産業、環境、行政、モータースポーツ、デザインまで、クルマ社会をキーワードで理解する自動車総合情報・専門用語事典『大車林』の検索サービスです。

キーワードを検索
注目のキーワード
メインシャフト
FR用MTにおいて、アウトプットシャフト(出力軸)をメインシャフト(主軸)と呼んでい...
回頭性
クルマが車体の向きを変える速さや、そのコントロール性をいう。物理量としては、...
バキュームプレーティング
真空蒸着。真空状態下で金属(通常はアルミニウム)を蒸発させて、ベースコートを塗...

カーライフに関するサービス

ランキング

もっと見る