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<特別編> どうなる今後のEV Vol.3 自動運転が変えたEVのカタチ 第44回・東京モーターショー / 2015 【東京モーターショーに見るカーデザインの軌跡】

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メルセデス・ベンツは2015年の東京モーターショーに専用のコンセプトカーを展示。その名もVision Tokyo。

2015年はラグビーワールドカップ・イングランド大会で日本代表が南アフリカ代表を打ち破るという思い出に残る出来事があった。
さらにノーベル賞で日本人科学者が2人も受賞するなど国民みんなが明るいニッポンの未来を予感できた年であった。

この年の第44回東京モーターショーはEV (電気自動車)に対する考え方が大きく変わった変革の年であった。その理由は、前年に国家プロジェクトであるSPI-ADUS(戦略的イノベーション創造プログラム=Automated Driving for Universal Services)がスタートし自動運転社会を実現する取り組みが本格的に動き出したからである。内閣府が主導し各省庁、大学や研究機関、自動車関連メーカー、ITベンチャー企業などが一丸となって力を合わせようというのだ。

当初は自動運転をひとくくりにした研究開発を行なっていたが、パーソナルカーは道路交通法上運転の責任はあくまで人間にあるという論理を拠り所に、一般道は人間の運転をシステムがサポートし、高速道路のみシステムが運転して人間がサポートするという、レベル3を達成するうえでより現実的な考え方が主流になったのであった。
そして時速20㎞程度で決められたエリアのみを走行する公共交通機関などで、システムが運転し人間がサポートするレベル4を、そのうえで完全無人運転のレベル6(2014年SAEが規定した自動運転レベル6段階の定義による)を達成させるという、6段階レベルをパーソナルカーと公共車両との異なる使用目的で分けるという方法によって法的な問題をクリアしようという方針が打ち出された。

そして2020年道路交通法と道路運送車両法が一部改正施行され法律によってレベル3の一般道での走行が世界で初めて許可されたのである。こうしてつい先ごろ満を持してホンダが自動運転レベル3レジェンドのリース契約(購入して分解し技術を盗まれないための防衛策)を開始、世界初のレベル3の実用化を実現し日本が世界を一歩リードした形となったのである。

日産IDS Concept

本題に戻り出品されたコンセプトカーをご紹介しよう。最初に取り上げるのは、人間主体の運転での究極のレベル3目標のパーソナルカーが早くも日産から出品されていた。
NISSAN IDS Conceptだ。
何といっても驚きだったのが高速道路での自動運転モードを選択するとステアリングなどの操作系がインストルメントパネルに折りたたまれて収納されるという、「ここまでやるの?」という提案であった。

現在となっては、先ほど触れた2020年改正道路交通法が制定されレベル3とは何かが明確に示され、あくまですべての道路での運転の法的責任はドライバーにあると規定されたため、ステアリングの収納はNGだ。しかし当時はまだわかりづらかった自動運転とは何ぞやという疑問にリアルな動画映像で答えが示されていて「あっそうか、高速道路ならここまで出来るんだ」という納得の展示であった。

日産IDSコンセプト。EV、自動運転をわかりやすく、魅力的な形で見せてくれた。
自動運転ではシートをやや内側へ、ステアリングを格納。ドライバーとのアイコンタクトがなくなることから、外部へのメッセージも不可欠。

デザインを見てみよう。私が注目したのはEV創成期の頃の際立った個性を無理やり追求するのではなく、わかりやすい未来感と極めてオーソドックスなディメンションをしていた点だ。おそらく2010年発売の初代リーフの変わったデザインがあまり評判が良くなかった点を考慮し、素直にカッコよさを追求したのが良かった。さらにはしっかりとボンネット部のクラッシャブルゾーンを取り、フロントウインドウもリアルな大きさで居住性もルーフの高さも真面目に快適サイズを実現し、基本の骨格のバランスも完璧であった。
近年までの日産のコンセプトカーの中で、仕上げの完成度の高さとデザインレベルの高さでトップに君臨するのではないだろうか。

メルセデス・ベンツVision Tokyo

メルセデス・ベンツVision Tokyo。威圧感のある形は、これでいいのだろうか? 

次に取り上げるのはメルセデス・ベンツのコンセプトカー「Vision Tokyo」である。
並んで展示されていたF015ラグジュアリー・インモーションのワンボックス・バージョンだ。
1950年代の世界最強だったレーシングカーを彷彿とさせる迫力に満ちたシンプルな単一カーブ断面の面造形で、シルバー色も相まって爆撃機みたいに威圧的なデザインだ。

コンセプトは「東京の持つ未来的カオスをテーマにしました」といった内容らしいが、機械として一歩間違えば凶暴になり得るという、クルマの抱える闇の部分をあえて表に暴き出したようなデザインに思え不快であった。

従来の車とは全く異なるインテリア。日本のポップカルチャーなども強く意識。

自動運転の提案も楽観的なもので、サイドウインドウは開閉できるものの金属製で、コンセプトからも明らかなように堂々と完全自動運転のレベル6を想定したモデルであった。
こうした自動運転の最新研究に関してはモーターファン・イラストレイテッド誌の2013年Vol.86に特集が組まれていて、このころ私も記事を書かせていただいていたため内容を把握しているが、この特集記事の中でロボット工学の権威であるヴァージニア工科大学工学部の古川知成教授が、当時すでに人間が主体で運転するか、無人運転かで考え方や研究内容が全く異なってくると指摘されていた。
これは私が以前から申し上げていることだが、自動運転から人間の運転に切り替わるとき、休息や仮眠状態でドライブした場合、生理学的に人間が覚醒するのには時間がかかる。したがって一般道に下りた時の居眠り運転状態の危険をどう回避するのか? といった疑問を投げかけ、安全運転支援システム以上のパーソナルカーでのレベル3以上の自動運転システムが、果たして本当に必要なのかを問うたものであった。
現在でも、切り替え時の過度なストレスによる心拍数の影響から体調面の影響による事故の確率など、生体学や心理学面での研究など課題は山積で、パーソナルカーのレベル5達成までには何年かかるか果てしなく遠いのである。

DAIHATSU NORI ORI

ダイハツNORI ORI。FF車のレイアウトで、ここまで室内を拡大。

最後にぜひとも取り上げなければならないのはDAIHATSU NORI ORIである。
残念ながらEVではなく、「FF車のメリットを生かし・・・」との説明で、当時会場で思わず「なんで?」とつぶやいた記憶がある。誰が見てもフロントのエンジンスペースが小さすぎるし、EVなら納得のコンセプトだ。
しかも自動運転タクシーに最適なディメンションで、公共交通機関として最高レベルのデザインであった。実は私がこの2015年モーターショーで最も感動したコンセプトカーだったのに! もったいない。
そこで、今回はあえてこのNORI ORIを冒頭で述べたレベル4以上の公共交通機関の提案と勝手に解釈してご紹介したい。

乗理降りするためのパッケージが心地よい。どちらが前かがわかるのも、自動運転モデルでは必要なことになってくる。

前後とも垂直で、かろうじてフロントを出っ張らせたデザインのために進行方向が分かりやすい。低速で歩行者と混在して走る自動運転ジドウシャに、まさにぴったりのデザインではないだろうか。シンプルな面造形は断面が美しくおおらかな角アールが全体と良くマッチしていて、ほのぼのとした表情ながらしっかりとした塊り感があるのだ。
機能面ではドアの開閉アイデアも優れモノで、最低地上高を低くしたバリアフリー・カーの提案も斬新で、しかも時速20㎞程度なら限定されたエリアで実現できる可能性は高い。

この手のデザインではまれにみる傑作ではないかと当時感じたのを思い出し、そうしたこともあり今回あえて取り上げさせていただいた。

ドライバーにとってのプライオリティが変わって行くことを感じさせるインパネ周りのデザイン。

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