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内燃機関超基礎講座

出光興産は国内外メーカーと共同でエンジンオイルの開発を行なっている。新しいエンジンが出るたびに「専用オイル」を作っているわけだが、昨今メーカーからの要求は「とにかく低燃費、低フリクション」だという。いまやオイルの粘度は0W-20が標準になりつつある。

エンジン部位によって摩擦現象が違いオイル潤滑に対する要求が異なるのがわかる。低速で荷重が高い部位ほど摩擦が高くオイルに対する要求がシビアになる傾向を示す。具体的には動弁系とピストン摺動部で、この部分のフリクションを減らすためのオイルがメーカーから強く求められるという。添加剤、特に摩擦調整剤の寄与する度合いが著しい。

 まずはエンジンとオイルの基礎的な関係についてチャート図を見ていただきたい。これはストライベック曲線という摩擦係数と回転数、金属同士の接触面に掛かる荷重、オイル粘度との相対関係を示したものだ。

 一番右側の「流体潤滑」状態ではオイルは金属の間にキチンと膜を形成しているフローティング状態。高速だが荷重は低い領域で、クランクシャフトが代表的部位。オイル成分の中ではベースオイル(基油)の性能が重要な部分だ。回転数が低下したり荷重が高くなると、潤滑状態はチャートの左側へ向かって移行する。一旦摩擦は減るが、回転が減少することで油膜の保持力が減りやがて金属同士が接触をするようになる。この「境界潤滑」状態になると一気に摩擦係数はハネ上がる。エンジンにおける機械的フリクションとは実はこの部分に集中しているのだ。

 先述の「流体潤滑」領域でのフリクション低減には潤滑油の低粘度化で対応できるが、「境界潤滑」領域でのフリクション低減は、摩擦調整剤をはじめとする添加剤技術に依存しなくてはならない。その成分や製法は当然ながら秘中の秘だが、技術的に熟成安定しているベースオイルに比べ、昨今のオイル開発はそうした添加剤配合の試行錯誤に明け暮れるのだという。

オイルとは言っても今では通常の鉱物油を使うことは少なく、原油を高度に精製したものが主流。無色透明なのが精製の証明。化学合成したPAOやエステルなども使われるが、配合等はメーカーのノウハウの塊である。

 低フリクション化だけでなく、最近のエンジン特有の問題もある。例えば直噴エンジン。気化されない燃料が潤滑油を希釈して性能を低下させる。DLC(ダイヤモンド・ライク・カーボン)などの表面コーティングはエンジン内における一般的な対金属潤滑ではないので今まで使っていた添加剤の効果が低減してしまう可能性がある。低張力ピストンはオイル消費増大の懸念がある、等々——。

 国内外による要求の差もあるらしい。国内メーカーは燃費要求に厳しく、車重を減らすためにオイル容量も減らす傾向。市街地走行でのスタート&ストップが多いので油温が上がらずオイルへの水分混入の対策が必要。海外メーカーはむしろ耐久性を求めるという。粗悪な燃料やバイオ燃料などが性能維持に与える影響を考慮する必要もあるそうだ。

エンジンオイルの役目は潤滑だけではない。清浄、酸化防止など様々な目的のために添加剤が使われる。添加剤同士は相互に影響しあうため、その配合バランスには細心の注意が必要。メーカーによる特色が色濃く出る部分だ。

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