車検制度のできる前のモデルであるため正確な年式は不明だが1962年式と思われる三菱360デラックス。

筆者は1971年式ミニカスキッパーGTを所有している。そのせいか旧車イベントを取材していると、どうしてもサブロク時代の三菱車に目がいってしまう。とはいえ、三菱製サブロクは残存数が非常に少なく、遭遇すること自体が珍しい。2026年4月5日に埼玉県毛呂山町で開催された「第1回ゆずの里 毛呂山町 昭和平成名車展示会」の会場で三菱製サブロクの元祖とも呼べる三菱360を見つけた時は、小躍りしたくなる気持ちだった。

ライトバンのテールゲートは上下に分かれて開閉する。

喜び勇んでオーナーに話を聞こうと近づけば、今回もまた以前に取材したことのある人だった。三菱360で参加されたのは瓜田則之さんで、数年前に千葉県のイベントで取材させていただいた。だが、その時は参加車が同じ三菱360でもライトバンではなくピックアップだったから同じオーナーとは思わなかったのだ。そこでナンバープレートを見れば、やはり習志野ナンバー。とはいえ瓜田さんのライトバンは初見だったので取材させていただくことにした。

テールゲート開閉用のノブが丸いタイプがデラックスの特徴。

瓜田さんが三菱製サブロクにハマったきっかけは奥様。10数年前に奥様と一緒に旧車ショップへ行った時に見染めたのが初代ミニカだった。小さなテールフィンや前開きドアなどが可愛くて奥様主導で購入することになったのだ。それまで旧車にあまり興味がなかった瓜田さんだが、ミニカを手に入れたことで一変。その歴史を探るうちにミニカの原点とも言える三菱360に俄然興味が湧いた。

エンジンは空冷2気筒2ストロークで強制空冷用シュラウドで覆われている。

三菱360は1961年にバンから発売が開始され、同年中にピックアップトラックを追加。1962年にはトランクを備える乗用車としてミニカが生み出された。三菱360と初代ミニカは、いわば兄弟車のようなものなのだ。三菱はそれ以前にもレオといったオート3輪を製造していたものの、4輪としては1960年発売の三菱500が、軽4輪としては三菱360から歴史が始まっている。初代ミニカをきっかけに、三菱360まで先祖返りしてしまったのだ。

純正指定サイズより小型のドライバッテリーにして軽量化。

当初手に入れた三菱360ははミニカ購入から数年後のピックアップ。荷台にホロをかぶせたスタイルは非常に目立つもので、ほぼ実働だったものだからボディの傷みなどはあえてそのまま残して乗ることにされた。さらにその数年後に見つけたのが今回紹介するライトバンだった。ピックアップは経年をそのまま残して乗っていたから、ライトバンは内外装ともレストアすることにされた。

室内は随所が鉄板剥き出しのままだが味わい深いデザイン。

レストア作業はプロに依頼しているため、その仕上がりは10年近く経った今でもキレイな状態。ただ、補修部品が極端に少ない三菱製サブロクなので、ネットオークションをチェックするのは欠かせないという。マイナーな車種のため出品者でさえ適合車種を知らずに写真と部品番号で判断してほしいなどのケースも良くある。だから整備書やパーツリストを入手しないことには手が出せない。そこで関連書籍などもどんどん増えていった。

とてもシンプルなデザインのメーター。

部品を見つけては買っていたので、気がつけば大量のストックを抱えることになった。すると瓜田さんはさらにミニカや三菱360を買い足してしまう。都合ミニカは2台に、三菱360は3台にまで増殖。ただし、いずれも部品は共通なことが多いため大量のストックで切り盛りできるのだとか。一人でこれだけの台数の三菱製サブロクを揃えた人は、おそらくいないのではないだろうか。スキッパー1台を維持管理するのに精一杯な筆者からすると、尊敬の念を覚えてしまう瓜田さんなのだった。

張り替えられたシートは室内を華やかな雰囲気にしている。