モビリティの電動化に対応し、シェフラーはBEV向けの「e-Bearing Family」製品ラインナップを充実させている。産業機械分野では従来から高電圧環境に対応したモーター支持用ベアリングが存在しており、電食対策が施されているものは既に一般的だ。自動車アクスルの一部では電食対策が施されていないベアリングも使用されているが、高電圧下での使用が増加するにつれて、リスクは高まっている。
ベアリングの電食は、外輪からボール、内輪へと電流が流れることで発生し、転動面に損傷を与えたり波状摩耗を引き起こしたりする現象である。自動車用途でもBEVの普及に伴って同様の対策が求められるようになり、シェフラーは自動車向けの電食対策ベアリング開発を推進してきた経緯がある。
モーター内部の電流は主に以下の2種類に分類される。
①ローターとステーターの間を流れる循環電流。
②ユニット内に蓄積された電気が一気に放出される放電電流。
これらはいずれもベアリング損傷の原因となるため、対策が不可欠だ。循環電流に対しては絶縁ベアリングが必要で、従来はセラミック球を用いた「ハイブリッドベアリング」などが用いられてきたが、高いコストが問題となっていた。そこでシェフラーは、ベアリング外輪に樹脂モールディングを採用した製品「VoltShield-P Ultra」を開発した。
一方の放電電流対策としては、カーボンスティックやカーボンブラシを用いて電流をベアリングの外に逃がす方法が一般的だ。しかし、こうした手法は構造の複雑化や設計面での制約といった課題が伴う。これに対しシェフラーが開発を進めているのがシャントベアリング「VoltPath」である。シャント(迂回)リング機構をベアリング内部に組み込み、外輪ハウジングから流入する電流を、ボールを通過させることなく別経路へ導く構造を採用している。

このシャントリングは軸方向に5mmのスペースがあれば取り付け可能で、ベアリングと一体化した構造となる。したがって、シャフトのたわみやテーパリング、ベンディングモーメントが発生した場合でも摩耗リスクを最小限に抑えることができる。さらに統合設計により、小型軽量化やコスト低減にも寄与する。
また、ベアリングのインピーダンスを測定した結果、ユニット内で抵抗がほとんど生じていないことが分かっている。これは電流がベアリング内部を通過せず、常にシャント経路へ導かれていることを意味する。抵抗によってユニット内部に電流が蓄積されるとノイズ源となり、ADASなどで増加する車両に搭載される各種センサーの誤作動や、ラジオノイズの原因となる。シャントベアリングは電食防止を主目的としながら、電気ノイズの低減にも寄与し、インバーターの制御設計や車両全体のノイズ対策において有効なソリューションとなることが期待される。

もうひとつの注目製品が、シェフラー独自の「テーパーローラーユニット(TRU)」である。電食対策ベアリングとは異なり、純粋な機械的構造の違いで独自の利点を生み出しているものだ。一般的なテーパーローラーベアリングは内輪と外輪が分離構造で、左右から与圧をかけて軸を挟み込んで使用する。高い負荷容量を実現できるためスペースに制約のある部分に採用されるがその一方、与圧による押し付けがフリクション増大を招き、効率を低下させる。

シェフラーのTRUはケージ内側と外側の両側にリブを設け、与圧を用いることなく内外輪の分離を防ぐ構造でフリクション低減と効率向上を実現した。軸方向の幅は少し広がるものの、ラジアル方向にはコンパクト化が可能だ。適用領域は限定されるが、多様な選択肢の存在は顧客にとって大きな価値となるだろう。
電動化の進展により、ベアリングは単なる機械要素から、電気的・システム的機能を担う重要部品へと進化している。シェフラーはその変化に対応し、電食対策、高効率化、ノイズ制御といった複合的な課題に対するソリューションを具体的な製品として提示している。



