白煙問題に終止符!
カーショップポルシェ流RB26リビルド計画
サーキットで全開走行を行なうとマフラーから白煙を吹く…。そんな症状に長年悩まされていたのが、スーパーGTの第一線を走り続けてきた“松田次生”選手のBCNR33だ。タービン交換をはじめ様々な対策を試してきたものの改善には至らず、原因はエンジン本体にある可能性が極めて高い状況となっていた。

そこで今回、白煙トラブルの根本解決とタイムアタックに向けた性能向上を兼ねて、エンジンをフルオーバーホールするプロジェクトがスタートした。
改めて車両の履歴を確認すると、ボディの走行距離はすでに20万kmオーバー。一方、搭載されているRB26DETTは、車両が約10万km時にBNR34ニュルスペック用エンジンをベースとしたリビルトユニットへ換装されている。つまり現在のRB26も10万km以上を走破している計算だ。

しかも、その間には数多くのサーキット走行を経験している。各部に相当な疲労が蓄積していることは想像に難くなかった。
そんな中、企画の方向性を模索していたOPTION編集部に、松田選手から一本の連絡が入る。

「OPTIONで紹介されていたカーショップポルシェ製作のBNR32が気になっているんです。高圧縮仕様なのに耐久性が高く、サーキットでも安心して全開にできる。自分のR33もあんな仕様にしたいんですよ」。
そこで早速、カーショップポルシェ代表の藤本さんへ相談。白煙トラブルの原因究明とエンジンオーバーホール、さらに高圧縮仕様へのアップデートを依頼し、プロジェクトは本格始動することになった。



そして分解作業が始まると、エンジン内部の状態は想像以上だった。
シリンダーには深い縦傷が無数に刻まれ、一部は「ここまで削れた個体は珍しい」と言われるほどの状態。ピストンも棚落ちは免れていたものの、スカート部やピストントップには著しい摩耗が見られ、ピストンクリアランスも場所によっては0.05〜0.10mm近くまで広がっていた。

さらにクランクメタルも偏摩耗が進行。三角形状に摩耗している箇所も確認され、藤本さんは「この状態でブローしていなかったのが不思議なくらい」と語る。

そして、長年悩まされてきた白煙の原因も判明した。
原因はエキゾースト側バルブガイドの摩耗だ。実際にバルブを手で揺するとカタカタと音を立て、約1mm近く動いてしまうほどのガタが発生していた。
これではバルブステムシールが正常に機能するはずもなく、エンジンオイルが燃焼室へ流入。その結果、全開走行時に白煙を発生させていたと考えられる。ここはバルブガイドを打ち替え、クリアランスを適正化していくことになる。


さらに分解を進めると、インテークバルブの1本だけコッターが正しく組み付けられていなかったことも判明。ステム部には深い傷が入り、高回転域で使用を続ければ破断してもおかしくない危険な状態だった。
幸い重大なトラブルには至らなかったが、まさにオーバーホール寸前のタイミングだったと言えるだろう。

こうして現状把握を終えた上で、次はいよいよ新仕様の検討へ移る。松田選手の希望は「サーキットを安心して全開走行できる高圧縮RB26」だ。
藤本さんとの協議の結果、ベースにはHKS製RB26 2.8L STEP2 BCDキットを採用することが決定。圧縮比は9前後を目標とし、既存のVカムシステムとGT2530ツインタービンを活かしながら、高回転型ではなく中低速トルクとレスポンスを重視した仕様を目指す。

使用するHKS製鍛造ピストンは、高温強度に優れるA2618材を採用。ブリッジ構造によって軽量化と高剛性を両立し、フッ素樹脂とモリブデンによる2層コーティングでフリクションも低減している。
重量はピストンとピンの合計で429g。純正の508gから大幅な軽量化が図られる。

コンロッドには特殊素材を用いたH断面タイプを採用。純正より150g以上軽い508gながら、高い強度を確保している。

さらにクランクシャフトは77.7mmストローク仕様へ変更。86.5φピストンとの組み合わせによって排気量は2740ccへと拡大される。
理論上は9000rpmにも対応可能なスペックだが、藤本さんはこう語る。
「高回転を狙うのではなく、回さなくても速いエンジンにしたいんです」。

今後はブロックのボーリング加工や面研、シリンダーヘッドの容積合わせ、バルブガイド打ち替え、ウォータージャケットのエア抜き加工などを実施予定だ。
一方で、予算とのバランスも重視。使用可能なバルブやバルブシートは再利用し、ポート加工もあえて行なわない。費用対効果を考慮した現実的な仕様で組み上げていく方針だ。

こうして始まった松田次生選手のBCNR33エンジン再生計画。
白煙トラブルを完全に解決しながら、タイムアタックで戦える高圧縮2.8L仕様へ。次回は機械加工や組み立て工程、そして詳細なエンジンスペックを紹介していく。藤本さんの言う「回さなくても速いRB26」が、どのような仕上がりを見せるのか。完成が今から楽しみだ。
●取材協力:カーショップポルシェ 山梨県南アルプス市東南湖952-2 TEL:055-284-0813/エッチ・ケー・エス 静岡県富士宮市北山7181 TEL:0544-29-1235
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