連載

【歴史を飾ったライバル対決】

ビッグホーンはロッキー山脈の大角鹿、パジェロは南米の野生山猫

1970年代、北米市場ではアウトドアブームが起こり、レジャーに使えるSUVやお洒落なピックアップが人気を獲得していた。一方、日本ではジープタイプの4WD車はあったが、その目的は山岳地や降雪地で活躍する働くクルマだった。

日本でも、1970年代終盤にはアウトドアを楽しむ若者やヤングファミリー層が徐々に増え始め、北米で流行っていたレジャー用途のSUVの登場が期待され始めた。このような時代背景に最初に対応したのが、いすゞ自動車のピックアップをベースにした「ロデオ・ビッグホーン」と三菱自動車のジープを源流にした「パジェロ」だった。

いすゞ「ロデオ・ビッグホーン」のビッグホーンは、ロッキー山脈に生息する“大角鹿”の名前であり、一方の三菱「パジェロ」は、南米チリやアルゼンチンに生息する野生の“山猫”のこと。両モデルとも、精悍でオンロード/オフロードを問わない走破性に優れた走りをイメージした似通ったネーミングであることが興味深い。

1979年にデビューしたピックアップ4WD「ファスター・ロデオ」(当時のカタログより)

ロデオ・ビッグホーンは、1979年にデビューしたピックアップ4WD「ファスター・ロデオ」をベースにしている。ファスター・ロデオは、GMとの資本提携で生まれたピックアップトラックだが、米国でも販売することを前提にレジャーにも使えるようなカラーリングと乗用車的な装備が特徴だった。

日本では注目されなかったが、米国市場ではGMから販売されて成功を収めた。このことから、いすゞは日本でもレジャー用途の4WDが流行すると考え、ファスター・ロデオをベースにした「ロデオ・ビッグホーン」を作り上げたのだ。

一方の三菱「パジェロ」の始祖は、三菱重工時代の1956年から生産された「三菱ジープ」である。もともとジープは米国陸軍の要請で開発された小型4輪駆動の軍用車であり、ジープの名前が正式に付けられたのは、第二次世界大戦後に米国ウイルス・オーバーランド社が商標登録したことに始まる。

CJ3B-J3型「ジープ」

1953年に三菱重工がウイルス社からジープの国内ライセンス生産を取得し三菱ジープが誕生。1956年からは自社エンジンを搭載して完全国産化を果たし、ジープは民間にも販売されるようになった。

その後、三菱ジープはバリエーションを増やしながら進化を続けていったが、誰でもアウトドアが楽しめるモデルとして、ジープの開発で培った技術を生かした本格クロカン4WDの「パジェロ」が誕生したのだ。

RVや国産車SUVの先駆けとなったロデオ・ビッグホーン

1981年に発売された初代「ビッグホーン」(写真は1984年モデル)

1981年9月にデビューした「ロデオ・ビッグホーン」は、直線基調の「レンジローバー」風のスクエアデザインで、当初は商用登録の2ドアバン(メタルトップ/ソフトトップ)のショート/ロングボディが用意された。

いすゞ初代「ビッグホーン ソフトトップ」(画像は1986年式)

堅牢なラダーフレーム構造に、サスペンションはフロントがダブルウィッシュボーン/トーションバーの独立懸架、リアがリジッドアクスル/リーフ式を採用。パワートレーンは、最高出力73ps/最大トルク14.2kgmを発揮する2.2L 直4 SOHCディーゼルエンジンと4速MTの組み合わせのみ、駆動方式は副変速機付のパートタイム4WDだった。

「ロデオ・ビッグホーン」のコクピット

車両価格は約187万~288万円に設定。当時の大卒初任給は12万円程度(現在は約23万円)だったので、単純計算では現在の価値で約358万~552万円に相当する。ロデオ・ビッグホーンは、本格クロカンらしい走破性に優れた走りを見せたが、ややパワー不足という評価も散見され、さらに翌1982年5月にデビューした三菱「パジェロ」が人気を獲得したこともあり、人気は限定的だった。

1981年9月にデビューしたいすゞ「ロデオ・ビッグホーン」

ビッグホーンの人気が出始めたのは、1984年1月のマイナーチェンジで車名が単独名「ビッグホーン」に変更されてからだった。パワーアップした87ps/18.7kgmの2.2L 直4ディーゼルターボを搭載した乗用車ワゴンを投入し、同時に105ps/16.6kgmの2.0L 直4 SOHCガソリンエンジンも設定された。

1987年10月、ドイツのチューンアップメーカー「イルムシャー社」と提携して商品化したスポーティな「ビッグホーン・イルムシャー」(※SUBARU版/当時のカタログより)

また1987年10月には、ドイツのチューンアップメーカーのイルムシャー社と提携して商品化したスポーティな「ビッグホーン・イルムシャー」、1988年8月には「ビッグホーン・エクスポート」が追加されて人気を獲得した。

乗用車感覚を纏った本格クロカン4WDパジェロ

1982年5月にデビューした初代「パジェロ」

1982年5月にデビューした「パジェロ」が目指したのは、ジープの走破性能を持ちながら、乗用車的な快適性や安全性を合わせ持つクロカン4WDだった。

「パジェロ」のフロントフェイス。角目2灯で、全体的なデザインは平面構成のスッキリしたスタイリング
「パジェロ」のリアビュー

ラダーフレーム構造に、フロントサスペンションはダブルウィッシュボーン/縦置きトーションバーの独立懸架、リアはリジッドアクスル/リーフスプリングを採用。ボディタイプは、当初は2ドアのメタルトップと帆をまとったキャンパストップの2種だけだったが、翌1983年に乗用車系のワゴンタイプとロングボディが追加された。

「パジェロ」のコクピット
「パジェロ」のフロントシート

パワートレーンは、低中速トルクに優れた最高出力95ps/最大トルク18.5kgmの2.3L 直4 SOHCディーゼルターボ、75psの3.0L 直4 SOHCディーゼル、110psの2.0L 直4 SOHCガソリンの3種のエンジンと、4速および5速MTの組み合わせ。駆動方式は、パートタイム4WDである。

「パジェロ」搭載の2.3Lディーゼルターボエンジン+5速MT

車両価格は、189万~256万円(ガソリン車)/163万~255万円(ディーゼル車)。現在の価値では約348万~471万円/300万~469万円に相当する。

パリ・ダカールラリー挑戦で人気爆発!
パリ・ダカールラリー挑戦で人気爆発!

従来の武骨なオフロード4WD車とは異なり、街中の走行も似合うスタイリッシュな新しいタイプのパジェロは瞬く間に人気モデルとなった。また、発売の翌年1983年から参戦したパリ・ダカールラリー(通称、パリダカ)で大活躍することで人気は加速し、その後1990年代のRVブームをけん引する代表的なモデルとなった。

三菱「パジェロ」は1997年、パリ・ダカールラリーにて総合優勝を勝ち取った!

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初代「ロデオ・ビッグホーン」は、三菱「パジェロ」のような大ヒットモデルとはならなかった。両モデルとも、国内でも海外でも通用し、またオフロード/オンロードでも使い勝手がよく、乗用車のような快適さを持つクロカン4WDというコンセプトは同じだったが、より洗練されたマスクとスタイリング、そして豊富なボディバリエーションを持つパジェロの方が人気で圧倒したのだ。ただし、その後のRVブームや現在のSUVの先駆車として位置付けられているのは、1年登場が早かったロデオ・ビッグホーンである。

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