WRCで勝つためにハッチバック化したGRB型インプレッサ WRX

スバル インプレッサ WRXは、世界ラリー選手権(WRC)で勝つためのベース車両として開発されてきたハイパワー4WDスポーツセダンだ。

ところが、2007年10月に登場した3代目となるGRB型インプレッサWRXは、それまでの4ドアセダンから5ドアハッチバックへとボディ形状を変更。インプレッサ WRXといえば、大型リヤウイングを備えた4ドアセダンのイメージが定着していただけに、発売当初はこのハッチバックスタイルを受け入れがたいという人も続出した。

ボディ形状の変更はWRCにおける戦況が深く関係している。当時はショートオーバーハングのコンパクトハッチバックが全盛の時代であり、4ドアセダンのままではライバルに対してディメンション面で不利な立場に置かれる懸念があったのだ。

加えて、当時のスバルチームのエースドライバーであったペター・ソルベルグ選手から前後オーバーハングを短く抑えてほしいとの強い要望もあって、GRB型ではハッチバックボディへと舵を切った。

しかし参戦車両がGRB型へ切り替わった初年度となる2008年の末に、リーマンショックの影響を受けてスバルはWRCからの撤退を表明。WRCで勝つために生み出されたモデルにもかかわらず、戦う舞台を失ってしまったGRB型は不遇の存在とも言えるだろう。

力を入れて開発したモデルだけに、GRB型インプレッサ WRXの性能は高い。ツインスクロールターボを採用したEJ20型エンジンは、280馬力規制を超えた最高出力308psを発揮。可変バルブタイミング機構が吸気と排気の両方に設けられたことで、弱点であった低中回転域のトルクも大幅に向上させている。

リヤサスペンションにはシリーズ初となるダブルウィッシュボーン形式を採用。車両制御に関しては、センターデフの差動制限を任意に調整できる“マルチモードDCCD”や、車両挙動を段階的に調整できる“マルチモードVDC”を採用したほか、ABSの性能も飛躍的に向上した。

2010年7月には、フロントグリルやバンパーを刷新するマイナーチェンジを実施。また、このタイミングでセダン回帰を望むファンの声に応える形で4ドアセダンのGVB型が追加された。

ハッチバック化についてはファンから是非が問われたが、GRB型インプレッサWRXの価格が比較的落ち着いているのは、決してハッチバックモデルが不人気であったためではない。

実のところ、アメリカの自動車輸入に関する“25年ルール”が適用前であるため、海外への流出が本格化していないことが一番の要因として挙がる。

中古車相場は落ち着いているが、数年後には高騰の懸念

3代目GRB型インプレッサWRXの中古車相場は、年式による価格差がほとんど見られず、純粋なコンディションの良し悪しによって値付けが行なわれている状況だ。

そのため、走行距離を問わなければ110万円程度から狙える。流通している個体は走行距離10万km前後のものが中心であり、それらは150万円から200万円が相場だ。

流通台数は大きく数を減らしているものの、現在でも走行距離5万km以下の個体が残っており、手に入れるには最低でも180万円以上の予算が必要となる。

JDM仕様を買い漁る海外バイヤーの影響で、初代GC8型や2代目のGDB型は過走行車であっても200万円以上の値段が付けられており、とくに状態が良い個体は異常ともいえるプレミア価格となっている。

上を見れば、GRB型インプレッサ WRXにも400万円や500万円を超える極上車が存在するが、平均価格はまだ現実的なレベルと言えるだろう。なお、2010年に追加された4ドアセダンのGVB型についても、ハッチバックのGRB型インプレッサ WRXとおおむね同様の価格相場だ。

比較的安く手に入れられるGRB型インプレッサ WRXは、ジムカーナやダートトライアルといったモータースポーツにおける現在の主力車種となっている。GRB型が指名買いされるケースも多く、中古車流通台数の減少とともに今後はさらに価格が上がっていくことだろう。

加えて、すでに現在はカナダの15年ルールが解禁された年式車両も多く、今後さらにアメリカの25年ルールが適用される年式に達すると、手が出せないほどの価格高騰を起こす可能性も否定できない。そして、すでに中古車市場では価格高騰に備えた“青田買い”とも言える兆候が出始めている。

競技車両としてなら今が買い! 乗用目的で選ぶのは少々リスキー

競技車両として使う場合や、インプレッサ WRXを乗り継いでいる人ならGRB型/GVB型の購入ハードルは低い。新規で乗りたい人には後継となるVAB型WRXをおすすめしたい。

GRB型/GVB型インプレッサ WRXともに、走行性能に直結するエンジンやトランスミッションなどの機関部品は前後のモデルとほぼ共通であり、旧型や新型からの部品流用も利く。また、メンテナンス情報などが揃っているため予防整備もしやすい。

しかし、それ以外の部品に関しては徐々に欠品が出始めており、純正部品の供給体制は厳しくなりつつある。そのため良好な状態を維持するためには社外パーツを探す手間や、経年劣化によるトラブル対処など相応の苦労を覚悟する必要がある。

ナンバーなしの競技専用車両として使うのであれば、GRB型/GVB型インプレッサ WRXは最良に近い選択肢と言えるだろう。一方で、一般用途をメインに考えている場合は、維持管理の面で慎重さが求められる。

日常用途で使うなら、より年式が新しく快適性や安全性に勝る後継モデルのVAB型WRXの方が向く。そのうえVAB型WRXなら、GRB型/GVB型インプレッサ WRXに比べて中古車価格は高いものの、流通台数が多く条件に合う個体が探しやすい。

こうしたデメリットを承知のうえで、GRB型/GVB型インプレッサ WRXへの乗り換えや箱替えを検討しているのであれば、とにかく早めの購入が吉となる。

流通台数は以前に比べてずいぶん減っているため、購入したい場合は中古車検索サイトを使って全国から広く探すことになるだろう。

とくにハッチバックとなるGRB型インプレッサ WRXは、中古車検索サイト内で“インプレッサ WRX STI”とは別車種としてカテゴライズされていたり、反対にセダンと同じカテゴリにまとめられていたりと、すべての販売車両が一括で検索できない場合がある。探す際は広い条件から、ボディタイプや年式、型式などの検索条件を絞っていく方が効率よく探せるはずだ。