新型キックスは後席の広さと快適性でヤリスクロスを圧倒




新型キックスはボディサイズがわずかに拡大され、全長はヤリスクロスよりも185mm長くなった。全幅は1800mmに達したうえ、ホイールベースも拡大されたことで新型キックスの最小回転半径は0.2m増したが、ヤリスクロスと同じ5.3mに収まっている。
後席の居住性はボディサイズが大きい新型キックスの方が明らかに高く、リヤドアの開口面積の違いにより乗降性でもヤリスクロスに勝る。また新型キックスは、ヤリスクロスには備わらない後席のエアコン吹き出し口と後席リクライニング機構が追加され、後席にアームレストも追加されたことで快適性でも優位に立った。
ヤリスクロスも4:2:4分割の中央席を倒すことで後席アームレストとして機能させられるが、上質感では6:4分割シートに格納式アームレストとなる新型キックスの方が上と言えそうだ。
荷室空間も新型キックスの方が優位となる。両車の荷室寸法はヤリスクロスが長さ820mm×幅1000mm×高さ871mm、新型キックスは885mm×1025mm×870mm。後席を倒した際の荷室全長はヤリスクロスが1475mmであるのに対し、新型キックスは1500mmだ。
ただし、荷室の使い勝手ではヤリスクロスの方が優れる。どちらも後席を格納すると荷室床面と後席背もたれの間に100mm程度の段差が生じるが、ヤリスクロスはラゲッジボードを上段に設置することで段差をなくすことが可能だ。新型キックスもe-4ORCEモデルを選べば床面が嵩上げされ段差は解消されるが、もちろん荷室容量自体は小さくなってしまう。
総じて、居住性と快適性、積載性に関しては新型キックスがアドバンテージを持つ。しかし、細かな使い勝手ではヤリスクロスに分がありそうだ。見た目に関しては、ヤリスクロスを筆頭とする欧州車風の佇まいとなるライバル車に対し、北米市場を強く意識したキックスの特異なデザインはとりわけ斬新に映る。
日産 キックス X+
ボディサイズ=全長4365mm×全幅1800mm×全高1615mm
ホイールベース=2655mm
車両重量=1430kg
タイヤサイズ=215/60R17(前後)
トヨタ ヤリスクロス ハイブリッドZ
ボディサイズ=全長4180mm×全幅1765mm×全高1590mm
ホイールベース=2560mm
車両重量=1190kg
タイヤサイズ=215/50R18(前後)
第3世代e-POWERで燃費1割アップ! それでもTHS-IIには敵わず


新型キックスの最大の進化点は、第3世代へとアップデートされたシリーズハイブリッドシステム“e-POWER”にある。発電機となるエンジンは旧型の1.2L 3気筒から、発電性能に特化した1.4L 3気筒へと換装され、モータースペックは旧型比+7ps/+35Nmとなる最高出力143ps/最大トルク315Nmへ向上した。
そのうえで、第3世代e-POWERはモーターやインバーター、減速機など5つの主要構成部品を一体化した“5in1”構造としたことでパワートレインの小型軽量化と高効率化が図られた。それにより燃費性能は旧型比で約1割向上し、1ペダルドライブとなる“eペダルステップ”も継続採用されている。
対するヤリスクロスのハイブリッドシステムは、モーター最大トルクは141Nmと新型キックスの半分以下だが、エンジンとモーターを状況に応じて最適に使い分けるシリーズパラレル方式の“THS-II”だ。
両車のWLTCモード平均燃費は新型キックス25.7km/L(X+グレード)、ヤリスクロスは27.8km/L(Zグレード)となる。キックスは高速燃費も旧型の21.6km/Lから23.8km/Lへと引き上げられているものの、26.1km/Lのヤリスクロスには届かない。
絶対的な燃費性能では依然としてヤリスクロスが勝る。しかしパワートレインの上質感や静粛性では新型キックスが圧倒的優位に立つ。
5in1構造の新パワートレインは全体の高剛性化にも寄与し、発生ノイズの低減が図られた。それとともにボディの遮音性も強化されているうえ、ロードノイズが大きい環境では積極的にエンジンを稼働させて充電し、滑らかな路面ではエンジン作動頻度を抑えて静粛性を高める“路面検知制御”も新たに採用された。
また新型キックスの4WDモデルは、緻密な駆動制御により車体の揺れを抑えて乗り心地の向上にも寄与するe-4ORCEへと変わっている。後輪をモーターで駆動するヤリスクロスのE-Fourにも同様の仕組みとなる“ばね上制振制御”が組み込まれるが、制御の緻密さではe-4ORCEが上と言えるだろう。
日産 キックス X+
エンジン形式=直列3気筒ガソリンエンジン+モーター
排気量=1433cc
最高出力=98ps/6000rpm
最大トルク=115Nm/6000rpm
トランスミッション=単速
駆動方式=2WD(FF)
トヨタ ヤリスクロス ハイブリッドZ
エンジン形式=直列3気筒ガソリンエンジン+モーター
排気量=1490cc
最高出力=91ps/5500rpm
最大トルク=120Nm/3800-4800rpm
トランスミッション=電気式CVT
駆動方式=2WD(FF)
価格差とキャラクター差が拡大! 高級志向の新型キックスと実用性のヤリスクロス


ヤリスクロスの最上級グレード“ハイブリッドZ”の新車価格は288万7500円。同等の装備となる新型キックスの“X+”は354万9700円だ。新型キックスは進化ぶりに対して値上げの幅は小さく抑えられているものの、ヤリスクロスとは約66万円もの開きがある。
しかも、ヤリスクロスのZグレードは2026年2月の改良でステアリングヒーターも標準となった。新型キックスのX+グレードFFモデルはシートヒーターが標準装備だが、ステアリングヒーターはオプション扱いだ。
新型キックスには、標準装備品とオプション設定を極力省くことで旧型のベーシックグレードよりも価格を抑え“Xシンプルパッケージ(299万9700円)”も用意されている。しかし、ヤリスクロスのハイブリッドモデルの最廉価グレードは251万200円だ。
絶対的なコストパフォーマンスではヤリスクロスに軍配が上がる。この結果は、キックスの価格が高すぎるのではなく、ヤリスクロスが安すぎると見るべきだろう。ただし、新型キックスはe-POWERの利点を生かして高級志向を強める向きにシフトしている点は各部の変更点からもうかがえる。
それに対し、ヤリスクロスは2020年8月の登場から高い実用性と経済性を武器に今もトップセラーとなっているが、上質感や高級感といった観点では最新のライバル車には一歩譲る。
新型キックスの登場により両車はキャラクターの違いがより明確になっており、購入にあたって迷うことはないだろう。経済性を重視するなら、今でもヤリスクロスがベストバイだ。後席の快適性や個性的な外観に惹かれるなら新型キックスを選ぶべきだ。
車両本体価格
日産 キックス X+:354万9700円
トヨタ ヤリスクロス ハイブリッドZ:288万7500円
