1990年代に生まれた“異端児”が現代に復活!

1959年創業のイタルジェットは、独創的なデザインとメカニズムを持つモデルを数多く送り出してきたイタリアのブランドだ。創業者レオポルド・タルタリーニはレーサーとしても活躍した人物で、その競技志向や型にはまらない発想は、現在のモデルにも受け継がれている。

なかでも強烈なインパクトを残したのが、1990年代後半に登場した2ストローク版ドラッグスター。その過激なスタイルをオマージュしつつ、現代的なセンスと技術で仕立て直したのが新生ドラッグスターだ。イタルジェットの公式資料でも、現行世代は1990年代のクラシックモデルを受け継ぐ存在として紹介されている。

何といっても見た目のインパクトが凄い! 骨格をむき出しにしたボディは、ターミネーターかメカゴジラを思わせるゴツゴツ感。それでいて各部はキレキレで、ブレンボ、パイオリ、ピレリなどのイタリアンブランドで固められている。レバーガードの先端にウインカーを組み込み、前後セクションを絞り込んだシルエットは、まさに“都会のスーパーバイク”。セパレートハンドルや硬めのシートも含め、快適性や積載性を優先した一般的なスクーターとは、最初から目指している方向が違うのだ。

今回試乗したドラッグスター200は、181ccの水冷4ストロークDOHC4バルブ単気筒エンジンを搭載。最高出力は17.5ps/8000rpm、最大トルクは1.58kgm/7750rpmを発揮。ちなみにホンダPCX160(2026年モデル)の最高出力は15.8ps、車両重量134kg。それに対してドラッグスター200は17.5ps、車両重量124kg(乾燥)という組み合わせだから、パワフルな走りは数字からも想像できる。

骨格をあえて見せるトレリスフレームと、前後の片持ち式アームが独創的なスタイルを生み出す。眺めているだけでもメカ好きの心を刺激する一台だ。

普通に曲がる。でも攻めるほど“クセ”が顔を出す

エンジンを始動すると、パルス感を伴う硬質な排気音が響き渡る。右手の操作に対するスロットルの反応もリニアで、軽い車体を弾けるように加速させる。シートへ腰を下ろした瞬間からスポーティだが、走り出せばその印象はさらに強くなる。

そして、誰もが気になるのが独特なフロント周りの乗り味だろう。ドラッグスター最大の特徴が、I.S.S.(Independent Steering System/インディペンデント・ステアリング・システム)。一般的なテレスコピック式フロントフォークを持たず、片持ち式アームとリンク機構によって、ステアリング操作とサスペンションの働きを分離している。

奇抜な見た目に反して、実際に乗ってみると思っていたより“普通”に乗れることに驚いた。車体を傾ければセルフステアが効き、自然にハンドルが切れて曲がっていく。ノーズダイブを抑えながら強いブレーキングができ、荒れた路面からの振動もハンドルへ伝わりにくい。街中を流す程度なら、身構えるほど難しい乗り物ではない。

フロント周りの剛性感も高く、その安心感から思い切ってブレーキをかけられる。最後はABSが作動するため、制動時の安定感も十分。旋回中も車体姿勢がフラットに保たれ、どこか四輪車でレールの上を走っているような、不思議な感覚がある。

ただし、サーキットレベルで攻め始めると難しさも顔を出した。何十年もテレスコピック式フォークに乗り慣れていると、ブレーキングでフロントを沈め、前下がりの姿勢を作りながら旋回へ移る一連の感覚が身体に染みついている。しかし、ドラッグスターはピッチングが少ないため、減速から倒し込みまでのきっかけがつかみにくい。

さらにホイール径はフロント12インチ、リヤ13インチ(タイヤ:120/70-12・140/60-13)。小径のフロントホイールによって前輪荷重を稼ぎ、独特の旋回性を引き出している。クセのある特性に慣れるまでは少し時間がかかるものの、理解すれば一般的なスクーターとは異なる走りを引き出せそうだ。

とはいえ、そんな能書きがどうでもよくなるほどカッコイイのも事実。ぶっ飛んだ存在感だけで「欲しい!」と思わせる目立ち度こそ、ドラッグスター最大の魅力なのかもしれない。

街乗りでは自然なセルフステアが働き、見た目ほど身構えずに曲がれる。いっぽう、ペースを上げるほど一般的なテレスコ式とは異なる感覚が現れるため慣れが必要。

ブレーキング時の安定性は、ドラッグスターの特筆点。姿勢変化が少なく慣れればスムーズなコーナリングが楽しめる。

見た目だけじゃない! 細部まで貫かれた機能美

ドラッグスターは、どの角度から眺めても絵になる。

反面実用性と言う意味では一般的なミッション車と同等程度だ。収納は少なく、タンデムも窮屈で、ハンドルの切れ角も小さい。攻め込めば独自のフロント機構に慣れが必要で、価格も決して安くはない。つまり、全身クセだらけだ。

でも、そのクセこそがドラッグスターの存在理由だ。むき出しの骨格、独自のステアリング、刺激的なエンジン、そしてどこから眺めても美しい機能美。便利さや万人受けではなく、所有する歓びと操る面白さへ振り切った異端児は、眺めるたびにニヤニヤできるのだ。

フロントフォークがなく、片持ちアームとしたセンターハブステアが個性的! 構造上ハンドル切れ角は少なく、Uターンは苦手。

初代同様にフロントショックを分離させた独自のレイアウト(I.S.S.)を採用。特に上下方向からの衝撃を吸収してシルキーな乗り心地を提供してくれる。

リヤ側も大きくレイダウンさせたモノショック仕様。前後ショックともにイタリアのパイオリ製を採用し、プリロード調整が可能。

レバーガード先端にウインカーを配し、しかもシーケンシャル仕様(!)というカスタムパーツ
さながらの出来栄え。

シンプルなフルデジタルメーターは、速度、時刻、燃料残量、走行距離を表示。エンジンオイルやエンプティランプも備える。

逆スラントの攻撃的なリヤセクションはナンバーステーが別体だからすっきりと見せられる。左右にセパレートさせたテールユニットのデザインも秀逸!

シート高は770mm。前方が絞り込まれた形状のため足つきは良好だが、着座位置は一般的なスクーターより前寄りで、ハンドルとの距離も近い。ゆったり座るというより、積極的に操るためのスポーティなポジションだ。

小さなバックレスト状の盛り上がりが腰を支える一方、タンデムスペースはやや窮屈。それでも“完全なおひとり様仕様”ではなく、最低限のパッセンジャースペースは確保している。

シート下収納は、デザインと機能を車体各部へ振り分けた影響もあってごく小さい。メガネと小物が少々入る程度で、一般的なスクーターのような収納力を期待してはいけない。※メガネは私物

気になるギモンを販売店に聞いてみました

欧州車のスペシャリストであり、イタルジェットを扱うベア世田谷の武藤さんに、ドラッグスターについて伺った。

――先代と比べて、どこが進化しましたか?

武藤さん 先代のサスペンション機構を継承していますが、乗り心地や快適性は格段に向上しています。重心も車体中央へ寄せられ、以前のリヤヘビーな印象が払拭されました。

――輸入車だけに、メンテナンスが大変そうです。

武藤さん 以前はオーバーヒートやオイル漏れなどもありましたが、信頼性は上がっています。日常使いなら過度に心配する必要はないと思います。

――どんなユーザーが購入していますか?

武藤さん MVアグスタやドゥカティに乗る方のセカンドバイク用、旧型を所有していた方、当時憧れていたけれど購入できなかった方などですね。40代以上のエンスージアストが多い印象です。

――壊れた場合も修理できますか?

武藤さん 弊店では専用テスターを導入し、納車時にはカウルを外して機関部まで細かくチェックしています。部品供給を含め、安心して乗れるようサポートしています。

※上記は取材時の販売店コメントです。現在の販売・整備体制、部品供給状況とは異なる場合があります。

取材協力
BEAR SETAGAYA ベア世田谷
東京都世田谷区世田谷2-10-11
ベスパ、イタルジェット、SWMをはじめ、国内外のバイクを扱う老舗ショップ。イベントも積極的に開催し、豊富な知識と経験でディープなスポーツスクーターをサポートしてくれる。

公式サイトはこちら

イタルジェット・ドラッグスター200主要諸元

全長×全幅×全高:1890×750×1075mm
ホイールベース:1350mm
シート高:770mm
車両重量:124kg(乾燥)
エンジン:水冷4ストロークDOHC4バルブ単気筒
総排気量:181cc
最高出力:17.5ps/8000rpm
最大トルク:1.58kgm/7750rpm
燃料タンク容量:9L
ブレーキ:前後ディスク
タイヤ:フロント120/70-12、リヤ140/60-13
価格:94万6000円

ドラッグスター125は124ccエンジンを搭載し、最高出力12.5ps/9500rpm、最大トルク1.07kgf・m/7750rpm。車両価格は90万2000円。

※この記事は月刊モトチャンプ2022年3月号を基に加筆修正を行っています

【モトチャンプ編集部】