Hennessey Blackbird
最新スポーツカーへのアンチテーゼ

ヘネシー・スペシャル・ビークルズは、伝説的なマッハ3級超音速偵察機「ロッキードSR-71 ブラックバード」から着想を得た新型ハイパーカー「ブラックバード」を発表した。自然吸気エンジンとマニュアルトランスミッションを組み合わせたツーリング志向のハイパーカーとして開発されており、感性やドライバーとの一体感、長距離ツーリング性能を重視する。
エアロダイナミクスを意識した彫刻作品のようなエクステリアデザインと、アナログな操作感覚を追求しながら、高いパフォーマンスレベルも確保。複雑化・デジタル化・電動化が進む現代のハイパーカーとは一線を画した存在になると、ヘネシー・スペシャル・ビークルズは自信を覗かせる。
ブラックバードは、「ヴェノム GT」「ヴェノム F5」に続くヘネシー第3のハイパーカーとなるが、その価値は単純なスペックだけで測ることはできない。ヴェノム F5が速度や出力、究極のパフォーマンスを追求したのに対し、ブラックバードはドライバーとクルマとのつながりを最優先に設計されたという。ヘネシー・スペシャル・ビークルズ創業者兼CEOのジョン・ヘネシーは次のように説明を加えた。
「ブラックバードは、単なるヘネシーの最新モデルではありません。これは新しい物語の始まりです。私たちにとって3台目のハイパーカーとして開発されたブラックバードは、あえて予想を裏切る存在だと言えるでしょう。これこそ私自身が作りたかったクルマであり、お客様から長年求められてきたクルマでもあります。期待を覆すことは、常に私たちのDNAの一部なのです」
「開発当初から掲げてきたコンセプトは非常にシンプルです。美しさとドラマがあらゆる瞬間を彩り、アナログな体験を提供すること。ブラックバードはスペックを競うモデルではありません。初めてその姿を目にした瞬間から、ステアリングを握り、ドライバーとマシンの一体感を味わう瞬間まで、他に類を見ない感動を提供することを目指しました」
SR-71 ブラックバードをオマージュ

SR-71 ブラックバードからの影響は車名だけにとどまらない。伸びやかなプロポーション、抑制の効いたボディサーフェイス、シャープなショルダーライン、そしてアクティブバーティカルスタビライザー(垂直安定翼)は、航空宇宙技術のエッセンスを現代的なデザインへと昇華させている。
アクティブバーティカルスタビライザーは71mph(約114km/h)で自動展開し、±71度の角度で作動。デザイン性だけでなくエアロダイナミクス性能、そしてストーリー性を象徴する特徴的な装備として採用された。
特徴的なダイヤモンド形状の4本出しエキゾーストシステムは、1947年10月14日に世界で初めて音速を突破した実験機「ベル X-1」の排気ノズルがモチーフ。X-1はアメリカ空軍のチャック・イェーガー大尉の操縦により、高度4万3000フィートでマッハ1.06を記録した。また、F1マシンを思わせるサイドポンツーンや、LMP1マシンをイメージしたウイングレットも採用されている。
専用設計のフルカーボンモノコックとカーボンファイバー製ボディは、高い剛性レベルと軽量化を両立。3000ポンド(約1361kg)未満という軽量設計と、強大なパワーを組み合わせることで、現代のハイパーカーにふさわしいパフォーマンスも手にした。
イルモア製6.2リッターV8自然吸気を搭載

心臓部には、イルモア・エンジニアリングと共同開発した新設計の6.2リッターV型8気筒自然吸気エンジンを搭載。最高出力は800〜850PS、最高回転数は9000rpm超を目標としており、0-60mph加速2.5秒、最高速度220mph(約354km/h)を実現する見込みだ。
イルモア製V8エンジンは、市販自然吸気V8として世界最高レベルの高回転化と高出力化を目指して開発。ターボチャージャーやハイブリッドシステム、人工的なレスポンス制御を一切採用せず、鋭いスロットルレスポンス、リニアな出力特性、後輪へダイレクトにつながる感覚の実現を目指すという。
専用設計のフルカーボンモノコックシャシーとカーボンファイバー製ボディにより、総重量は3000ポンド(約1361kg)未満に抑えられる。アダプティブサスペンション、ABS、トラクションコントロール、ミシュラン・パイロットスポーツ・カップ2タイヤが導入され、アナログなドライビングフィールに見合う高い走行性能を実現する。
グランドツーリング性能も開発コンセプトの中核にあり、1日で800マイル(約1287km)以上を快適に走破できるよう設計。ヴェノム F5より広いキャビンや大型ガラスエリア、ガルウイングドア、アダプティブサスペンション、高い静粛性(NVH性能)、4つのカップホルダー、目立たない形で統合されたデバイス接続機能、さらに機内持ち込みサイズのスーツケース2個に加えて、リヤサイドやキャビン内にも収納スペースが確保されている。
ディスプレイ類を排したコクピット

インテリアも「アナログ・ファースト」を徹底。インフォテインメント用スクリーンやデジタルディスプレイ、ステアリングホイール上のボタンは一切採用されず、大型アナログタコメーターを視覚的・感情的な中心に据えた。一方で必要なコネクティビティは見えない形で組み込まれており、機能性を維持しながらもテクノロジーが主役にならない設計が追求された。
この「アナログ・ファースト」思想は、長期的な価値を維持するためだと、ヘネシーは説明する。ブラックバードは、時代を超えて愛される存在となるよう、プロポーションや素材、クラフトマンシップ、そして機械が織りなす本物の操作感を大切にして設計された。
6速ゲート式マニュアルトランスミッション、露出したシフトリンケージ、物理キーによる始動、アナログスイッチ類、そしてスクリーンレスのコクピットは、ドライバーが積極的にクルマと対話することを求め、その技量に応えてくれる環境を生み出している。
ブラックバードは世界限定71台のみを生産し、価格は税別250万ドルから。設計・開発・生産はすべて米国テキサス州で行われ、2029~2030年の納車を予定。2026年8月14日にカリフォルニアで開催される「ザ・クエイル」での世界初公開を前に、生産予定枠の3分の2以上がすでに売約済みとなっているという。
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