峠もサーキットも席巻! “ゴエフ”が愛された理由
フルサイズ原付スポーツは、70年代のMB50やRG50E、RD50から続くもので、80年代に入ると一気に躍進! 80年代後半になるとNSR50やYSR50などの2ストミニと一緒に峠やサーキットを賑わせた。
中でも87年発売のNS50F、通称“ゴエフ”は約4年間のみの販売だが、『現場』では息が長く根強い人気を集めた。というのも後継機のNS-1は極太フレームやメットインこそ魅力だが、燃料タンク位置や重量増などの兼ね合いからレースで使われることも少なく、何よりメイン層の学生や若者には高価だった。
“走ってなんぼ”のスポーツバイクは、チューニングは元より転倒がつきもの。中古で手頃、パーツも潤沢で走りも素直なNS50Fが恰好の一台だったのだ。

乗り手の技量&度胸を含めた“速さ”だけが絶対正義、仮に遅くともバリバリな某二輪誌のおかげで美しい“ヒザすり”が決められればヒーローだった時代。
そういう筆者(モルツ)はNSすら買えず、一世代前のMBX50に乗っていた。オンボロだったけど、友達のNS50FやNS-1、TZR50などと一緒に走った官能的な2ストの重奏は今も忘れられない。
旧型だって上等じゃないか。ロボットアニメなら終盤によく旧型機で戦うシーンが盛り込まれるけれど胸熱だ! 私的には『エリア88』(漫画版)でタイガーシャークが……おっと、これ以上は話が脱線しそうなので次へ進もうぞ!

フロントブレーキはφ220mmディスクローターと2POTキャリパーのコンビ。こちらはメッシュホースと赤パッドで強化している。

トップブリッジ上にマウントされるセパハン。純正バックミラーは専用品でプレミア化しているとか。

テールトップを外すと収納スペースが現れる。工具やウエス、小分けした2ストオイルなどが十分に収まる容量だ。
10000rpmまで回してナンボ! 2ストの音と加速が胸アツ

ハーフカウルを備えたNS50Fは絶妙なボリューム感がある。スリムには違いないけど、それまでのVT(MC15)にも、CBR(MC14)にも似た滑らかなフェアリングは車体との一体感があり、オーナーの丁寧なリペアもあってガタつきがほとんどない。
試乗車は89年式でピークパワーが8000rpmから10000rpmまで引き上げられた後期型。これにキタコ製ボアアップやCFポッシュ製CDIなどでチューンされていた。
前後スプロケ変更で程良くハイギヤードに振られており、プルプル震えて安定しない回転計の針と、ビィィ~ンという音と四十肩に伝わるスロットルの感触を頼りにシフトアップを繰り返していくと、6500rpm位から一気に加速!
出足だけはどうやったって遅いわけで、中高回転域をキープする方向性で、なるべく信号の少ない道を選んで走るのが楽しいのだ!

キタコ製62.9㏄ボアアップキットでパワーアップ! オリジナルのエンジンはオールブラックだがこちらはシルバー仕上げ。

スプロケットは前15T、後40Tに変更している(純正は前14T、後41T)。

KOSO 製デジタル水温計を追加して温度管理も抜かりなし。

テールランプはLED 化して視認性を向上。なお純正はNSR50やマグナ50、XR50モタードなどと同じ。
18インチから17インチへ! 足周りの進化も見逃せない
NS50Fが先代モデルのMBX50/Fと大きく異なるのは足周りだ。中でもホイールはコムスターから3本スポークのキャスト仕様となり、リム幅はそのままに前後18インチから17インチに小径化されて旋回性が増している。
よく乗らせてもらった友人の峠仕様は純正タイヤ(2.75-17/3.00-17)よりも細いサイズを履いてクイックな感じだったけど、今回のマシンはちょい太め(80/90-17:100/90-17)を装着し、落ち着いた倒し込みで直進安定性も増している印象だった。
走る場所もタイヤの銘柄も違うし、大した差じゃないかもだけど原付は些細な違いも顕著だし、スポーティに走るならタイヤの選択肢も重要なのだとあらためて感じた。
前期・後期、どこが違う?


NS50Fはエンジン仕様の違いで87年式を前期型(写真左)、88年式以降を後期型(写真右)と分けることが多い。年式による違いをざっくり挙げると、最高出力は前期型が7.2ps/8000rpm、後期型が7.2ps/10000rpm。ほかにもキャリパー色、ブレーキディスク穴数、サイレンサー形状、ステップステー周辺のフレーム形状、キーヘッド、外装表記などに違いがある。89年型ではデュアルヘッドライトも採用された。
走って、イジって、覚えられる! MT入門にも絶好の一台
フルサイズの原付ミッション車は「普通のバイク(250cc等)と同じような感覚で乗れる」という声を耳にする。原付免許のみの人からすれば、中型排気量へのステップアップにも絶好の一台と言えるだろう。
なかでもNS50Fはシンプルな作りだから整備もしやすく、整備の基礎が自然と身に付きやすい。機関部もNSR50やCRM50とほぼ共通だから維持しやすいのも魅力なのだろう。

身長179cm、甘党のアラフォーが跨ってみても、見た目以上にゆったり構えられる。バックステップなどでもっとスパルタンなポジションにしたくなるほど! これなら長距離走行でも頑張れるかもしれない。シート高は760mmと足つきも良好だ。
1987年2月に発売され約4年間で廃番となったが、96年にはHRCからレーサーベース車のNS50Rとして復活。リヤショックはリンクを持たない直付けに変更され、以降レース界を支え、現在もちらほら走っている。
外装では純正アンダーカウルや社外製フルカウルなどもあり、ネイキッド仕様にするケースも多かった。なお海外版はノンカウルで、前後スポークホイール&ドラムブレーキ仕様。
そしてNS50Fの後継は、1991年に登場したNS-1へとバトンタッチする。速く走ること、曲がること、マシンをイジること。そんなバイク遊びの基本を丸ごと教えてくれたNS50Fは、まさしくフルサイズ原付スポーツの“特進クラス”だったのである。

HONDA NS50F 主要諸元
全長×全幅×全高:1855×630×1065mm
ホイールベース:1260mm
シート高:760mm
車両重量:92kg
排気量:49cc
エンジン:水冷2ストローク単気筒ピストンリードバルブ
内径×行程:39×41.4mm
圧縮比:7.2:1
最高出力:7.2ps/10000rpm
最大トルク:0.65kgm/7500rpm
始動方法:キック
燃料タンク容量:10L
タイヤサイズ(前・後):2.75-17・3.00-17
ブレーキ(前・後):ディスク・ドラム
車体価格:22万5000円
※スペックは1990年時のものです。
※この記事は月刊モトチャンプ2024年8月号を基に加筆修正を行っています
【モトチャンプ編集部】

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