かかとの固定構造がない履物での運転は原則NG

道路交通法では運転時の履物についての規定はない。より具体的なルールを規定しているのは各都道府県公安委員会が定める“都道府県道路交通法施行細則”だ。
多くの都道府県の細則には、例として下駄やスリッパなどの名前が挙げられており、こうした運転を妨げるおそれのある履物で車両を運転した場合は“公安委員会遵守事項違反”が適用される。
公安委員会遵守事項違反の罰則は、反則金が普通車6000円で違反点数は加算されない。ただし、不適切な履物が原因で事故を起こしたり危険を生じさせたりした場合は、より重い“安全運転義務違反”が適用され、反則金は普通車で9000円、違反点数2点が科せられる。
ビーチサンダルやミュール、厚底靴やハイヒールなどの名称は条文に直接記載されていないものの、これらを履いての運転も違反と判断される可能性が極めて高い。
かかとを固定する構造がないサンダルは操作時に脱落する危険があるため運転時の履物としてふさわしくない。ミュールのようなヒールがある履物もペダル操作性を著しく損なってしまうため運転時には避けたい履物だ。
条文こそ各都道府県で異なるが、細則が定める履物の要件はいずれの場合でも“運転操作に支障を及ぼすおそれがないこと”だ。とりわけ夏用の運転靴においては、“かかとがしっかり固定される構造か否か”が重要な判断基準となる。
“クロックス”は黒に近いグレー! 運転はできるが安全面でアウト

曖昧な立場にある履物が“クロックス”で有名なクロッグサンダルだ。“かかとストラップ”が備わったクロッグサンダルなら、たしかに運転中に脱げる可能性は低い。
しかし、クロッグサンダル特有の柔らかく厚みのあるソールは、ペダルを踏み込む力加減が分かりにくい弱点を持つ。また、クロッグサンダルは靴幅が広めに作られているためペダルの誤操作も懸念される。
さらに、安価な商品ではストラップの留め具や素材自体の強度が不十分なものもあり、ペダル操作の負荷でストラップが外れたり本体が破損したりする可能性も否定できない。
とくに夏場の屋外で多用したクロッグサンダルは、降り注ぐ強い紫外線によって樹脂劣化を起こし、早期に破損することもある。クロッグサンダルは明確な違反となる履物ではないが、どちらかと言えば運転に適さない履物だ。
通気性とペダルの操作性を両立したいなら、ドライビングサンダルやグルカサンダルなどを使用するとよいだろう。
ドライビングサンダルは、運転に適した形状や特性を備えたサンダルだ。グルカサンダルは編み込まれた複数のストラップが足の甲から足首までをしっかりと包み込む構造が特徴となる。
どちらもクロッグサンダルと比べると遥かに丈夫な構造をしており、かかとの固定力も普通の靴に近い。分類上は“サンダル”となっているが、グルカサンダルもドライビングサンダルも運転時に履いても違反に問われない履物だ。
かかとが固定されるだけでは運転用の履物としては不十分

前述したとおり、法規上では“かかとの固定構造の有無”が運転時の履物の良否を判断するポイントとなる。しかしクロッグサンダルのように、かかとが固定されればどんな履物でも運転できるわけではない点に注意したい。
例えば、レディースサンダルには“かかとストラップ”が付いたものも多いが、こうしたサンダルに備わるストラップの主目的はあくまで装飾であるため強度不足の懸念がある。
フルブレーキ時などは足にも履物にも大きな力が加わるため、運転時の履物にはある程度の剛性と足への定着性が求められる。また操作時や事故時にペダルや内装などに足をぶつけて怪我をしないように、最低限の保護性能も必要だ。
安全性や操作性を重視するなら、夏であっても足全体がしっかりと覆われたスニーカーやドライビングシューズが望ましい。それらに比べて足への定着性が低く、開口面積も広いドライビングサンダルやグルカサンダルは安全上の観点で劣る点は否めない。
しかし、どれだけ通気性に優れたスニーカーでも、穴が開いたグルカサンダルとドライビングサンダルの快適性には敵わない。足の蒸れやすさや運転状況に応じて、こうした運転用サンダルを上手く活用するとよいだろう。ただし運転用サンダルを選ぶ際は、しっかりとした作りの製品を選ぶことが鉄則だ。