精密加工を終えたヘッド&ブロックが帰還!

狙うは圧縮比9.003:1の高圧縮RB28DETT

松田次生選手のBCNR33に搭載されているRB26DETTをリフレッシュし、HKS製2.8Lキットを投入して高圧縮RB28へと進化させる本企画。前回はJUNマシンショップに持ち込まれたシリンダーヘッドとブロックに、1/1000mm単位の精密加工が施される工程を紹介した。

そして今回、加工を終えたヘッドとブロックが“CSポルシェ”へと帰還。いよいよ組み立てを迎えるにあたり、加工部の仕上がりを確認するとともに、松田号RB28の詳細なスペックをチェックしていく。

まず目を引くのが、美しく整えられた燃焼室だ。フライスによる精密切削と面研によって6気筒すべてを同一形状に仕上げ、燃焼室容積は64cc、気筒間の誤差は0.1cc以内に収められている。

燃焼室容積を揃える理由は、気筒ごとの圧縮比を均一にするため。高圧縮化したエンジンではわずかなバラつきも異常燃焼につながりかねないだけに、計算通りの性能と耐久性を両立させる上で重要な工程となる。

ここにHKS製スーパークーリングガスケットの1mm厚を組み合わせることで、狙うメカニカル圧縮比は9:1。より正確には9.003:1という設定だ。

冷却系にも独自の対策が施されている。

隣接するウォーターライン同士を繋ぐように約2mmの水路を新設し、ガスケット周辺の冷却性能を向上。さらに、燃焼室上部へ繋がるエア抜き穴も追加されている。

これは高温時に発生するキャビテーションによる気泡を逃がし、冷却水の流れを改善するためのもの。高出力化だけでなく、熱対策まで見据えた加工が施されているのだ。

もちろん、今回のオーバーホールの発端となった白煙対策も完了している。

大きなガタが発生していたバルブガイドはJUN製の新品へと打ち替えられ、バルブステムシールが正常に機能する状態を取り戻した。リフレッシュという意味でも、ヘッドは万全の状態へと生まれ変わっている。

一方のブロック側も、大幅なリフレッシュが施された。

摩耗していたシリンダーは0.5mmボーリングされ、直径86.5mmへと拡大。さらにホーニングによって壁面に美しいクロスハッチを形成し、HKS製鍛造ピストンとのクリアランスは5/100mmに設定されている。ただし、CSポルシェでは精密加工から戻ってきたからといって、そのまま組み立てに入るわけではない。

藤本さんがここから行なうのが、面研されたヘッドとブロック上面に残る切削痕を整える独自の下処理だ。1500番から4000~5000番程度までのペーパーを使い、切削によって生じた痕の尖った部分をなだらかに整えていく。

ここで重要なのは、完全な鏡面に仕上げないこと。あえてわずかな凹凸を残すことでガスケットが食い付く部分を確保しつつ、接触面積を増やす。これもCSポルシェが積み重ねてきたエンジン製作のノウハウのひとつだ。

さらに、HKS製2.8Lキットに含まれるピストンとコンロッドも、すべて実測してから組み合わせを決めていく。

コンロッド大端部は複数方向から計測し、その数値をもとに使用するメタルを選択。CSポルシェでは約3台分のメタルをストックしており、1/1000mm単位で狙ったクリアランスとなる組み合わせを選び出すという。

そして、メタルクリアランスにも藤本さん独自の考え方がある。

高回転域ではクランクシャフトがムチのようにしなりながら回転するという考えから、クリアランスは日産の基準値よりも広めに設定。そのため、使用するエンジンオイルもHKSレーシングプロ10W-50を前提としている。

スペック上の数字だけを追うのではなく、実際にエンジンが高回転で動いたときの状態まで想定して組み上げる。それがCSポルシェ流のエンジンメイクなのだ。

さらに、エンジンが降りているこの機会を利用して、これまでほとんど手が入っていなかったトランスファーもオーバーホールと同時に強化する。

プレート類を新品へと交換するだけでなく、前輪へより駆動力を伝えやすくするための加工も予定されている。エンジンだけでなく駆動系までリフレッシュ&強化することで、松田号の次なるステージに備えるわけだ。

すべての計測と下処理が完了すれば、約20℃に空調管理された専用スペースで、いよいよRB28の組み立てがスタートする。

白煙を解消するためのオーバーホールから始まった今回のプロジェクト。しかし、その内容は単なる修理にとどまらず、今や高圧縮2.8L仕様への大幅な進化へと発展している。

目標は、松田次生選手自身のドライブによる筑波サーキット1分切り。

JUNマシンショップによる1/1000mm単位の精密加工に、CSポルシェ・藤本さんが培ってきた計測と組み立てのノウハウを重ね合わせて完成するRB28は、果たしてどんな特性を見せるのか。いよいよ始まる組み立て工程からも目が離せない。

●取材協力:カーショップポルシェ 山梨県南アルプス市東南湖952-2 TEL:055-284-0813

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