燃費向上と空間確保が鍵!スペアタイヤが消えた背景

かつてはパンク時の必須アイテムとしてトランクの底に積まれていたスペアタイヤだが、最近の車には代わりにパンク応急修理キットが標準装備されているケースが増えている。
いったいなぜ廃止されるようになったのか疑問に思う人も少なくないかもしれないが、実はこれには、自動車業界が直面する課題と技術の進化が深く関係しているという。
スペアタイヤ廃止の大きな理由のひとつとして真っ先に挙げられるのが、車体の軽量化による燃費性能の向上と環境負荷の軽減だ。
スペアタイヤは鉄やアルミのホイールを含めると1本あたり10キロから20キロ前後の重さがあり、これを常に積載した状態で走行することは少なからず燃費を悪化させる要因となっていた。
そこで重いスペアタイヤを下ろし、軽量でコンパクトなパンク応急修理キットに置き換えることで、車の総重量を減らして燃費を良くし、CO2排出量の削減など環境にも配慮した設計が可能になったというわけだ。

また、車内空間やトランクルームをより広く確保するための工夫という側面も見逃せない。
近年はハイブリッド車や電気自動車などの普及が進み、車体の下部やトランク周辺に大型の駆動用バッテリーやモーターといった専用機器を搭載するためのスペースが必要不可欠となっているため、これまでスペアタイヤが占有していた大きな空間を別の用途に活用することで、荷室の容量を広げて実用性を高めたり、居住空間を快適に保ちつつ新たなシステムを組み込んだりすることが容易になったのだ。
このように、燃費向上や車内レイアウトの自由度を高めるという自動車開発における合理的な判断が、スペアタイヤ廃止の大きな原動力となっているのである。
ロードサービスの普及とタイヤの進化!不測の事態への備え方

さらに、スペアタイヤが姿を消した社会的背景として、ロードサービスの普及によって道路上で自力交換する機会が減った点も理由として挙げられる。
ひと昔前はパンクの発生頻度も高く、ドライバー自身がジャッキを使ってタイヤを交換することが運転の基本スキルとされていたが、現代ではJAFや自動車保険に付帯するロードサービスが充実しており、トラブル時にはスマートフォンから救援を簡単に呼べる環境が整っている。
危険な路上で慣れない交換作業をおこなうよりも、安全な場所へ退避してプロの到着を待つほうが合理的であるという認識が広まったことも、スペアタイヤの必要性を低下させる一因となったようだ。

くわえて、タイヤ自体の耐久向上や道路環境の整備によって日常的なパンク事故が激減したことで、滅多に使われないまま寿命を迎えて廃棄されるスペアタイヤが大量発生していた課題も、応急修理キットへの移行によって解決へと向かっているという。
ただし、利便性の高い応急修理キットにも構造上の弱点が存在することは頭に入れておかなければならない。
たとえば釘が刺さった程度の軽度なパンクであれば一時的な穴塞ぎとして十分機能するが、タイヤの側面が大きく裂けたりバーストを起こしてしまったりした深刻な破損等には対応することができない。

また、修理キットの内部で使われている補修用の薬剤には有効期限が設定されており、いざというときに期限切れで使用できないといったトラブルも想定される。
そのため、使用期限や正しい手順を事前に確認しつつ、万が一修理キットで対応できない深刻な状況に陥ったときのために、ロードサービスの連絡先をしっかり把握して不測の事態へ備えておくことが大切だ。
