格安ベースがレースで大化け!
VP・5AGSに秘められた可能性
サーキットを気軽に楽しめるモデルとして、根強い人気を誇る36アルトシリーズ。多彩なグレードが用意されている中には、実は“狙い目”といえるモデルも存在する。
ラインナップレーシングの松山さんが、今こっそりサーキット用として推しているのが、商用グレードの最廉価モデル「VP」、しかも5AGS仕様だ。

シンプルかつ軽量なバンは、これまでも比較的リーズナブルに5MTを楽しめるNAモデルとして人気を集めてきた。しかし、ラインナップレーシングが注目するのは、2ペダルの5AGSモデル。
高騰傾向にある5MT車と比べて、大幅にリーズナブルな価格で入手しやすいことが、まず大きなメリットとなる。

もちろん、5AGSは独特の変速機構を備えるため、サーキットでは「乗りにくい」と言われることもある。だが、その特性を理解して乗りこなせば、戦闘力は5MTと同等以上。
実際、ラインナップレーシングがK4GPに出場した際には、アルト&ラパンの5AGS車で5MT勢を相手に優勝を獲得。さらにタカスサーキットで開催される軽耐久でも2連勝を記録するなど、耐久レースにおける強さは実績によって証明されている。
「AGSはチューニングすることで特性が一気に変わってくるんです。例えば10万kmオーバーのベース車でも、メンテナンスを兼ねた作業だけでレースに勝てるマシンに早変わりするほど。安く楽しく遊べるベースとしては、これ以上の車両は存在しないんじゃないですかね」。そう語るのは、ラインナップレーシング代表の松山さんだ。

そもそも5AGSのミッション本体は、基本的に5MTと同じギヤ式。クラッチ操作と変速操作を機械化したもので、フライホイールを含むクラッチ周辺もMT車と同様の機構を備えている。
そこで効果を発揮するのが、フライホイールの軽量化だ。
エンジンの回転落ちが良くなることで、変速時の動きが素早くスムーズになり、その効果は5MT以上に乗りやすさへ直結するという。交換作業は1泊2日で、標準工賃は5万円となっている。

また、AGSにはマニュアルモードも備わっているため、パドルシフターを追加すればドライバーの任意で変速することも可能だ。
ただし、パドルを付ければ単純に速く走れるというわけではない。シフトする回転数など、AGSならではの特性に合わせたドライビングを身につけることも重要となる。
AGSの可能性を追求してきたラインナップレーシングだけに、その“ツボ”を押さえたチューニングメニューも豊富だ。

オリジナルECUにはAGS専用品もしっかりとラインアップ。ハイオク仕様とレギュラー仕様の2タイプを用意し、それぞれパワー&トルクアップを実現している。
さらに、上位モデルとして「アンサー」ECUもリリース。チューニング内容に合わせてスロットルマップやトルクマップを調整・最適化することで、よりハイレスポンスな特性を引き出している。


サーキット走行で効果を発揮するのが「サーキットアシスト」だ。
通常はブレーキを踏むとスロットルが開かなくなるブレーキオーバーライドを解除するもので、AGSではさらにクリープ現象も解消。発進時のもたつきを抑えると同時に変速スピードも向上させ、スポーツ走行に適した制御へと変化させる。

ハード面だけでなく、AGSそのものをスムーズに作動させるためのアイテムも用意されている。それがオリジナルAGS作動油「AGSmooth」だ。
専門機関で成分分析を行いながら適切なオイルを選定したもので、AGSバルブのスムーズな作動を狙った専用フルードとなっている。


一方、走行距離を重ねた5AGSをベースにする場合、押さえておきたいメンテナンスポイントもある。
AGSはDレンジでクラッチを踏んだ状態をキープするため、その熱がフォークへ伝わり、グリスを蒸発させてしまうことがある。また、ブッシュの劣化やスラストメタル、クラッチカバーの摩耗なども起こりやすいという。
そこで各部をリフレッシュしながら軽量フライホイールへ交換するなど、メンテナンスとチューニングを同時に進めることが、AGSを存分に楽しむためのポイントとなる。

もちろん、NAエンジン側にもツボを押さえたメニューが用意されている。
エキマニ交換ができないNAモデルに対して、パイプ径とレイアウトをアレンジすることで、トルクを損なうことなく効率的な排気を実現する「STEPサイレンサー」。NAチューンの要となるアイテムで、AGS仕様にもぜひ取り入れたいメニューだ。
5MTモデルの相場が上昇する一方、リーズナブルな価格で手に入れやすく、チューニングとメンテナンスによって走りを大きく変えられるVP・5AGS仕様。
K4GP優勝や軽耐久2連勝という実績を考えれば、そのポテンシャルを侮ることはできない。
「安く買って、安く楽しむ」という軽スポーツの魅力を突き詰めるなら、5AGSはまさに隠れた狙い目。手軽なサーキット入門車として36アルトを探しているなら、VP・5AGSに注目してみる価値は十分にある。
●取材協力:ラインナップ(松山商会) 兵庫県姫路市花田町小川574-1 TEL:079-260-7077
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