
コール・デイビス選手がAMAプロモトクロス選手権250MXで初タイトルを獲得。AMAスーパークロス250SX Eastに続く二冠達成という、ヤマハにとって最高のニュースが飛び込んできました。
ヤマハ、強し! そんなニュースに、筆者(青木タカオ)をはじめとするモトクロスファンが胸を熱くしていた頃、競技用モトクロッサー『YZ250F』の最新作、2027年型に乗る機会がやってきたのです。毎年恒例となっているヤマハYZシリーズのメディア向け試乗会です。
ヤマハ YZ250F……979,000円(消費税10%含む)

会場はSUGOスポーツランドのインターナショナルモトクロスコース。常設のモトクロスコースとしては日本随一ともいえる設備を誇り、全日本選手権はもちろん、かつてはFIMモトクロス世界選手権(MXGP)も開催された、自然の地形を活かしたアップダウンの大きさが特徴のコースです。
2027年型YZ250Fで、少しビビりつつコースインです。「ビビりつつ……!?」。何を情けないことを言っているんだ、とお叱りを受けるかもしれません。しかしモトクロッサーというのは、いま一般の人が購入できるオートバイのなかでも、最先端の技術が詰め込まれた存在。少なくともオフロードモデルでは、もっとも戦闘的、つまり過激と言っていいほどの仕上がりです。

市販のナンバー付き一般公道モデルには、コストや耐久性、そして環境規制など、どうしても背負わなければならない条件がいくつもあります。
かつてはロードスポーツにも『TZ』のような市販レーサーがありましたが、競技規則の変更によって生産終了。その意味では現在、そうしたポジションを担っているのが、モトクロッサーをはじめとするオフロードコンペティションモデルなのです。
もちろん、コール・デイビス選手のようなワークスライダーには専用のファクトリーマシンが与えられますが、そのベースとなるYZ250Fは、ホビーユースから国際A級ライダーまでが走ることを視野に入れて開発された純粋なレーシングマシン。そりゃあ、ビビらないと言ったほうが嘘なのです。
さて、言い訳はこのくらいにしておきましょう。
名実ともにクラス最強!
ヤマハYZ250Fは、Cycle Newsをはじめとするアメリカの主要モーターサイクルメディアが行う「SHOOTOUT(シュートアウト)」でも高く評価され、8年連続でクラス1位を獲得。レースでの高い実績に加え、モトクロスの本場でも専門家たちから評価されてきた、ヤマハを代表するマシンとなっています。
そして2027年式で、YZ250Fはじつに8年ぶりとなる全面刷新となりました。これはモトクロスファンにとって、ビッグニュースです。
「ついにオールニューか!」
2001年に登場した初代YZ250Fを購入したボクは、以来、ほぼ毎年のようにヤマハのメディア向け試乗会で新型に乗らせてもらっています。そんなボクにとっても、今回のフルモデルチェンジは、どうしたって気になる存在です。乗る前からワクワクしてしまいます。期待せずにはいられません。

さて、そんな期待を胸に走り出して、まず感じたのは、トップエンドまで気持ちよくエンジンが回っていくことでした。
ただし、上だけが元気になったわけではありません。低中回転域からアクセルを開けたときにも、ちゃんと力がある。そこからさらに回転を上げていくと、もう一段上へ伸びていきます。

コーナーを立ち上がってアクセルを開け、そのまま次のセクションへ向かう。そこで「もうシフトアップしなければ」と思うタイミングが先へ延びた感覚があり、レブ領域のままでも頭打ちせず、じわじわと伸びていくのです。
シフトチェンジの回数が減ることは、大きなメリットです。モトクロスに限らず、スポーツライディングでは絶えず身体を動かし、路面を読み、ブレーキを使い、クラッチを操作し、さらにシフトチェンジまでおこなう。
やることが、とにかく多い。そのなかでシフトチェンジが一回減れば、そのぶんライン取りやアクセルワーク、次のジャンプへのアプローチに集中できます。
より長く駆動力を切らさず、スピードを維持したまま走れることは、単純にエンジンパワーが増えてトップエンドの使える領域が伸びたというだけではなく、ライダーの操作をひとつ減らし、走りに集中できることも大きなメリットになります。

開発チームに話を聞いてみると、なぜそうなるのか、その理由がよくわかります。
というのも、ヤマハYZシリーズメディア向け試乗会には、開発チームの皆さんがいつも来てくださいます。新型の変更点を直接説明してもらえるだけでなく、実際にマシンをつくった人たちから開発の狙いや技術的な背景まで聞けるので、学ぶことが本当に多い。これがまた濃厚で贅沢なひとときで、話を聞いているうちにますますヤマハのファンになってしまうのです。
今回もいろいろと聞いてみました。プロジェクトリーダーの澤岡譲二さん(第2PT設計部 YZ-PT設計Gr)は、「最強の4スト250ccにオールニューエンジンを投入して、ライバルをさらに引き離す」と力強く胸を張ります。
王者の貫禄を感じて、ワクワクするではありませんか。エンジン設計プロジェクトチーフの小野寺正洋さん(第2PT設計部 YZ-PT設計G)が、詳しく教えてくれました。

従来型は吸排気バルブともカム直打式でしたが、2027年型では吸気側をロッカーアーム式に変更。さらにYZ初のフィンガーフォロワー構造を採用することで、動弁系等価重量を16%低減。吸気バルブリフト量も9.6mmから10.2mmへ増大させ、より大きなバルブリフト量を確保するとともに、高回転化を可能にしています。
高回転域でバルブを確実に動かすため、吸気側のバルブスプリングにはダブルスプリングを採用。レブリミットは従来型から700rpm高められました。
さらに吸気ポートも形状を最適化して吸気流量を増大。圧縮比も13.8から14.1へと高められています。
圧縮比を高めたのに始動性がいい

コースに飛び出す前から、「おっ!」と思わせてくれたのがエンジンの始動性でした。ギヤが入ったままでも、セルボタンを押せば一発。転倒後など、すぐに再始動したい場面を考えれば、これはとてもありがたい。
一般的に考えれば、圧縮比を上げれば始動時のセルモーターへの負担も大きくなるはずです。ところが、実際にはセルを押せば元気よく目覚めました。
その秘密がデコンプレッション機構です。圧縮行程で空気を逃がし、セルモーターがエンジンを回しやすくする仕組みですが、エンジン実験プロジェクトチーフの北原直哲さん(第2PT実験部 YZ-PT実験Gr)によれば、その圧抜き量を従来型より2.1倍に拡大。さらにスターターモーターもトルクアップしています。
軽い操作感と、変わらないミートポイント

走り出して、すぐに「あ、違う」と感じたのがクラッチでした。レバーを握ったときの操作性が軽い。それだけではありません。リリースしていくときに「ここからつながる」というミートポイントがわかりやすく、タイトコーナーの立ち上がりなど、繊細な操作が求められるときにありがたい。
新型では、YZ450Fで採用されていた油圧クラッチをYZ250Fにも採用。クラッチスプリングは荷重を高めながら、その特性を最適化しています。これによってレバー操作荷重を軽減しつつ、スムーズな半クラッチと滑らかなつながり感を実現しています。
小野寺さんは、レバー荷重についても「ピーク値13%低減」と、明確な数字を示してくださいました。
コーナーへの進入、立ち上がり、ジャンプへのアプローチなど、モトクロスではクラッチを細かく使う場面が少なくありません。油圧式なら長く走り続けてもミートポイントが変化せず、より走りに集中できます。
新型クラッチはギヤ一体ハウジングや薄型フリクション&クラッチプレートを採用。嵌合部の耐摩耗性を向上させながらコンパクト化も実現し、クラッチユニットの幅は68.4mmから58.4mmへと狭められています。
落ち着きと強さで、安定して押し切る!

シャーシにも明確な違いを感じました。コーナーへアプローチしてフロントを寝かし込んでいくと、従来のYZ250Fに感じていた「スパン!」と軽く向きが変わるような感覚とは少し違います。
2027年型は落ち着いて向きを変えていく。最初は「ハンドリングが少し穏やかになったのかな?」とも思いました。ところが、フープスやジャンプなどのあるリズムセクションで印象が変わります。

アクセルを開けたままギャップを越えていっても、車体が左右にフラつきにくい。前後サスペンションが路面の凹凸を受け止めながらも、車体の挙動が大きく乱れず、そのまま前へ進んでいきます。
軽快にヒラヒラと動くというより、荒れた路面でもラインを外さず、押し切っていく感じです。

その大きな理由のひとつが、今回新たに採用されたメインフレーム。YZ450F由来のコンパクトな新設計フレームです。
車体設計プロジェクトチーフの中嶋俊大さん(OV開発部 OV設計2Gr)によれば、もちろん250Fよりひと回り大きなエンジンを搭載するYZ450Fのフレームを、そのまま持ってきたわけではありません。
YZ250Fのエンジンや車体特性に合わせて最適化し、高いスタビリティとコーナリング性能を両立しながら、フロントエンドには穏やかで安心感のあるフィーリングを持たせています。
エンジンブラケットも形状と厚さを見直し、外乱に対してマイルドに反応するようにしています。これらが組み合わさったことで、ボクのようなホビーユーザーが乗っても、「車体の挙動が大きく乱れない、落ち着いている」という安心感につながっているのでしょう。
YZ250Fに助けられた!

もっと上手いライダーなら、フープスをさらに速いスピードで駆け抜け、コブにもハードに当てながらアクセルを開け続けるはず。そんなアグレッシブな走りをしたときこそ、この落ち着いた車体の挙動がより効果的に効いてくるのだろうな、と想像できます。
そして、そのありがたさを身をもって思い知らされたのがジャンプでした。この国際格式のコースで、トップライダーのような飛距離なんて、とても出せません。
アクセルを控えめにしてジャンプを飛び出すつもりが、ついつい中途半端にアクセルを開けてしまい、着地の斜面がないフラットなところへ飛び出してしまったことがあったのです。
これは着地でくらうぞ……。そう身構えました。大きな衝撃を受けて弾かれ、よろっと転ぶところまで想像しましたが、着地時に前後サスペンションとシャーシ全体が入力を受け止め、車体が大きく暴れません。
アンクルグリップをしっかり効かせて、必死にこらえ、なんとか持ち堪えることができました。
もちろん、転倒せずに済んだのは自分の腕前ではありません。「スタビリティを上げた」という澤岡さんの言葉の意味が、このとき少しわかった気がします。
高いスタビリティは、トップライダーが限界まで攻め込むのはもちろんですが、ボクのように、ときどき(!?)ジャンプでやらかしてしまうライダーを助けてくれるものでもあるのです。完全にYZ250Fの進化したシャシーに助けてもらいました。
受け止めて、整えて、次へつなぐ足回り

リヤブレーキも今回の進化ポイントです。踏み込んだ瞬間にガツンと効くのではなく、ペダルを踏んだ分だけ制動力がスッと立ち上がる。ブレーキを残したままギャップへ入ってもリヤタイヤの動きを邪魔しにくく、狙ったところで速度を落としやすい。
ディスクローターはφ240mmからφ220mmへ小径化。キャリパーのピストンはφ25.4mmからφ22.7mmへ、マスターシリンダーのピストンもφ11.0mmからφ9.5mmへと小さくしています。さらにホースの材質も変更。その結果、ブレーキシステム全体で180gの軽量化を達成しています。

単純に「小さくして効きを弱くした」という話ではありません。ペダルを踏む量に応じて、制動力を細かく調整できるのです。ギャップ通過時やコーナリング中にリヤブレーキを使うと、このコントロール性の高さが効いてきます。
サスペンションは前後ともYZ450Fと同一のコンポーネントを採用しながら、YZ250F専用のセッティングが施されています。リヤサスには新型ベースバルブを採用。前後とも従来型より減衰力を高め、路面追従性を向上させました。
ギャップを越えた瞬間に車体が跳ね返されるのではなく、タイヤが路面を追い続けてくれる感覚があります。大きな入力が入ってもストロークの奥でしっかりと踏ん張り、次のセクションへ移るときにも車体の姿勢が乱れにくい。
ひとつのギャップを越えたら、またすぐ次のコーナーやジャンプが迫るモトクロスでは、サスペンションはただ一発の衝撃を吸収すればいいわけではありません。
入力を受け止めながら車体を整え、次の動作へつなげてくれることが大切。安定性を増したシャシーとともにサスペンションも最適化され、新型はリズムセクションなどで、その直進安定性の高さが光ります。
「もっと開けたい」と思わせる新型YZ250F

「安心して開けられる」「操作に集中できる」「次の動作へつなげやすい」と感じる2027年型のYZ250Fは、結果的に「もっと行けそう!」とライダーに思わせてくれます。
モトクロスは特に、ライダーの技量がそのまま走りに出ます。プロライダーのようには走れない。でも、マシンが一歩先の走りを受け止めてくれれば、「もう少しだけ開けてみよう」「次はここまで行ってみよう」と思えます。
もっと開けたくなる。もう一歩、踏み込んでみたくなる。その気持ちを引き出してくれることが、新型YZ250Fの大きな魅力なのだと感じました。きっとまた、アメリカの専門誌でも高く評価されるに違いありません。

| YZ250F | ||
|---|---|---|
| 車台打刻型式/原動機打刻型式 | CG61C/G33AE | |
| 全長/全幅/全高 | 2,185mm/825mm/1,275mm | |
| シート高 | 970mm | |
| 軸間距離 | 1,480mm | |
| 最低地上高 | 350mm | |
| 車両重量 | 107kg | |
| 原動機種類 | 水冷, 4ストローク, DOHC, 4バルブ | |
| 気筒数配列 | 単気筒 | |
| 総排気量 | 249cm3 | |
| 内径×行程 | 77.0mm×53.6mm | |
| 圧縮比 | 14.1:1 | |
| 始動方式 | セルフ式 | |
| 潤滑方式 | ドライサンプ | |
| エンジンオイル容量 | 1.20L | |
| トランスミッションオイル量 | - | |
| オイルタンク容量 | - | |
| 燃料タンク容量 | 6.2L(無鉛プレミアムガソリン指定) | |
| 吸気・燃料装置/燃料供給方式 | フューエルインジェクション | |
| 点火方式 | TCI(トランジスタ式) | |
| バッテリー容量/型式 | 12V, 2.4Ah(5HR)/BR98 | |
| 1次減速比/2次減速比 | 3.578(68/19)/3.769(49/13) | |
| クラッチ形式 | 湿式, 多板 | |
| 変速装置/変速方式 | 常時噛合式5速/リターン式 | |
| 変速比 | 1速:2.071(29/14) 2速:1.687 (27/16) 3速:1.437 (23/16) 4速:1.200 (24/20) 5速:1.000 (20/20) | |
| フレーム形式 | セミダブルクレードル | |
| キャスター/トレール | 27°00′/120mm | |
| タイヤサイズ(前/後) | 80/100-21 51M(チューブタイプ)/110/90-19 62M(チューブタイプ) | |
| 制動装置形式(前/後) | 油圧式シングルディスクブレーキ/ 油圧式シングルディスクブレーキ | |
| 懸架方式(前/後) | テレスコピック/スイングアーム(リンク式) | |
| 乗車定員 | 1名 | |





