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MAZDA ROADSTER長期レポート
商品改良を受けた新型ロードスター これはベーシックな「S」グレードだ。筆者のロードスターと同じグレードだ。

筆者のマツダ・ロードスターは、2026年の商品改良を受ける直前に購入した「S」グレードだ。1.5L直列4気筒自然吸気エンジンに6速MTを組み合わせた、ソフトトップのもっともシンプルなロードスターである。

なぜ、モデルチェンジならぬ「商品改良」の直前に買ったのか。

理由のひとつが、今回の改良でロードスターが新しい車外騒音規制への対応を迫られる、と聞いていたからだ。騒音規制が厳しくなれば、当然マフラーは大きくなるだろう。重量も増えるだろう(きっと価格も相応に上がるだろう)。そしてスポーツカーの魅力のひとつであるエンジンや排気のサウンドも小さくなる。

ロードスターというクルマにとって、それはけっこう大きな問題なのではないか。ならば、規制対応前のロードスターを買えるうちに買っておこう。「いつかロードスターを」などと言っている場合ではない。

そんな気持ちもあって、改良前のSを購入したわけだ。

前回の大幅商品改良後の試乗会(2024年1月に開催)のときは、青空が見えたのに……
今回は雨と霧。視界悪しであった。

そして今回、新型ロードスターのメディア向け試乗会が開催された。もちろん筆者は、自分の改良前Sで試乗会場へ向かった。会場は、2023年10月の大幅商品改良後の試乗会(2024年1月に開催)と同じ伊豆スカイラインである。

筆者のマイカーのオドメーターはようやく1200kmほど。まだ慣らし運転中である。

試乗会で最初に選んだのは、当然ながら新型のSだった。自分のクルマと同じグレードである。

これほどわかりやすい比較もない。

ただし、この日はあいにくの雨。場所によっては霧も出ていて、試乗には最悪のコンディションだった。

商品改良後の受注は順調だそう。みんなマツダのことを信頼しているんだなぁ。まだメディアの試乗記すら出ていないのに判子を捺すなんて。

だから限界領域まで走らせて新旧を比較した、などという話ではない。むしろ普段使う速度域で、新型ロードスターがどう変わったのかを確かめる試乗になった(晴れていても限界領域での比較なんてできないけど)。

音は小さくなった。しかし「悪くなった」とは感じなかった

改良後のSのエンジンルーム。改良前のモデルではディーラーオプションだったISE(インダクション・サウンドエンハンサー)が標準装備になっている。

まず気になったのは、やはり音だった。結論から言えば、絶対的な音量は確かに小さくなっていると思う。しかし、筆者には「音が小さくなってつまらなくなった」とは感じられなかった。
むしろ、音質そのものはかなりいい。

言葉にするのが難しいのだが、改良前よりも音の粒立ちが細かくなったように感じた。

粗さが取れたというのとも少し違う。エンジン回転の上昇にともなって聞こえてくる音が、より精緻になったというか、洗練されたというか。

音量そのものは抑えられているのに、耳に入ってくる音の質は高くなっている。

マツダも今回、単純に「音を消す」だけの対策をしたわけではない。サイレンサー容量を拡大するとともに、専用レゾネーターやリブを新設計し、吸排気音の質を作り込んだ。ソフトトップ車にはインダクションサウンドエンハンサーも標準装備している。狙ったのは「クリアで自然、リニアなエンジンサウンド」だという。
なるほど、筆者が感じた「音の粒立ちが細かくなった」という印象は、まったく的外れでもなさそうだ。

ただし、ここは断定できない。

試乗した新型Sのオドメーターは約2100km。試乗会で多くのジャーナリストに乗られ、かなりエンジンを回されてきた個体だ。

一方、筆者の改良前Sはまだ1300km(都内から試乗会場まで約100km)。伊豆まで往復して、ようやくそこまで走ったところで、まだ慣らし中である。

この走行距離や使われ方の違いが、音の印象に影響している可能性はある。

そして何より、音の好みは人によって違う。同じ日に試乗していた弊社スタッフは大幅商品改良前のロードスターのオーナーなのだが、新型に乗ったあと筆者にこう言った。
「音は改良前の方が明らかにいいと思いました。改良直前のを買ってよかったですね」
なるほど。

筆者は新型の音を「洗練されていていい」と感じた。一方で、改良前の方がロードスターらしいいい音だ、と感じる人もいる。音量は計測できる。しかし「いい音」は数値では決められない。

ここは新旧ロードスターの面白い違いなのかもしれない。

「サイレンサーだけで5kg増」から始まった騒音規制対応

グレード別新型改良ポイント

 ソフトトップRS
SS Special PkgPSRSRF VS(AT)
車外騒音規制吸気系
ISE 
排気系
タイヤ
電動パワステ
サスペンションスプリング   
ダンパー   
エンジン制御加速応答改善 
ヒール&トゥアシスト(MT) 
レブリミット前出力

では、その騒音規制にマツダはどう対応したのか。ロードスター主査の齋藤茂樹さんに尋ねてみると、興味深い話をしてくれた。
「めっちゃ頑張りましたね」

最初にエンジニアから提示された案では、メインサイレンサーの容量は50L必要で、重量は5kg増えるという話だったという。

ロードスターで5kg増。これは小さくない。

そこで齋藤主査は「ロードスターは軽さが一番だから」と、コストが多少上がってもいい材料を使うなどして、とにかく軽く、小さくするよう求めた。

その結果、従来28Lだったサイレンサー容量は34Lにとどまった。重量増も「500gもいっていない。ほんの数百グラムぐらい」だという。

車検証上の車両重量は変わらない。

筆者が改良前モデルを買うときに心配していたことのひとつは、見事に杞憂だった。

ステアリングが明らかに滑らかになった

Sグレードの内装。見た目は変わっていない。

もうひとつ、乗り始めてすぐ感じたのがステアリングフィールだった。
滑らかなのである。

改良前の筆者のSから新型Sへ乗り換えた直後だから、余計にそう感じたのかもしれない。操舵に対するクルマの動きが自然で、手に伝わってくる感触も角が取れている。

ひと言で言えば、洗練度が上がった。
試乗後、齋藤主査に、
「自分のSでここまで来て、同じSに乗ったんですが、なんだか滑らかになった感じがします」と伝えると、
「めっちゃ滑らかでしょう」と即答された。

しかも、自身も990Sを所有する齋藤主査は、
「僕もあそこだけはね、自分で乗りながらちょっと悔しいなって思いは」と笑った。

筆者のロードスターのタイヤは195/50R16 84VのヨコハマADVAN Sport V105
改良後のタイヤは同サイズだが、ヨコハマADVAN Sport V107に変わった。

なるほど。やはり気のせいではなかったようだ。
今回、騒音対策のためタイヤにも手が入っている。

16インチタイヤは横浜ゴム製だが、騒音低減にともなってわずかにステアリングの手応えが変化した。それなら、とEPS(電動パワーステアリング)の制御まで再チューニングしたのだという。

ハードウェアそのものを変えたわけではない。
齋藤主査は、
「タイヤが変わったという大義名分のもとに、EPSのチューニングまでやってしまった」と笑う。

騒音規制対応のために仕方なく変える。そこで終わらず、それを理由にさらにロードスターを磨いてしまう。今回の商品改良を象徴する話だと思う。

でも「洗練されればされるほどいい」のだろうか?

グレードによるポジションマップ。価格の高い安いではなくキャラクターで分けられている。PSもいいけれど、筆者の好みは依然として「S」である。

ただし、ここで少し考えてしまった。新型Sのステアリングフィールは、確かにいい。滑らかで、自然で、洗練されている。

では、ロードスターは洗練されればされるほどいいクルマになるのだろうか。

筆者は、そう単純な話でもないと思っている。そもそも筆者がSを選んだ理由がそこにある。

ロードスターにはもっと装備の充実したグレードもある。よりスポーティな足まわりを持つ仕様もある。それでもSを選んだのは、以前所有していたNAロードスターの感覚に、現在のNDでもっとも近いと思ったからだ。

軽くて、シンプルで、少し大きめにロールしながら、ひらひらと向きを変える。交差点をひとつ曲がるだけでも楽しい。それが筆者にとってのロードスターなのである。

実は齋藤主査も面白いことを言っていた。今回新設定されたPSに乗った人たちは、そのスポーティな走りを褒めるという。ところが帰り際になると、
「でも、やっぱりSがいいな」と言う人がいるそうだ。

NA、NBの頃からロードスターを知っている人ほど、「ひらひら、ひらひら」と動く感覚をロードスターに求めているのではないか、と齋藤主査は話していた。

筆者にも、その気持ちはよくわかる。

PSは「もうひとつのロードスター」

今回、そのPSにも短時間だが乗ることができた。専用チューニングのビルシュタイン製ダンパー、RAYS製16インチアルミホイール、ブレンボ製フロントブレーキなどを備えた新しい特別仕様車である。

ただ、この日は雨と霧。

PSとSの違いがはっきり出るところまで速度を上げる気には到底なれなかった。

それでも、Sとは違う方向へロードスターの世界を広げようとしていることは感じられた。

齋藤主査によれば、PSは「ロードスター」の名前を付けられる範囲で、目いっぱいスポーティ側へ振った仕様なのだという。「ここが崖なんです。これ以上先には行ってはいけない:

それ以上ならMAZDA SPIRIT RACINGの領域になる。

一方には、ひらひら動くSがある。もう一方には、ピタッとしたスポーツカーらしい動きを狙ったPSがある。どちらかを正解にするのではなく、ロードスターのなかに両方を用意したわけだ。

これは、はっきり言って羨ましい

改良前の筆者のSでもモニターのサイズは同じ。CarPlayも無線で繋げられる。がタッチパネルではない。

そして新型Sで、もうひとつ気に入ったものがある。Apple CarPlayだ。筆者の改良前SでもiPhoneを接続すればCarPlayは使える。ところが画面を直接タッチして操作することはできない。

新型はCarPlay/Android Auto使用時にタッチパネル操作ができるようになった。

新型はタッチパネルで操作できる。うーむ、これは便利だ。

これは便利だった。はっきり言って、羨ましい。

新型に乗ってもっとも「自分のロードスターにも欲しい」と思ったのは、ひょっとするとこれかもしれない。
では、改良前Sを買ったことを後悔したか?

さて。

騒音規制が入ったら、ロードスターは重くなるのではないか。
音がつまらなくなるのではないか。
ロードスターらしさが薄れてしまうのではないか。

そして価格もさほど上がらなかった。マツダさん、頑張りすぎですよ……。

そんなことを考えて、筆者は改良前のSを買った。しかし新型Sに乗ってみたら、その心配はほぼ杞憂だった。

重量増はほとんどない。
音量は抑えられたが、筆者にはむしろ音質が洗練されたように聞こえた。ステアリングフィールも明らかに滑らかになった。CarPlayのタッチ操作は文句なしに新型がいい。

では、改良前を買ったことを後悔したか?
していない。
ロードスターの魅力は、「新しいほどいい」「洗練されているほどいい」という一本の物差しでは測れないと思うからだ。

改良前Sの少し生々しいところもいい。大きめにロールしながら、ひらひらと向きを変えるところも好きだ。

そして何より、これは筆者が「これが欲しい」と思って買った、自分のロードスターなのである。ただし。新型Sはいい。ちょっと悔しいくらいに。

都内から第三京浜〜横浜新道〜国道1号〜有料道路〜西湘バイパス〜箱根ターンパイク〜伊豆スカイラインというコースで約100km走行したときの燃費は15.7km/L
帰路は山から下りるコース。伊豆スカイラインから熱海へ降りて、海岸沿いから小田原厚木道路〜東名〜首都高〜第三京浜〜都内のルートで104.8km走って燃費は19.5km/Lだった。
購入後1400km走行して、いまのところ平均燃費は13.0km/L。

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