「がっしり」しすぎてはいないか? PSへの一抹の不安

今回の商品改良で新たに加わった「PS」。新しいボディカラーのジンクグリーンメタリックも話題だ。

ロードスターに、モータースポーツの知見を活かして開発されたニューモデル「PS」が加わった。

ピュアスポーツ(Pure Sport)の頭文字を取ったPSは、従来のヒラヒラと動く乗り味に対して、足まわりを固め、ロールを抑え、ピタリとボディを抑え込む。まさにサーキット生まれの姿勢制御を持ち味とする。

スプリングレートを高める一方、微小な可動領域から減衰力を発生させるビルシュタインダンパーは、入力を穏やかに受け止める方向にセッティングし、ボディをフラットにキープ。ヒラヒラハンドリングとは対照的な、ガッチリとした安定志向の走りを作り込んできた。

ロードスターのグレードのポジションマップ。PSは、MAZDA SPIRIT RACINGのベクトル上にあることがわかる。Sは、その好対照の位置だ。
PSの車両価格は366万3000円。PSは限定車でなく「特別仕様車」だ。

これまでデビュー当時から歴代ロードスターを、ワインディングからサーキットまで、多種多彩なモデルで試乗してきたが、しっくりくるのはいつもヒラヒラ系だ。

足を固めすぎるとボディに負担がかかって、動きがピーキーになりがち。タイムは出るけれど楽しくない。ロードスターって、頑張りすぎない程度がちょうどいい。というのが個人的な見解だ。

だから、マツダのエンジニアがどこまで頑張っちゃったのかが、今回の試乗のチェックポイント。ホントにサーキット仕様のようなガチガチ系になっていたら、ロードスター伝統のしっとり艶やかな身のこなしに傷をつけるんじゃないか。そんな一抹の不安を抱えながら試乗会場に向かった。

試乗会が開催された週は雨天が多かったが、幸いなことにこの日は青空も見ることができた。

用意された試乗環境は、まさにロードスターがもっとも生き生きと走れる尾根伝いのワインディングロード。あいにくの悪天候ながら、走るときには雨がスッと上がり、ソフトトップをたたんで試乗した。

無駄な動きがない。PSの「がっしり」は想像とは違った

「コーナーでも足元の動きが正確ゆえに、切り込んでいったときの路面反力がしっとりと伝わってきて、不安なく操作できる」

「PS」の第一印象は、ひと言でいえば動きに無駄がない。操作に対して正確無比だ。ステアフィールはセンター付近でピタリと収まっていて、落ち着きがある。固めたはずの足まわりは、本来なら路面からの入力を受けて上下しそうなものだが、メリハリよく吸収してフラット感を保つ。減衰力を弱めながらも、微低速領域からしっかり仕事をしているダンパーのおかげだろう。

コーナーでも足元の動きが正確ゆえに、切り込んでいったときの路面反力がしっとりと伝わってきて、不安なく操作できる。しかも、リヤがしっかりとボディ全体を支えてくれているような印象で、大きく揺れることがない。

おかげでグイグイとステアリングを切り込んでいっても、ボディは一体感をもってレコードラインをトレースする。旋回中のステアフィールも、従来のようにゆらゆらと頼りなくなることがなく、常に正確な路面インフォメーションを伝えてくる。

PSグレードのタイヤとサスペンションを観察。
改良後のタイヤは同サイズだが、ヨコハマADVAN Sport V107に変わった。

リヤが安定していることで、パワーを積極的にかけていくこともでき、旋回トラクションは歴代トップ。LSDの働きにも決して唐突感がなく、どこまでもライントレースをキープする安定感は見事だ。

オープンボディにとって、固めのサスは前後のバランスを崩したり、唐突な動きにつながったりすることが多いが、「PS」にそれは当てはまらない。無駄な動きを削り取る繊細なチューニングによって身につけた、安定性とハンドリングの両立。自動車メーカーらしく頑張りすぎることなく、まさにピュアな走りを具現化した。心配は無用だった。

PSのソフトトップはクロスグレー。このモデルのボディカラーはジェットブラックマイカ

Sに乗ると肩の力が抜ける。これぞロードスターの「ヒラヒラ」感

ロードスターのなかで最軽量(1010kg)のSグレード。価格は295万9000円。

もっとも、990Sに代表されるヒラヒラ系の「S」に乗ると、肩の力が抜けていい。リヤスタビもLSDもなく、車重は1010kgと現行モデル最軽量。サスペンションに変更はないものの、今回の商品改良でアップデートされた吸排気系や環境対応タイヤの採用によって、乗り味は大きく進化した。「PS」同様、操作に対する反応が滑らかなステアリングフィールや、しなやかな動きとトラクションをしっかりキープするタイヤが正確な動きをサポートする。ウェットグリップも、水が溜まっていない状況なら進路が乱れることがなく、気持ちよく安定したドライブを楽しめる。

パワーフィールも全車共通で、中速域のレスポンスや伸びがよく、音も扱いやすさも抜群。排気量が大きくなったような印象さえある。

何よりも、ヒラヒラと前後左右に動くボディと、接地感あふれる4輪ダブルウィッシュボーンサスペンション。そして、重量配分に優れた軽量ボディは荷重移動がたやすく、ワインディングを滑らかに走り続ける。ボディは揺れても進路は乱れない。それでいてGは適度にリリースされていき、ドライバーに緊張感を強いない。

PSは見事。それでも「やっぱりSがいい」

 ソフトトップRS
SS Special PkgPSRSRF VS(AT)
車外騒音規制吸気系
ISE 
排気系
タイヤ
電動パワステ
サスペンションスプリング   
ダンパー   
エンジン制御加速応答改善 
ヒール&トゥアシスト(MT) 
レブリミット前出力

PSはガッチリと無駄な動きを廃した分、打てば響く反応で軽量スポーツモデルの醍醐味を誰にでも味わわせてくれる。対して、990S譲りのSは、肩の力を抜いて操作してもヒラリヒラリとGをかわして姿勢を作り込む。PSはついつい本気になってしまいそうで、マツダのエンジニアの気概を感じるが、Sは伝統というゆとりをもってドライバーを広く受け止める。

ステアリングフィールは改良でさらに滑らかになった。

やっぱりヒラリヒラリの「S」がいい。そう言ってエンジニアをがっかりさせたが、これは好みの問題。血気盛んなNAデビュー当時の自分だったら、間違いなく「PS」こそが本命だった。

歴史を刻んでも変わらぬヒラリヒラリ系でしっかりと周囲を固め続けているからこそ許された「PS」のデビューに違いない。走りを磨くなら、これに限る。

マツダ・ロードスター S(新型)
全長×全幅×全高:3915mm×1735mm×1235mm
ホイールベース:2310mm
車両重量:1010kg
エンジン形式:直列4気筒DOHC
エンジン型式:P5-VP[RS]型
総排気量:1496cc
ボア×ストローク:74.5mm×85.8mm
圧縮比:13.0
最高出力:100kW(136ps)/7000rpm
最大トルク:152Nm/4500rpm
燃料供給:筒内燃料直接噴射(DI)
トランスミッション:6速MT
サスペンション形式 前/後:ダブルウィッシュボーン/マルチリンク
ブレーキ 前後:ベンチレーテッドディスク/ディスク
タイヤサイズ:195/50R16 84V
乗車定員:2名
WLTCモード燃費:16.9km/L
市街地モード燃費:12.3km/L
郊外モード燃費:17.4km/L
高速道路モード燃費:19.7km/L
車両価格:295万9000円