ついにフルモデルチェンジを果たした“走りのミニバン”

1997年に初登場し、プレミアム・ミニバンのジャンルを切り拓いた日産エルグランド。
その系譜は「走りのミニバン」として全高を抑えた3代目「E52」型が、室内空間の広さと質感の高さ、そして押し出しの強さでダメ押ししたトヨタ・アルファードに市場を奪われた。

かつ、日産のお家芸とも言える「e-POWER」や「プロパイロット」といった電動化のテコ入れをしないまま、15年以上そのライフサイクルを維持したことで、両者の差は大きく開いてしまった。

そんな日産が、遂に4代目エルグランドを登場させた。
開発陣は諦めることなくその魅力に「運転の楽しさ」を掲げているけれど、目玉は間違いなく、懸案だった「電動化」だ。

「e-POWER」×「e-4ORCE」の電動AWD
パワーユニットは、1.5L直列3気筒「VCターボ」(144PS/250Nm)を発電専用エンジンとして搭載。これに発電機/インバーター/減速機(駆動側)/増速機(エンジン側)をまとめた「5-in-1」構造として、パワーユニットの小型・効率化を図った。

駆動方式は「e-4ORCE」(イー・フォース:モーター駆動の4WD)のみとなった。
おそらく上位グレードの「G」で2440kg、標準グレードの「X」でもわずか10kgしか軽くならないその車重を支えるには、FWDではバランスを保てなかったのだろう。ちなみにアルファードの4WDハイブリッドモデルと較べても、エルグランドは約200kg以上重い。
| 車名(グレード) | 重量 |
| エルグランド「X」 | 2430kg |
| エルグランド「G」 | 2440kg |
| アルファード「Z」(ハイブリッドE-Four) | 2220kg |
| アルファード「Z」(プラグインハイブリッドE-Four) | 2440kg |
フロントモーターの最高出力は204ps/330Nm、リヤモーターは136ps/195Nmで、日産はシステム最高出力を公表していないが、単純にこれを足し合わせた数値は340ps/525Nmと、アルファード(250ps/トルク値は未公表)を大きく上回る。これをパワーウェイトレシオで較べてもエルグランドは7.17kg/psと、アルファード(8.88kg/ps)よりパワフルだ。
| 車名 | エルグランド | アルファード |
| 最大出力 | F:204ps R:136ps | F:182ps R:54ps |
| 最大トルク | F: 330Nm R:195Nm | F:270Nm R:121Nm |
| システム最高出力 | 340ps/525Nm(※1) | 250ps/トルク未公表 |
| パワーウェイトレシオ | 7.17kg/ps(※2) | 8.88kg/ps(※3) |
| 燃費(WLTC) | 16.8km/L | 17.8km/L(「GハイブリッドE-Four」) 16.8km/L(「ZプラグインハイブリッドE-Four」) |
※2)「G」グレード2440kgで計算
※3)「ZハイブリッドE-Four」グレード2220kgで計算
肝心な燃費は16.8km/L(WLTC総合)と、アルファードの2.5Lハイブリッド E-Fourの最大17.8km/Lに若干届かないが、より大きなバッテリーを搭載するアルファード2.5L PHEV E-Four「Z」グレードと較べれば、実は同数値。
対して価格はエルグランド「X」が689万7000円、上級仕様の「G」でも757万9000円と、価格的にも約7万円~75万円ほど抑えられている。
| エルグランド | 価格 |
| G | 757万9000円 |
| X | 689万7000円 |
| アルファード | 価格 |
| ZプラグインハイブリッドE-Four | 764万9400円 |
| ZハイブリッドE-Four | 661万9800円 |
| GハイブリッドE-Four | 581万9000円 |
日産開発陣はエルグランドを、そしてe-POWER搭載車を「充電の要らないEV」と表現している。言い換えればシリーズハイブリッドの静粛性や走りの質感が、よりバッテリー容量が大きなプラグインハイブリッドに匹敵するのか? が、エルグランドにとっての見所だと言える。
滑らかでしなやかな走りはまさにEV

試乗したのは上級グレードとなる「G」。
走り出した瞬間から気付くのは、どのハイブリッドと較べても圧倒的に滑らかな出足だ。100%モーター駆動であるe-POWERのレスポンスと制御の滑らかさは、今さら特筆すべきことではないが、それでもエルグランドの“EV感”は見事だった。

その秘訣はまず、500Nmを超えるトルクを見事に裁き切るだけでなく、ピッチング制御にまで役立てるe-4ORCEの4輪制御だ。
そして「インテリジェント ダイナミックサスペンション」と呼ばれる電子制御ダンパーが、大きなボディの姿勢変化を穏やかに補正しながら、路面からの入力を減衰する。

特に「コンフォート」モードの制御などは、オタクの領域である。
うねりを越えるバネ下のタイヤさばきは実にしなやかで、上屋(車体)も揺さぶられない。カーブに差し掛かればロールは許すが、操舵応答性はとても自然。ターンしたら軽くアクセルを合わせていくだけで、姿勢をフラットに保ちながら、上手に車体をコーナリング体制に持ち込んでくれる。

ボッシュと協同開発を行った「スムーズストップ」機能の出来映えも素晴らしかった。この機能があると赤信号や一時停止など、目標に向かって制動をするときでも、停止寸前に油圧を抜いて、制動Gを逃がしてくれるのだ。さらにこのとき前後モーターの回生ブレーキをも協調制御させて、車体をフラットに保つ。熟練したドライバーは停止線に向かってブレーキ圧を調整できるが、この制動距離の短さまでは真似できない。また、いざ緊急ブレーキを踏むような場合には、ドライバーの操作が100%優先されるようになっている。
ワインディング&高速道路での走りは?

そんなエルグランドを敢えてワインディングで走らせてみたが、これが実にまとまっていた。スポーツモードに高めた減衰力は硬すぎず粘り越しで、大きなボディのロールを穏やかかに制御してくれる。かつ4輪の制御が緻密にサポートしてくれるから、驚くほど自然に旋回姿勢が決まる。アクセルを踏み出せば4輪がトルクをうまく配分しあって、着実にトラクションを掛けてくれる。重量を忘れてはいけないが、その走りはミニバンとは思えないほどスムーズだ。

高速巡航も、ちょっとワクワクするほど快適だ。5m弱のボディながら直進性は高く、レーンチェンジでもスムーズで、そこからヨーモーメントの収まりがよいから、ピタッと姿勢が収まる。
加速は力強いが、素晴らしいのはそのパワーの出し方だ。敢えてアクセルを乱暴に踏み込んでも加速度が乱暴に立ち上がらず、新幹線のように心地良い躍度で速度を乗せていく。その快適な高速移動っぷりは「自家用グリーン車」だ。

これで空力安定性がさらに加われば言うことなしだが、燃費の面でもドラッグは増やしたくないだろう。この先「ニスモ」が登場するのであれば、可変スポイラーを着けて欲しい。

ということで次回は、エルグランドのハイライトのひとつである「プロパイロット」について触れてみたい。