見た目は綺麗でも下回りはサビ穴だらけ!
8年放置のカプチーノを救う大規模レストア
「そのうち……と思っているうちに、長い時間が過ぎてしまったようですね。着手前に現車確認に行きましたが、タイヤは空気が抜け切ってペシャンコ。ウインチ付きの積載車で、何とか引っ張り出すような状態でした」。

そう振り返るのは、カプチーノのレストアやリビルドからマニアックなカスタマイズまで手掛ける、福岡のスペシャリスト「ピューパ」の代表、白澤さんだ。
今回紹介するのは、車検が切れてから約8年間も放置されていたカプチーノの復活プロジェクト。ダメージの程度によっては修復を断念するようアドバイスすることも考えていたが、実車を確認すると、掘り車庫の中でカバーを掛けて保管されていたこともあり、外装は時間の経過を感じさせないほど良好な状態だったという。
エンジンも始動可能で、圧縮も許容範囲内。何より、愛車を復活させたいというオーナーの熱意に心を打たれ、作業を進めることを決断した。


しかし、リフトで車体を持ち上げると状況は一変。下回りは地面からの湿気などによって腐食が進行し、フロアには複数のサビ穴が発生していた。長期間の放置によるダメージに加え、純正部品の廃盤が増えていることも、作業を難しくする要因となった。
「部品取り車や中古パーツを活用しながら、何とか現在の状態まで漕ぎ着けました。せっかくウチを見込んで声を掛けてくださったのですから、何とか期待に応えなければという気持ちでしたね」。
修復作業は、車体の腐食対策から機関系の整備まで、広範囲に及んだ。




まず、サビがひどかったサスペンションアームやサブフレームは、古い塗装と腐食部分を手作業で除去。さらにサンドブラストと下地処理を施したうえで塩害ガードを塗布し、再びサビが発生しにくい状態へと仕上げている。ブッシュ類はすべて打ち替え、ブレーキもオーバーホール。長年の不動状態で空気が抜け、完全に変形していたタイヤも交換対象となった。


燃料系も深刻な状態だった。ガソリンタンクは外側だけでなく内部まで赤サビに覆われ、燃料計のフロートは腐食によって折損。燃料ポンプもサビで朽ち果て、使用できない状態となっていたため、ピューパが保有するストック品を活用して修復している。

そして、今回のレストアで特に手間が掛かったのがフロア周辺だ。
カプチーノでは定番の腐食箇所であるバックパネルに加え、フロアやトランク周辺にもサビ穴が点在。これらを鈑金作業で修復し、表面を整えたうえで防錆処理を実施した。最後にアンダーボディシールを施すことで、下回りを見違えるほど綺麗な状態へと蘇らせている。

さらに、リヤフェンダー内側などには、車内に侵入した雨水をスムーズに排出するための、ピューパ独自のドレン加工も追加。単に現状の腐食を修復するだけでなく、今後も長く乗り続けられるようにするための対策だ。


内装にも、長期保管による湿気の影響は避けられなかった。純正シートにはカビが発生し、バックレストにも亀裂が入っていたため、アルカリ電解水などを使って丁寧にクリーニング。傷んだバックレストはストックしていた中古品に交換し、フロアカーペットもカビによる健康面への影響を考慮して、状態の良い中古品に入れ替えた。

機関系ではオイルラインやウォーターラインをリフレッシュし、タイミングベルトの交換やミッションのオーバーホールなども実施。取材時点では、下回りの修復や穴あき部分の鈑金作業がほぼ完了し、入庫時とは比べものにならない状態まで仕上がっていた。
こうした作業を通じて、白澤さんが改めて強調するのは、不具合への対処を先延ばしにしないことの重要性だ。

「最近目に付くのが、『その場しのぎ』の整備や修理で維持されてきた個体です。ステアリングラック内のブッシュが縮んでガタガタだったり、ハブベアリングからゴーゴー音が出ていたりと、『よくこれで乗っていたな』という個体も珍しくありません」。
例えば、ステアリングラックのブーツが破れていると、伸縮する際に雨水や泥が入り込み、ボールジョイントが真っ赤にサビてしまうこともある。ラック内のブッシュの硬化によるガタつきや、タイロッドエンドの破損なども、カプチーノでは注意しておきたい症状だという。
「趣味車として大切に乗り続けたいなら、車検の際には腹をくくって『悪いところは全部換えて!』と言える心構えを持ってほしいですね。不調への対処を先延ばしにすると、後々必ずツケが回ってきます」。

また、カプチーノを快適に乗り続けるためのメニューとして、ピューパが力を入れているのがエアコンのリフレッシュだ。
純正のR12冷媒からR134a対応へ変更するオリジナルのレトロフィットキットを用意しており、廃盤となった純正エキスパンションバルブについても、代替品を使用して対応可能。コンプレッサー、コンデンサー、エキスパンションバルブ、レシーバータンク一式の交換で、参考予算は17〜18万円。車両の状態にもよるが、税込20万円以下で十分な冷房性能を取り戻せるという。
併せて、経年劣化で色褪せたエアコン操作パネルをピューパ製のリフレッシュパーツに交換すれば、インテリアの印象も一新できる。

一方、長年デモカー兼愛車として活躍してきた「EVA」は、新たなオーナーへと譲渡された。その背景にあるのは、物価高騰に加え、オイルやシンナーなどの石油由来製品の調達が難しくなるなど、レストア業界を取り巻く厳しい状況だ。
「十分な資材を確保できず、ご予約をいただいていたお客様には入庫時期の変更もお願いしました。少しでも資材の確保に充てられるならと、愛車の売却を決めたんです。寂しいですが、次のオーナーさんにも大切に乗っていってほしいですね」と白澤さん。
「資材不足でお客様に迷惑を掛けることのないように、一日でも早く作業に着手することが、車両の状態を維持・向上させることにつながります。常に一歩先を見据えて動いていく必要がありますね」。

今回の8年放置車両の復活劇は、カプチーノを長く楽しむために何が必要なのかを、改めて教えてくれる。外からは見えない部分まで徹底して手を入れ、将来のトラブルを未然に防ぐ。そんなピューパの熟練した技術とノウハウがあれば、カプチーノの現役生活はまだまだ続けられそうだ。
●取材協力:トイガレージ・ピューパ 福岡県糸島市荻浦3-2-14 TEL:092-335-3366
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