「オーセンティック」「一貫性」「タイムレス」。三つのキーワードを軸に、歴代モデルの要素を再構成
1953年、ミッドシップの550スパイダーがここで撮影され、その写真は世界に広まった。ニューヨーク・クイーンズの、マンハッタンのスカイラインを望む埠頭である。550スパイダーはポルシェ初のスーパースポーツカーで、米国でのブランドの人気を支える基盤にもなったモデルだ。
そしてポルシェは10月15日(現地時間)、同じ場所でビジョンモデル「ミッションS」を世界初公開した。


ミッションSは、ポルシェが進める戦略再編「Sportwagenschmiede ’35」の一環として公開されたもので、今後のポルシェのデザインアイデンティティを初めて具体的な形にしたモデルだ。ポルシェAG取締役会会長のミヒャエル・ライタース氏は「ポルシェは、ひと目でポルシェだとわかるものでなければなりません」と語った。
ミッションSは同時に、911の上に置くミッドシップ・スーパースポーツのプラットフォームも示している。ライタース氏は、このプラットフォームは一台限りのハイパーカーのためのものではなく、ラインナップに継続的に加わるものだと説明している。
ミッションSのデザインの枠組みは、「オーセンティック(本物であること)」「一貫性」「タイムレス」という三つのキーワードから成る。スタイル・ポルシェ責任者のトビアス・ズールマン氏は次のように語る。
「ミッションSは、今後を見据えた総合的なデザイン戦略から生まれたものです。このビジョンモデルは基本的な戦略の方向性を示しており、近いうちに今後の製品ラインナップへ反映していきます」
エクステリアは、歴代ポルシェのアイコン的なモデルから受け継いだ要素で構成した。インテリアはピュアさとドライバー中心の操作性が軸だ。デジタル表示の面積をあえて減らし、ドライバーとクルマの直接的なやり取りに重きを置いたという。


プロポーションを決めているのは、ミッドシップのレイアウトだ。エンジンを車体中央に置いたことで、ルーフからリヤへなだらかに下る、ポルシェおなじみのサイドシルエット「フライライン」を実現した。
ミッションSの造形の骨格となるのは、トーピード(魚雷)形状のフェンダー、ポルシェらしいルーフライン、全高に対して際立って広い全幅の三つ。これらの要素を組み合わせ、宙に浮いているように見える面とボリュームを構成している。ポルシェが「フローティング・ボリューム」と呼ぶ造形だ。

ボディを一周するメインラインは、フロントとリヤのライトシグネチャーをつないでいる。このラインの上側は筋肉質で躍動感のある面、下側は機能部品を見せながら軽量構造を表現する面となる。かように、上下で役割を分けているのが特徴だ。

フロントまわりでは、丸型ヘッドランプが911を思わせる。フラットなフロントの造形はGT1から取り入れたものだ。ランプのグラフィックに溶け込むパネルの見切り線は、Gモデルの911へのオマージュである。
リヤまわりでは、リヤウイングの下を通るルーフラインが959を思わせる。ミッションSでは、ルーフラインがそのまま車体の後端まで伸びているのが目新しい。ボディに完全に組み込んだアクティブリヤウイングと、GT1に由来する「カー・イン・カー」コンセプトも、リヤの特徴。917のラジエターファンを思わせる冷却機構も、機能とデザインを結びつけたディテールのひとつと言える。
ホイールは928の「ダイヤルデザイン」をベースにした新しい意匠で、軽量化も徹底的に追求された。


すべての操作系をドライバーに向けて配置。5連丸型メーターは走行モードで並びが変化
インテリアの考え方の中心にあるのは、すべての操作系をドライバーに向けて配置すること。ステアリングホイールの奥には、911の伝統である5連の丸型メーターを並べた。中央のタコメーターは、アナログの針の背後にディスプレイを重ねた構成だ。走行モードによってはドライバー側へせり出し、運転への集中を促す。また、メーターの筒の並びもモードに応じて変化し、横一列の配置と前後に重なる配置を切り替えるという。
専用デザインのキーを収めるホルダーは、ポルシェの慣例どおりステアリングホイールの左側に配置した。ダッシュボードにはプッシュ/プルで操作する新しいコントロール類を設け、快適装備や走行機能に直接アクセスすることが可能。また、スポーツクロノのエレメントも新たにデザインされ、アナログの趣とデジタルの精度を組み合わせたものになっている。


ダッシュボードには、常設のセンターディスプレイも助手席用ディスプレイも設けられていない。代わりにMagSafe対応の格納式スマートフォンホルダーを用意した。必要に応じて、自分のスマートフォンをナビゲーションや情報表示の画面にする仕組みだ。機能の操作はシンプルに整理したMy Porsche Appで行なう。アプリでは、歴代モデルをモチーフにしたメーターのデザインも選べるという。
キャビン全体は、550スパイダーや356といった歴代のスポーツカーをベースに構成したという。ダッシュボードからドアへと連なる2本のラインは、「クルマの奥深くに座る」感覚を生むと同時に、エクステリアとの視覚的なつながりも狙ったもの。シートはセンターパネルにシートベルトのバックルを組み込み、電動調整スイッチの位置も変更している。



カラーは、ポルシェのレーシングカーの伝統である白、グレー、赤が基調。専用に開発したのは、Firn White Metallic、Light Red Metallic、Black Chrome、インテリアのSpecial Blackだ。いずれもポルシェ・モータースポーツのクラシックなカラーを現代的に解釈したものだという。
ミッションSのデザインが今後のポルシェの製品群の方向性を示唆する
ポルシェは、継続的に販売するスーパースポーツカーを911の上に初めてラインナップする計画だ。具体的なパワートレインや市販の時期は公表されていない。ミッションSは、そのプラットフォームと、今後のポルシェ全体のデザインの方向性を同時に示すモデルというわけだ。




