SLS AMG
「300SL」の現代流解釈

2009年、メルセデスAMGはフランクフルト・ショーで2シーターのスーパースポーツ「メルセデス・ベンツ SLS AMG」を発表する。ベース車をもたない専用設計のモデルとしては2004年のSLRマクラーレン以来となるが、SLS AMG最大の特徴は、同社史上初めてすべてゼロから設計、製造したモデルということにあった。
シャシーは「SLRマクラーレン」のようなカーボンモノコックではなく、コストを意識したアルミ製スペースフレームを採用。ガルウイングドアを備えたアルミ製ボディはマーク・フェザーストンがデザインしたもので、「300SL」の現代流解釈というべき、端正なロングノーズ&ショートデッキ・スタイルに仕上がっている。
エンジンは、AMGオリジナルのM156型をベースにドライサンプ化、新設計の吸排気システム、改良されたバルブトレインとカムシャフト、流量を最適化したチューブラー鋼製ヘッダーなどを採用し、新たにM159という型番を与えられた6.2リッターV8 DOHCをフロントアクスル後方の低い位置に搭載した。M159の最高出力は571PS/6800rpm、最大トルクは650Nm/4750rpmで、ローンチコントロール機能も備えた新開発のゲトラグ製7速DCT「AMGスピードシフトDCT」を介して0-100km/h加速3.8秒、最高速度317km/h(電子リミッター作動)というパフォーマンスを発揮した。
トランスアクスルで良好な前後重量配分

サスペンションは鍛造アルミ製のコントロールアームをもつ前後ダブルウイッシュボーン式で、オプションでスプリングレートやダンピングレートを高めた「AMGパフォーマンスサスペンション」を用意。
また徹底的な軽量化が図られた結果、車両重量1619kgにまとめられた車体は、フロントミッドシップレイアウト、トランスアクスルの採用で前後重量配分47対53を実現。その開発には元F1ドライバーのデビッド・クルサードが深く関わっていたこともあり、良好なハンドリングは高い評価を得た。
なおシャシーとボディの製造はオーストリアのマグナ・シュタイアが生産を担当。アファルターバッハのAMGで手作業で組み立てられたM159ユニットとともにドイツ・ジンデルフィンゲンにあるメルセデス・ベンツの工場に送られ、アッセンブリーされるという方式が採られている。
2010年のニューヨーク・ショーでは、パドルシフト付きシーケンシャル6速レーシングトランスミッション、マルチディスクロッキングディファレンシャル、AMG製18インチ軽量合金ホイール、ABSを備えたスチール製レーシングブレーキシステムなどを装備したFIA GT3用「SLS AMG GT3」を発表。日本のスーパーGTをはじめ、世界各地のGTレースに出場し、大成功を納めることなる。
ハイパフォーマンス版「SLS AMG ブラックシリーズ」も

続く2011年のフランクフルト・ショーでは11秒で開閉可能なファブリック製トップを備えたオープン仕様の「SLS AMG ロードスター」が登場。車重は40kgほど増加したが、0-100km/h加速3.8秒。最高速度317km/hというパフォーマンスはクーペと変わっていない。
さらに2012年にはクーペ、ロードスターそれぞれにM159型ユニットの最高出力を591PSにアップし、AMG RIDE CONTROLパフォーマンスサスペンションを標準装備とした「SLS GT」を追加。
2013年にはSLS AMG GT3の技術をフィードバックし、トルクチューブ、ボンネット、リヤパネルなどにカーボンファイバーを使用するなど軽量化を施すことで車両重量を1550kgへとシェイプアップ。また631PS、635NmへとチューンしたM159ユニット、新しい冷却システム、アップデートしたAMGスピードシフトDCT、AMGセラミック・ハイパフォーマンス・コンポジット・ブレーキシステムを採用したハイパフォーマンス版の「SLS AMG ブラックシリーズ」を発表している。
電気自動車版などの発展

そのほか、いくつものリミテッドエディションを追加しながらSLS AMGは2014年まで生産が続けられたが、2013年には4基で552kWを発生する電気モーターを搭載した電気自動車の「SLS AMGエレクトリックドライブ」も、たった9台ながら販売されている。
