ドリフトからタイムアタックの世界へ!

R31ハウスが挑んだ新たなる戦い

R31スカイラインのスペシャリストとして知られる“R31ハウス”。近年は、オリジナルスポーツタイヤを展開するシバタイヤ、整備事業を担う柴田自動車、モータースポーツ活動を行うSHIBATAレーシングチームなど、事業領域を大きく広げている。

これまでD1GPやフォーミュラ・ドリフトなど、ドリフト競技を中心に活動してきた同グループ。しかし、シバタイヤが本格的なサーキット走行用タイヤの開発を進めてきたこともあり、新たにタイムアタックへの挑戦を決意した。その第一弾として製作されたのが、2019〜2020年にD1GPへ参戦していた車両をリメイクしたR31スカイラインだ。

作業が始まったのは2025年の夏前。しかし、事業の拡大に加え、ドリフト競技への参戦やイベント出展などで多忙を極め、完成を迎えないまま年を越してしまう。参戦を表明していた「Attack 2026」の開催が目前に迫り、最終的にはイベント前日に行われたテスト走行会が、事実上のシェイクダウンとなった。

ドライバーを務めるのは、R31ハウスのスタッフであり、D1GPなどでも活躍してきた蕎麦切広大選手。ラジドリ出身のドライバーとして知られ、近年はグリップ走行にも活動の幅を広げている。

今回の目標は、筑波サーキットで1分を切る、いわゆる「分切り」だ。ほぼぶっつけ本番での挑戦となった蕎麦切選手は、まず期日までにマシンが完成したことに驚き、さらに走り始めると、予想外の乗り味に戸惑うことになった。最大の問題は、強烈なアンダーステアだった。

もともとR31は、サスペンション構造の面からタイムアタックには不利とされてきた車種。そこで今回のマシンでは、前後ともにR34スカイラインのマルチリンク式サスペンションを移植するという、大掛かりな改造が施されている。

しかし、期待していた優れたドライビングフィールとは裏腹に、実際には腰高感が強く、前後のロールバランスも不十分。アライメントの影響も考えられるアンダーステアに悩まされ、現場ではスプリングレートやアライメントの調整で対応することとなった。

それでも蕎麦切選手は、59秒998を記録。わずか0.002秒差ながら、初参戦で目標としていた筑波分切りを達成してみせた。計測ポイントでの最高速も213.439km/hに達している。

その後はスタビライザーを追加したほか、車高調整の自由度を高めるためにサスペンション取り付け部も変更。鈴鹿サーキットでは2分17秒448を記録し、次のシーズンに向けて開発を進めている。

そんなR31の心臓部には、専門店ならではのこだわりが詰まっている。効率だけを考えればRB26DETTをベースにするのが手っ取り早いが、GTS-Xらしさを残すため、あえてRB25を選択。ただし、パフォーマンスを追求する過程でシリンダーヘッドにはRB26用を採用し、ピストン径を87φに拡大することで排気量を2.6L化。各部を強化したRB25改エンジンへと仕上げられている。

過給機にはHKSのGT6290BBタービンをシングルでセットし、6BOOST製エキゾーストマニホールドとトラスト製サージタンクを組み合わせる。最高出力は約700ps、最大トルクは約70kgm。トップクラスのタイムアタックマシンと比べれば絶対的なパワーは控えめだが、初年度の仕様としては十分な戦闘力を備えている。

エンジン制御にはLINKのFURY Xを採用し、82φの電子制御シングルスロットルもコントロール。電装系にはMoTeCのPDM15、ダッシュロガーにはECU Master製の製品を導入するなど、用途に応じて各メーカーのアイテムを使い分けている。

ミッションはサムソナス製のシーケンシャルドグを採用し、フラットシフトにも対応する。

排気系には、R31ハウスオリジナルの市販モデルである80φマフラーとフロントパイプを使用する。

足まわりは、前述したR34マルチリンクの移植が最大のポイント。アーム類はほぼすべて調整式とし、リヤにはGT-R用のR200デフやナックル、強化ドライブシャフトを組み合わせる。今後はアライメントやロールバランスの最適化が、さらなるタイムアップの鍵となりそうだ。

タイヤは自社ブランドのシバタイヤR50-T9βで、サイズは前後295/32.5R18。ブレーキもR31ハウスオリジナルとなり、フロントは355φローターと6ポットキャリパー、リヤは345φローターと4ポットキャリパーという構成だ。

エクステリアは、R31ハウスのフルエアロとワイドボディキット「Gパワー」で武装。リヤウイングもR31の直線基調のデザインに合わせて選択されており、車種本来の雰囲気を活かした仕上がりとなっている。

室内には多数の補強を加えたロールケージを張り巡らせ、ボディにもフルスポット増しを実施。ステアリングには、シバタ・モータースポーツの蕎麦切広大オリジナルモデルを装着する。

こうして初参戦で筑波分切りを達成したR31だが、足まわりを中心に課題はまだ多く残されている。しかし、それは裏を返せば、まだまだ進化の余地があるということでもある。

長年、サーキット走行には不利とされてきたR31スカイライン。そのポテンシャルをスペシャリスト自身がどこまで引き出せるのか。専門店のプライドを懸けた新たな挑戦は、まだ始まったばかりだ。

●取材協力:R31ハウス 岐阜県加茂郡坂祝町黒岩1081 TEL:0574-28-0899

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【関連リンク】
R31ハウス
https://www.r31house.co.jp/