縦型から横型へ。エンジンを大刷新【ホンダ・ライブディオZX】

ZXらしさ全開。フロントディスクとリヤスポイラーが、当時の“速いスクーター”感をしっかり演出する

HONDA ライブディオZX|1994年発売

1988年に初代Dioが登場し、1990年にはスーパーディオへモデルチェンジ。そして1994年(平成6年)、Dioシリーズはさらに大きく姿を変える。それが三代目にあたるライブディオだ。

最大のトピックは、新設計の空冷2ストローク単気筒エンジン。従来のDio系では縦方向に配置されていたシリンダーを、ライブディオでは水平に寝かせる横型レイアウトへ変更した。

この水平配置によって吸・排気系を可能な限りストレート化し、吸排気効率を向上。さらにエンジンが占める空間を効率よく使えるようになり、燃料タンクは5.0Lから5.3L、オイルタンクも1.2Lから1.3Lへ容量アップ。シート下収納(メットイン)の底面もフラット化され、使い勝手も高められている。

つまり、横型エンジン化は「速くするため」だけではない。シート下の限られた空間を有効に使いながら、収納性やタンク容量まで伸ばせるのが大きなメリットだった。

当時、ヤマハJOGやスズキのスポーツスクーターではすでに横型レイアウトを採用し、その熟成を進めていた。そこへ1994年、Dioも満を持して横型エンジンで参戦したというわけだ。

しかもホンダが狙ったのは、単純な速さだけではなかった。吸排気効率を高めながら、シート下のスペース効率も改善し、収納性やタンク容量までまとめて進化。純粋な速さではJOG系に分があったものの、ライブディオは走りと日常性を高いレベルで両立し、人気をさらに押し上げていった。長く続くDioシリーズにとって、かなり重要なモデルチェンジだったといえる。

0.2psアップだけじゃない! ZXは足周りまでしっかりスポーツ仕様

真横から見ると、ライブディオの低くまとまった車体構成がよくわかる。1994年モデルではエンジンを横型レイアウトへ刷新した

新しいライブディオには、スタンダードのDio、Dio SR、そしてスポーツグレードのDio ZXという3タイプが用意された。

スタンダードのDioとDio SRが7.0psだったのに対し、ZXは最高出力7.2ps/6500rpm。わずか0.2psの違いではあるが、中・高回転域で伸びのある加速を狙った専用セッティングとなっていた。

しかもZXの違いはエンジンだけじゃない。

フロントには油圧式ディスクブレーキを採用し、スポーティなテレスコピック式サスペンションと組み合わせる。さらに幅広チューブレスタイヤを履き、スタンダードモデルとは明確に差別化された。

後ろ姿で目立つのが、発光ダイオードを使ったハイマウント・ストップランプ内蔵のリヤスポイラー。7.2psエンジンや前ディスクとあわせ、ひと目でスポーツグレードとわかる仕立てになっていた。

速さだけを追うのではなく、「収納性や扱いやすさも欲しい。でも見た目も走りもスポーティじゃなきゃイヤ」。そんな1990年代の若者の欲張りな要求に、ZXはかなり真正面から応えていた。

【SPECIFICATIONS】

総排気量:49cc
エンジン:空冷2ストローク単気筒
最高出力:7.2ps/6500rpm
最大トルク:0.81kgm/6250rpm
全長×全幅×全高:1675×630×995mm
重量:76kg
タイヤ:90/90-10・90/90-10
発売当時価格:17万2010円(税込)

“ZX”が特別に見えた理由は、ちゃんと中身にもあった

LED内蔵のリヤスポイラー、フロントディスクブレーキ、最高出力7.2ps。ハイグリップタイヤ。見た目だけの上級グレードではなく、エンジン、足周り、収納性までしっかり手が入っていたからこそ、ライブディオZXは特別感のある1台になった。

しかも、この1994年型で採用された横型エンジンの基本レイアウトは、その後のDioシリーズを語るうえでも大きな転換点となる。

今でもたまにZXを見かけると、「お、ZXじゃん」とちょっと目で追ってしまう。そんな感覚、当時を知る人なら分かってもらえるのでは?

※この記事は月刊モトチャンプ2925年12月号を基に加筆修正を行っています

【モトチャンプ編集部】