車格は下なのに… 後席空間はキックスの方が広い




キックスのボディ全長はクロストレックよりも115mm短いが、後席はキックスの方が膝まわり/頭上空間ともに拳ひとつぶんほど広く確保されている。この要因はパワートレインの搭載レイアウトにあると言ってよいだろう。
全長が短い水平対向エンジンとはいえ、縦置きレイアウトとなるクロストレックに対し、横置きレイアウトのキックスはキャビンスペースが確保しやすい。また後席空間の違いは、クロストレックの方が荷室空間を広く取っていることも一因だ。
クロストレックの荷室寸法は長さ808mm×幅1090mm×高さ688mmであるのに対し、キックスは長さ750mm×幅945mm×高さ705mmとなり、床面積はクロストレックが広く、荷室高はキックスの方が高い。しかし、どちらも後席背もたれは6:4分割で、格納すればフラットな荷室になる点は共通だ。どちらも100Vコンセントをオプションで装着できる点も同じであり、荷室の使い勝手に関してはほぼ同等と言ってよいだろう。
ただし内外装デザインは2022年に登場したクロストレックと最新のキックスとでは大きな差が感じられるほか、細部の機能面でもキックスが一歩先を行く。
キックスは後席中央のコンソール部にエアコン吹き出し口が備わるうえ、グレードによってはリモコン操作式のバックドアとオートクロージャーも装備されるが、クロストレックは上級グレードであってもこれらの装備は非搭載だ。
加えて、両車の最小回転半径は5.4mと5.3mでキックスの方がわずかに小回りが効く。車内の使い勝手や、取り回しに関してはキックスの方が上と言えるだろう。
なお、クロストレックは今回の改良で基本外観等に変更はないが、ルーフレール色が従来の6色展開からブラックの単色へ統一されたほか、ボディカラーに“イグニッションレッド”が追加された。また、クロストレックのプレミアムS:HEVはナビ機能(8万8000円)がオプションで追加できるようになった。
一方、キックス ロッククリークにナビを装着するには、12.3インチモニターの“NissanConnectインフォテインメントシステム”が標準装備となる“ユーティリティスペック”を選ぶか、スタンドアロンナビ(23万6500円)もしくはディスプレイオーディオ(12万6500円)をオプションで選択する必要がある。
スバル クロストレック Premium S:HEV
ボディサイズ=全長4480mm×全幅1800mm×全高1575mm
ホイールベース=2670mm
車両重量=1660kg
タイヤサイズ=225/55R18(前後)
日産 キックス ROCK CREEK e-4ORCE
ボディサイズ=全長4365mm×全幅1800mm×全高1610mm
ホイールベース=2655mm
車両重量=1550kg
タイヤサイズ=215/60R17(前後)
燃費性能だけでなく加速でもキックス e-4ORCEが優れる


クロストレックのパワートレインは、2.5L 水平対向4気筒エンジンと最高出力119.6ps/最大トルク270Nmのモーターを状況に応じて使い分けるストロングハイブリッド“S:HEV”のみの設定となった。
対するキックスは、1.4L 直列3気筒エンジンで発電し、前輪を最高出力143ps/最大トルク315Nmのモーターで駆動する“e-POWER”だ。e-4ORCEモデルの後輪は68ps/140Nmのモーターで直接駆動される。
発進から100km/hまでの加速性能は大トルクモーターの恩恵を受けるキックスの方が高く、非公式の0-100km/h加速タイムはキックスの方が約1秒ほど速い。ただし、速度域が高まるほどトルクが低下するモーター基本特性上、高速度域になるほど加速力ではエンジンの動力で直接駆動できるクロストレックが優位となるだろう。
燃費性能においてもキックスが優勢だ。キックスのロッククリークは持ち込み登録となるため正確な燃費数値は公表されていないが、ベース車のWLTCモード平均燃費は21.5km/L(X e-4ORCE)となる。対するクロストレックのWLTCモード平均燃費は19.5km/L(プレミアムS:HEV)だ。
郊外燃費は両車ほぼ同等だが、市街地モードでは約5km/Lもの差を付けてキックスが優れ、シリーズハイブリッドが苦手とされる高速燃費でもキックスが上回る。こうした燃費差が生じる要因はエンジン排気量やハイブリッドシステムの違いだけでなく、4WDシステムの構造にもある。
クロストレックの4WDシステムはエンジンとモーターの合力で4輪を駆動しており、どうしても動力損失が生じる。高速低負荷走行時にはクラッチを切って前輪のみの駆動とすることで燃費の悪化を抑えてはいるが、駆動ロスの影響は避けられない。
その点、モーターで直接前後輪を駆動するキックスの駆動ロスは小さい。さらにe-4ORCEは前後のモーターとブレーキを統合制御し、滑りやすい路面でも高い安定性を発揮するほか、駆動を緻密に制御して車体の揺れを抑え込むなど機械式4WDでは不可能な動作を可能とする。
ただし、電子制御によって悪路走破性を高める“X-MODE”やヒルディセントコントロールが搭載されるクロストレックに対し、キックスは“SPORT”や“ECO”など全4種のドライブモードに“SNOW”が備わるのみだ。オフロードスタイルの“ロッククリーク”とはいえ、決して不整地走行を得意とするクルマではない点に注意したい。
スバル クロストレック Premium S:HEV
エンジン形式=水平対向4気筒ガソリンエンジン+モーター
排気量=2498cc
最高出力=160ps/5600rpm
最大トルク=209Nm/4000-4400rpm
トランスミッション=電気式CVT
駆動方式=4WD
日産 キックス ROCK CREEK e-4ORCE
エンジン形式=直列3気筒ガソリンエンジン+モーター
排気量=1433cc
最高出力=98ps/6000rpm
最大トルク=115Nm/6000rpm
トランスミッション=単速
駆動方式=4WD
余裕の走りが魅力のクロストレックと、使い勝手に優れたキックス


“クロストレック プレミアムS:HEV”の新車価格は改良前から据え置きの383万3500円、“キックス ロッククリーク e-4ORCE”は388万800円であり、両車の価格はおおむね横並びだ。
快適装備の充実度に関しても同等と言ってよいだろう。どちらもステアリングヒーター&前席シートヒーターが標準装備であり、クロストレックはもちろん、キックスのe-4ORCEモデルにも寒冷地装備が標準で備わるため降雪地域での使用も安心だ。
また、両車ともにステアリング調整機構はチルトとテレスコピックの両方が備わっており、体圧分散性に優れたシートが装備される点も共通となる。ただし、クロストレックは電動シートが全グレード標準装備となるが、キックス ロッククリークの電動シートは上級グレード“ユーティリティスペック”の専用装備だ。
両車は似た特性を持つクルマと言ってよいだろう。しかし、格下のキックスが動力性能や静粛性、ユーティリティやコストパフォーマンスのいずれにおいても格上のクロストレックを上回っている。それでいながらキックスの自動車税区分はクロストレックより2クラス下であるうえ、より安価なグレードやFFモデルが選べる美点がある。
しかし、質に関してはセグメント相応にクロストレックの方が高い。とくに2ピニオン電動パワーステアリングによる滑らかなステアリングフィールや、縦置きエンジンに起因する自由度の高いペダルレイアウトはキックスには備わらない特徴だ。
スペックこそキックスに劣っているものの、クロストレックの乗り味やドライバビリティはCセグメントどころか、Dセグメント車にも匹敵する。
街乗り用途から高速道路での中距離移動を主体とする使い方なら、キックスがマッチするだろう。長距離移動や悪天候下での高速走行といったハードな環境下ではクロストレックの方がしっかりとドライバーの期待に応えてくれるはずだ。
車両本体価格
スバル クロストレック Premium S:HEV:383万3500円
日産 キックス ROCK CREEK e-4ORCE:388万800円
