ボディサイズ:新型はひと回り大きくなって、デザインもより力強く
2026年6月から発売が始まったばかりの新型キックスは、ヒットの予感がひしひしと感じられる力作だ。デザイン、走り、そして価格と、すべての要素が高いレベルでまとまっている。先代は日本登場が2020年だったが、もともとは2016年にブラジルで発売が始まったモデル。日本導入にあたって内外装デザインの化粧直しやe-POWERの搭載など、大幅な手直しが加えられたものの、基本設計の古さが感じられる面があったのも事実だ。そうした背景を持つ先代と比べると、新型のレベルアップの度合いはかなり大きいことがよくわかる。
早速、ボディサイズから比較してみよう。新型は全長4365mm(先代比+75mm)×全幅1800mm(同+40mm)×全高1615mm[2WD]/1610mm[4WD](同+5mm)と、ひと回り大きくなっている。ホイールベースも、先代が2620mmだったのに対して、新型は2655mmで35mm長い。


実車を前にすると、その数値以上にサイズアップしているように見える。コンパクトSUVというカテゴリーの1台とは思えないほど堂々とした佇まいだが、そう感じさせる要因はデザインにある。
先代は、薄型ヘッドライトの先端から伸びるメインの「V」と、その内側の細い「V」とを組み合わせたダブルVモーショングリルが特徴。いかにも日産車らしいフロントマスクを携えた、都会的な雰囲気の1台だった。それに対して新型の佇まいからは、ビルドアップしたかのような堂々とした雰囲気が感じられる。デザインコンセプトは「タフ&アジャイル」で、スポーツ選手のような力強さ、ダイナミックさ、俊敏さ、軽快さを併せ持つ姿を目指したという。特に、アメリカンフットボールのヘルメットからインスパイアされたというフロントフェイスは迫力満点だ。先代では17インチだったアルミホイールは、新型では19インチへとサイズアップしている(上級グレード)。その大径ホイールを収めるフェンダーはグッと張り出しており、スタンスの良さが際立っている。
リヤデザインも一変した。先代はリヤフェンダーの張り出しを強調するかのようなテールランプのデザインが目を引いたが、新型は黒いグラフィックを「ロの字」に構成し、その両端にテールライトを配置することで、踏ん張り感のある後ろ姿を演出している。




インテリア:ディスプレイの大型化で先進感が格段にアップ
インテリアも、大きな進化が感じられる部分だ。先代は、中央部分から羽を伸ばしたように左右に広がるソフトパッドを配置した、伸びやかさが感じられるインパネが特徴だった。ただ、センターディスプレイの搭載位置が低めだったり、メーターがフルデジタルではなくアナログの速度計と7インチ液晶画面の組み合わせだったりと、やや開発時期の古さを感じさせる部分が垣間見えたのも事実。新型は、まるでタイムマシンに乗ったかのように、一気に現代的な趣となった。
新型は、メーターディスプレイ、センターディスプレイともに12.3インチの大画面で、それをふたつ並べることで見やすさと先進感を両立している。ちなみにライバルのホンダ・ヴェゼルはメーターが7インチ、センターが9インチ、トヨタ・カローラクロスはメーターが12.3インチ、センターが10.5インチ。新型キックスは、ディスプレイの大きさではライバルを一歩リードしていることがわかる。




シートも新型の自慢ポイントのひとつ。前席のみならず後席にも、体圧分散性の高い「ゼログラビティシート」を採用しており、乗員の負担を軽減する。見た目も上質で、上級グレードのシート表皮にはヴィーガンレザーと上質なファブリックを組み合わせ、ゴールドのアクセントとグラデーションのかかったパーフォレーションを採用。さらに、オプションで用意される10スピーカーのBOSEパーソナルプラスサウンドシステムを装着すると、ヘッドレストスピーカーも追加される。
先代のシートも、筋負荷が最小となる姿勢で身体を支えるスパイナルサポートや、肩はゆったりさせる一方で骨盤から脇をしっかり支えるTシェイプサポートを採用するなど、快適な座り心地を追求していた。このあたりのシートに対するこだわりは、先代も新型も共通する部分だ。
メカニズム:プラットフォームを刷新。e-POWERは第3世代へ進化
続いて、メカニズム面での比較に移ろう。まず、プラットフォームが今回のモデルチェンジで新しくなっている。先代は、K13型マーチにも使われていたVプラットフォーム。車重1000kg前後のコンパクトカーに最適設定されたA/Bセグメント向けで、シンプルかつ低コストを実現したものだ。新興国での生産も考慮して高張力鋼板の使用グレードを抑えるなど、ある意味で割り切った仕様となっていた。
一方、新型は日産/三菱/ルノーのアライアンスで使われるCMF-Bプラットフォーム。その名のとおり、Bセグメント向けのプラットフォームで、日産車では2020年登場の現行型ノートで初採用された。高張力鋼板の使用率も大幅に増えており、先代と比べるとボディのねじり剛性は20%、サスペンションの横剛性は20%、さらにステアリングシステムの剛性は60%向上しているという。
新型では、走行安定性と乗り心地の土台となるボディがしっかりしたことに加えて、ショックアブソーバーも大径タイプを採用する。外筒はφ45mmからφ50mm、内筒はφ30mmからφ32mmに拡大されたことで、減衰力を発生させる際の作動油圧を抑えられ、減衰力がより安定するとともに、微妙なチューニングの自由度が高まる。結果として、乗り心地と操縦安定性を高い次元で両立させやすくなったというわけだ。
そのうえで、高速域の減衰力を低減するバルブを組み合わせた。ここで言う「高速域」とは車速ではなく、ピストンが動く速度を指す。段差など鋭い入力が入ると、ピストンは瞬間的に速く動く。この領域の減衰力を意図的に下げることで、衝撃を効果的にいなす。減衰力は路面の状況に応じて使い分けられる。コーナーやうねった路面ではボディの動きを抑えるために減衰力を高め、安定した姿勢を保つ。一方、段差や荒れた路面では減衰力を下げ、衝撃を吸収して快適性を確保する。例えば、駐車場の出入り口にありがちな段差を乗り越えるシーンでも、突き上げが穏やかになり、ショックの少ない滑らかな挙動を実現しているという。
新型の大きな注目点のひとつが、第3世代e-POWERの搭載だ。発電特化型エンジンと新開発の「5-in-1」電動ユニットを組み合わせ、燃費と静粛性が大幅に高められている。なお、「5-in-1」電動ユニットは、モーター、インバーター、発電機、減速機、増速機という5つの主要部品を一体化したものだ。
モーターには、コイル線を隙間なく配置できる平角線コイルを採用し、大電流を流せるようにした。また、先代のEM47型が最高出力100kW(136PS)/最大トルク280Nmだったのに対して、新型のYM52型は105kW(143PS)/315Nmとなり、出力・トルクともに向上している。また、リヤモーターは同じMM48型だが、新型ではトルクが100Nmから140Nmへ高められた(最高出力50kWは共通)。さらに、インバーターは最新世代のパワーモジュールを搭載し、両面冷却構造とすることで、特に高速域での効率を高めている。
排気量拡大、直噴化、高圧縮化されたHR14DDe型エンジンは、発電特化型ということで回転数を一定に保つ定点運転を行う。ロングストローク形状でシリンダー内に強いタンブル流を生み、高圧縮比・高EGR率でも安定した燃焼を実現している。
先代は、HR12DE型エンジンからなる第1世代e-POWERを搭載していた。それが2022年のマイナーチェンジの際、モーターが高出力化された第2世代へと進化。WLTCモード燃費は当初の21.6km/Lから23.0km/Lへと約6.4%向上した。それが第3世代e-POWERを搭載する新型では、さらに11%向上し、25.7km/Lを達成。e-POWERが苦手と言われることが多い高速燃費では、一気に15%以上向上したというから、かなりの進化だ。


ちなみに、新型の燃費向上は、新たに採用したブレーキ協調制御の効果も大きい。電動ブレーキブースターを採用することで、ブレーキ操作時の運動エネルギーを回生エネルギーとして回収する協調制御が行われるようになった。電動ユニットの一体化は静粛性にも効く。ユニット剛性は60%高くなり、50km/h走行時のエンジン始動騒音を先代比で4.5dB低減している。
また、前述の電動ブレーキブースターの採用は、エンジン始動回数の低減にも一役買っている。エンジンの負圧を必要としないため、停止時にブレーキを強く踏み込んでも、エンジンを始動する必要がないのだ。その結果、WLTC市街地パターンにおけるエンジン始動回数は、先代の4回から1回へ低減された。これも、新型の走りの質感が大きく向上した印象を与える要因となっている。
先進安全装備に関しては、プロパイロットの進化に注目だ。フロントカメラは水平画角が先代の52度から120度へ拡大され、解像度は6倍にアップ。また、AIで道路全体から走行ラインを判断するため、白線がかすれた区間やカーブでも安定し、コーナーではより自然な操舵が、直線ではふらつきの少ない挙動が可能になっている。また、日常の使い勝手の面では、アラウンドビューモニターにフロントワイドビュー、3Dビュー、インビジブルフードビューが新搭載された点もうれしい。
価格:先代から上がってはいるが、新型のお買い得感は高い
最後に、新型のグレード構成と価格を見てみよう。新型は「Xシンプルパッケージ/X/X+/G」の4グレード構成で、それぞれに2WDと4WDが用意されている。
新型キックス・ラインナップ
・X シンプルパッケージ(2WD):299万9700円
・X e-4ORCE シンプルパッケージ(4WD):334万9500円
・X(2WD):325万9300円
・X e-4ORCE(4WD):359万9200円
・X+(2WD):354万9700円
・X+ e-4ORCE(4WD):389万9500円
・G(2WD):389万8400円
・G e-4ORCE(4WD):424万8200円
それに対して、先代のモデル末期のラインナップは以下のとおりだ。
先代キックス・ラインナップ
・X(2WD):308万3300円
・X FOUR(4WD):334万6200円
・X ツートーンインテリアエディション(2WD):321万8600円
・X FOUR ツートーンインテリアエディション(4WD):348万1500円
・AUTECH(2WD):343万7500円
・AUTECH(4WD):370万400円
新型は、2WDモデルが300万円を切る「X シンプルパッケージ」が目を引くものの、これは装備が絞られているから、一般的なユーザーにはちょっと手を出しにくいかも。したがって、メイングレードとなる「X」同士で先代と比較してみると、20万円程度の価格アップとなる。決して小さい金額ではないが、性能向上や装備充実、さらに昨今の物価高を考慮すれば、むしろ新型は「日産、がんばった!」と拍手したくなる価格設定ではないだろうか。










