開発初期から異例のハイペース、BMWが送り出す新型ツーリングの実力とは
BMWが開発を進める新型電動ステーションワゴン「i3ツーリング」のプロトタイプが、ニュルブルクリンク北コースに姿を現した。公道テスト開始から間もない段階ながら、すでに8分を切るラップタイムを記録したとの情報もある。次世代EV専用アーキテクチャー「ノイエ・クラッセ」を採用する新型ワゴンは、日本市場でも注目される存在となりそうだ。

公道テスト開始からわずか数週間! 早くもニュル北コースに出現
BMWが次世代EVラインアップの拡充を加速させている。その新たな主役として登場するのが、電動ステーションワゴン「i3ツーリング」だ。今回、スクープ班のカメラが捉えたのは、ドイツ・ニュルブルクリンク北コースとその周辺で走行テストを行う開発車両である。
注目すべきは、テストの進行速度だ。i3ツーリングは公道での試験走行が確認されてから、わずか数週間でニュルブルクリンクに投入されたという。全長約20.8kmに及ぶ北コースは、急勾配や高速コーナー、路面の起伏が連続する過酷なコースとして知られ、「緑の地獄」の異名を持つ。車両の操縦安定性やサスペンション性能、ブレーキ、駆動系の制御などを総合的に検証できることから、世界中の自動車メーカーが開発拠点として活用している。
新型i3ツーリングも、こうした環境でシャシーや電動パワートレーンの熟成を進めているとみられる。
セダンより大型のリアドアを採用! ワゴンならではの実用性を追求

今回のプロトタイプでは、フロントまわりを中心にカモフラージュが施されている一方、ルーフやサイドの一部は比較的明確に確認できる。ブラック仕上げのルーフ、空力性能を意識したエアロホイール、そしてセダンよりも大型化されたリアドアが特徴だ。
特にリアドアの拡大は、後席への乗降性を高めるだけでなく、ステーションワゴンとしての使い勝手を重視した設計をうかがわせる。ルーフラインは後方まで伸び、セダンとは異なるロングルーフ形状を形成。荷室容量の拡大とスタイリングの両立を狙ったプロポーションとなっている。
フロントデザインは、新世代i3セダンと基本的な造形を共有する見込みだ。BMWの伝統的なキドニーグリルを新しい解釈で表現し、薄型の灯火類と組み合わせることで、従来のBMW製EVとは異なる先進的な表情を実現する。リアまわりはツーリング専用のデザインとなり、テールゲートやリアコンビネーションランプにも独自の処理が加えられると予想される。

日本ではSUV人気が高い一方、BMWの3シリーズツーリングは、スポーティな走りと荷室の使いやすさを両立するモデルとして独自のポジションを築いてきた。新型i3ツーリングも、SUVほど車高を必要としないユーザーや、セダンに近い運転感覚を求める層にとって魅力的な選択肢となりそうだ。
新世代EV「ノイエ・クラッセ」を採用! 走りと効率を両立
新型i3ツーリングの技術的な基盤となるのが、BMWの次世代EV専用アーキテクチャー「ノイエ・クラッセ」である。同シリーズは、電動パワートレーン、バッテリー、車載電子システム、デジタル技術を包括的に刷新するBMWの次世代戦略の中核を担う。先行するiX3とi3セダンに続き、i3ツーリングも同じ設計思想を採用するモデルとなる。
インテリアには、フロントガラス下部の広い範囲に情報を表示する「BMWパノラミック・ビジョン」の採用が有力だ。従来のメーターパネルに依存しない表示方式によって、ドライバーの視線移動を抑えながら必要な情報を提供する。また、最新世代の電動駆動システムや高効率バッテリー技術の採用により、航続距離と充電性能の向上も期待される。
パワートレーンについては、i3セダンとの共通化を基本に、後輪駆動仕様と四輪駆動仕様を展開する可能性がある。日本市場への導入を考えた場合、航続距離だけでなく、急速充電への対応も重要なポイントとなる。特に高速道路での長距離移動では、充電時間や国内の充電設備との適合性が使い勝手を左右することになる。
初走行で8分切り!? ニュルで見せた驚異の完成度
今回のスクープで特に注目したいのが、ニュルブルクリンクでの走行性能だ。現地からの情報によると、i3ツーリングのプロトタイプは数周のウォームアップを終えた段階で、すでに8分を切るラップタイムを記録し始めたという。しかも、この日は同車にとってニュルブルクリンク北コースでの初走行だったとされる。8分切りという数字が事実であれば、開発段階の電動ステーションワゴンとして注目すべき走行性能だ。
もっとも、今回のタイムは現地情報に基づくもので、BMWが公表した公式記録ではない。計測区間やタイヤ、車両仕様などの条件も明らかになっていない。重量が増加しやすいEVにとって、ニュルブルクリンクのような高速サーキットで安定した走りを実現するには、車体剛性や重量配分、サスペンション、電動駆動システムの緻密な制御が不可欠となる。BMWが長年磨いてきた走行性能を、電動ステーションワゴンでどこまで再現できるかが開発の大きなテーマとなっているようだ。
日本導入にも期待! 3シリーズツーリングの電動版となるか
新型i3ツーリングの登場時期については、2027年初頭が有力視されている。BMWはノイエ・クラッセを軸にEVラインアップを拡大しており、i3ツーリングは実用性と走行性能を両立する重要なモデルとなる。
日本市場でも、BMWのツーリングモデルは長年にわたって販売されてきた。3シリーズツーリングのユーザーにとって、同じような使い勝手を備えた電動モデルが加わる意義は大きい。特に、立体駐車場への対応や都市部での取り回し、十分な荷室容量など、日本の道路・駐車環境に適したパッケージングを実現できるかが注目される。また、EV専用プラットフォームの採用によって、従来のエンジン車とは異なる室内レイアウトや積載スペースの確保も期待できる。
ただし、日本導入の正式な発表はなく、国内向けの仕様や価格も明らかになっていない。
欧州ではステーションワゴンが根強い支持を集めており、i3ツーリングもまずは欧州市場を中心に展開されるとみられる。日本で発売されれば、従来の3シリーズツーリングとは異なる電動プレミアムワゴンとして、新たな選択肢を提供することになる。
SUV全盛の時代に、BMWがあえて電動ステーションワゴンを送り出す意義は小さくない。走りの楽しさと実用性を両立するツーリングの伝統が、次世代EVでどのように受け継がれるのか注目したい。










