シリンダーの歪みを抑制する裏技

450馬力オーバーを狙う場合は加工必須!

アルミ製オープンデッキ構造のエンジンは、高出力化に伴ってブロック剛性が不足しやすく、ガスケット抜けやピストンのカジリといったトラブルを引き起こしやすい。この弱点を克服するのが、内燃機加工のプロ「ARM」が手がける特許取得済みのクローズドデッキ加工である。

そもそもオープンデッキとは、シリンダー周囲がウォータージャケットに囲まれた構造を指す。冷却性能に優れ、量産性やコスト面で自動車メーカーにとって大きなメリットがある一方、大幅なパワーアップを施すとシリンダーの歪みが発生しやすくなる。その結果、ガスケット抜けやピストントラブルを招くリスクを抱えている。

こうした問題に対し、ARM式クローズドデッキ加工では、デッキ部に専用プレートを圧入することでシリンダー周辺の剛性を大幅に向上。燃焼圧による変形を抑制し、高負荷時でも安定したコンディションを維持できるようにする。もともとはホンダB型エンジン向けに開発された技術だが、VQエンジンの過給チューンが盛んだった時期にノウハウが確立され、現在ではFAやEJといった水平対向エンジンにも幅広く採用されている。

今回取材したのは、石川県のスタッズMから依頼を受けたFA20ブロックの加工現場だ。500ps仕様のドラッグマシン(ZN6)に搭載されていたエンジンで、レース走行による高負荷の影響からガスケット抜けやシリンダー歪みによるピストンのカジリといった深刻なダメージが発生。新品ブロックとピストンを用い、改めてクローズドデッキ化が施されることとなった。

加工は極めて精密な工程の連続だ。まずマシニングセンタにブロックをセットし、ウォータージャケット上部を切削。

デッキプレートが確実に収まるよう段差を設けながら、100分の1mm単位の精度で勘合部を仕上げていく。同時に、A2017材(ジュラルミン)からデッキプレートを削り出し、ブロックとの高精度な一体化を図る。

最終工程ではブロックを加熱し、膨張を利用した温間圧入によってプレートを組み込む。この際、外周側の締め付けが強すぎればクラックの原因となり、内周側がタイトすぎればピストンカジリを誘発するため、そのバランス調整が極めて重要となる。また、ウォータージャケット内に構造物を追加する関係上、エア噛みを防ぐための設計も欠かせない。

圧入後のシリンダーはわずかに変形するため、最終的には実際に使用するピストンに合わせたホーニング加工を実施。これにより、ようやく実戦投入可能な状態へと仕上げられる。

一見するとデッキ部を塞ぐシンプルな加工に見えるが、実際にはクリアランス設定や熱処理、冷却経路への配慮など、各工程で高度なノウハウが求められる繊細な作業だ。単なる剛性アップにとどまらず、エンジン全体のバランスを崩さず成立させる点にこそ、この加工の難しさがある。

そうした領域で長年にわたり実績を積み重ねてきたARMの存在は、ハイパワー化を目指すユーザーにとって、非常に頼れるパートナーと言えるだろう。

●問い合わせ:スタッズM 石川県小松市打越町甲97 TEL:0761-33-9097

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1980年代、TVドラマ『あぶない刑事』の影響もあり一世を風靡したF31レパード。現在でもそのスタイルに魅了されたコアなファンは多く、良質な個体をベースにリフレッシュする動きも活発だ。今回紹介するのは、石川県のチューニングショップ・スタッズMが手がけた1台。VG30DETの完全OHを軸に、細部まで丁寧に仕上げられた極上のリフレッシュマシンである。

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