カワサキZ1100SE……1,760,000円

試乗車は上級仕様のSEで、ブレンボ製フロントブレーキキャリパー+ディスクとオーリンズ製リアショック、USB電源を装備。ちなみにスタンダードの価格は、SEより17万6000円安い158万4000円。

得たモノと失ったモノ

正常進化ではあるけれど、個人的にはちょっとだけ残念な気が……。

大排気量並列4気筒ストリートファイターの先駆車として、長きに渡って世界中で支持を集めてきたZ1000シリーズの後継車、2026年型Z1100のプレスリリースを読んだとき、僕はそんな印象を抱いた。

何と言っても既存のZ1000シリーズは、近年の大排気量車では珍しく、電子デバイスに依存しない、漢気溢れる特性だったのである。

でも2026年型Z1100は、6軸IMU、電子制御式スロットル、トラクションコントロール、インテリジェントABS、パワーモード、クイックシフター、クルーズコントロールなどをイッキに導入し、僕はその事実が何となく腑に落ちなかったのだ。

スイッチボックスは近年の大排気量車で普及が進んでいる、カワサキの新たな定番品。右は始動/停止用のスライドレバーのみで、左にはクルーズコントロールや電子デバイスの設定を変更するボタンが備わる。

それに加えて、既存のZ1000シリーズの特徴だった4本出しマフラーとエキセントリック式チェーンアジャスターを廃止したことや、個性的な2階建てメーターに替えてスマホとの連携機能を備えるTFTディスプレイを採用したこと、排気量を拡大したエンジンがやや高回転高出力指向ではなくなったことも(既存のZ1000の最高出力が141ps/10000rpmだったのに対して、Z1100は136ps/9000rpm)、個人的には気になる要素。

まあでも、他社の大排気量ストリートファイターの装備や、厳しい排出ガス規制のユーロ5+に適合していることを考えれば、そのあたりに異論を言うべきではないのだろう。

と言うより、海外の一部地域以外では2022年頃から販売が途絶えていたZ1000が、こういう形で復活を遂げたことを喜ぶライダーは少なくないはずだ。

予想以上の扱いやすさに感心

ここまでの文章を読んでいただければわかるように、僕はZ1100の素性に、そこはかとない疑問を抱いていた。とはいえ、上級仕様のSEでストリートとサーキットを走った現在は、カワサキが行った改善に納得している。

本題の前に既存のZ1000シリーズに対する僕の印象を記しておくと、まず美点として挙げたいのは、スロットルとブレーキの操作に対する車体の反応がダイレクトにして刺激的で(腕に覚えのあるライダーなら、ウイリーやジャックナイフが簡単にできるはず)、コーナーへの進入では空間を切り裂くような一次旋回が味わえること。

ただしその一方で、フロントがメインのハードブレーキングではリアまわりのリフト、車体が傾いた状態でスロットルを開けた際は後輪の滑りが心配になるため、場面によっては探り探りの操作を要することは、個人的には漢気なのだが、欠点と言う人は少なくないだろう。

でもZ1100の場合は、乗り手の操作に対する俊敏な反応やコーナリングのキレ味をきっちり維持しつつも、インテリジェントABSのおかげでブレーキングはかなりの無理と融通が利くし、コーナーの立ち上がりでは頭のいいトラクションコントロールを信頼して、深くバンクした状態から思い切ってスロットルを開けられるのだ。

なお前述したように、エンジンの最高出力とその発生回転数は下がっているのだけれど、電子制御式スロットルを採用したZ1100は、あらゆる回転域で右手の操作に対する反応が従順だから、既存のZ1000シリーズ以上に中高回転域の爽快感と高揚感が満喫しやすくなっている。

また、パワーとスロットルレスポンスが控えめなレインモードは、雨天走行時だけではなく、市街地走行やロングツーリングなどでも有効な武器になると思う。

いずれにしても、このモデルは既存のZ1000シリーズと同等の資質を維持しながら、既存のZ1000シリーズとは別次元の扱いやすさを獲得しているのだ。

もっともライダーを支援する電子デバイスの導入によって、既存のZ1000シリーズの特徴のひとつだった漢気は薄れたけれど、今回の試乗でZ1100の魅力を実感した僕にとって、その点は取るに足らないこと……だったのである。

SUGOMIをコンセプトとする外装類のデザインは、既存のZ1000シリーズと同様だが、メーターバイザーとフロントフェンダー、アンダーカウルは新規開発。

ライディングポジション(身長182cm・体重74kg)

コンパクトなライディングポジションは、近年の大排気量ストリートファイター/スポーツネイキッドの王道と言いたくなる雰囲気。ただし既存のZ1000シリーズと比較すると、Z1100のハンドルグリップ位置は13mm前方/22mm幅広になっていて、この変更には操縦性の向上という狙いがあるようだ。なおシート高は815mmだが、着座面前部とシート下がスリムなため、公称値が810mmのZ900RSより足つき性は良好。

ディティール解説

フロントマスクは獲物に襲いかかる猛獣をイメージ。4灯式ヘッドライトはリフレクターレスLEDで、ローで内側2灯、ハイで4灯すべてが点灯する。
テーパータイプのハンドルはアルミ製。USB電源ソケットはSEならではの装備だが、純正アクセサリーとして購入することが可能。ブレーキ/クラッチキバーの基部には、位置調整用ダイヤルを装備。
5インチTFTディスプレイは、2つの画面を準備。上部にバーグラフ式タコメーターが見える写真はタイプ1で、スマホと接続すればターンバイターン式のナビを表示することが可能。
指針式を再現したタコメーターが主役のタイプ2では、中央のモニータに走行中のバンク角/加速度/減速度が表示できる。なおライディングモードは、スポーツ/ロード/レイン/カスタムの4種類。
前後分割式のシートは、他に類を見ない独創的なデザイン。タンデムシートはテールカウル/ランプより後方に飛び出している。
2025年に登場したニンジャ1100SXの技術を転用する形で、水冷並列4気筒エンジンは排気量を1043→1098ccに拡大。77mmのボアはそのままに、ストロークを56→59mmに延長している。
既存のZ1000シリーズを比較対象とするなら、ピストンやカム/クランクシャフト、バルブスプリング、吸排気系など、Z1100のパワーユニットは数多くの部品を新作。5・6速のギア比と1・2次減速比も、既存のZ1000シリーズとは別物。
フロントフォークはショーワのSFF-BP。調整機構はトップキャップに集中していて、左にプリロード、右に伸圧ダンパー用アジャスターを設置。
リアサスペンションはホリゾンタルバックリンク式。SEはリモート式プリロードアジャスター付きのオーリンズS46を採用。
フロントブレーキはφ310mmディスク+ラジアルマウント式対向4ピストンで、SEはいずれもブレンボ製。純正指定タイヤはダンロップQ5A。
リアブレーキはφ260mmディスク+片押し1ピストンキャリパー。従来は4本出しだったマフラーは集合式、エキセントリック式だったチェーンアジャスターはオーソドックスな構成となった。

主要諸元

車名:Z1100/SE
型式:8BL-ZRT10G 
全長×全幅×全高:2055mm×825mm×1085mm
軸間距離:1440mm
最低地上高:125mm
シート高:815mm
キャスター/トレール:24.5°/101mm
エンジン形式:水冷4ストローク並列4気筒
弁形式:DOHC4バルブ
総排気量:1098cc
内径×行程:77mm×59mm
圧縮比:11.8
最高出力:100kW(136ps)/9000rpm
最大トルク:113N・m(11.5kgf・m)/7600rpm
始動方式:セルフスターター
点火方式:フルトランジスタ
潤滑方式:ウェットサンプ
燃料供給方式:フューエルインジェクション
トランスミッション形式:常時噛合式6段リターン
クラッチ形式:湿式多板コイルスプリング
ギアレシオ
 1速:2.600
 2速:1.950
 3速:1.600
 4速:1.389
 5速:1.217
 6速:1.069
1・2次減速比:1.528・2.800
フレーム形式:ダイヤモンド(アルミペリメター)
懸架方式前:テレスコピック倒立式φ41mm
懸架方式後:ホリゾンタルバックリンク式モノショック
タイヤサイズ前:120/70ZR17
タイヤサイズ後:190/50ZR17
ブレーキ形式前:油圧式ダブルディスク
ブレーキ形式後:油圧式シングルディスク
車両重量:221kg
使用燃料:無鉛プレミアムガソリン
燃料タンク容量:17L
乗車定員:2名
燃料消費率WMTCモード値・クラス3-2:18.6km/L(1名乗車時)