ホンダ・スーパーカブ110Lite……341.000円

原付二種のスーパーカブ110の最高出力・最大トルクが、8ps/7500rpm・0.9kgf-m/5500rpmであるのに対して、新基準原付のスーパーカブ110Liteは4.8ps/6000rpm・0.7kgf-m/3750rpm。

8機種が存在するカブシリーズ

カブシリーズのタイヤは前後17インチが定番だが、プロ(左上)は前後14インチ。右上のクロスカブは、スーパーカブと多くの部品を共有。左下のスーパーカブC125は初代スーパーカブのC100、右下のハンターカブCT125は1981年に登場したCT110の姿を再現。

1958年型C100に端を発するホンダのカブシリーズは、近年になって史上最高?と思えるほどラインアップが充実している。

何と言っても、ベーシックモデルのスーパーカブ50/110と配達業務に特化したプロ50/110に加わる形で、2013年からはクロスカブ110、2018年からはクロスカブ50とスーパーカブC125、2020年からはハンターカブCT125が販売されているのだから。

もっとも、50cc×モデル3台の生産はすでに終了したのだが、2025年末には原付一種免許や普通自動車免許で運転できる新基準原付として、最高出力と最大トルクを控えめに設定した110Lite×3台が登場しているので、8台態勢に変更はない。

改めて考えると近年のアンダー125ccクラスで、ここまで幅広いバリエーションを展開しているのは、世界で唯一、カブシリーズだけだろう。

ベーシックモデルならではの魅力

そんなカブシリーズのどのモデルに好感を抱くかは各人各様で、ツーリングとオフロードとクラシックバイクが好きな僕の場合、最近の1番手はハンターカブCT125で、2番手はクロスカブ110とC125だった。

でも今回のガチ1000km試乗を通して、今までは何となく選外だったベーシックモデルの株が急上昇している。

現行カブシリーズの寸法比較。全高はC125が最も低いけれど、それ以外の要素はベーシックモデルのスーパーカブ110/Liteが最小・最短・最軽量。

その一番の理由は、圧倒的な気軽さだ。

と言っても一般的な基準で考えれば、カブシリーズはどのモデルも気軽なのだが、全長と軸間距離が短く、全高とシートが低く、全幅が狭く、車重が軽いベーシックモデルは、やっぱり他機種より明らかに気軽だったのである(最小回転半径は、ベーシックモデルとプロが1.9mで、他機種は2.0m)。

では実際の走行中に、気軽さがどんな恩恵をもたらしてくれるのかと言うと、まず混雑した市街地を走るのが楽だし、ツーリング中に絶景や名所を見つけた際のストップ&ゴーも楽。

さらに言うなら、先がどうなっているかわからない脇道に入る際の心の余裕や、田舎の集落などで周囲の景色に馴染みやすいという点でも、ベーシックモデルは他機種以上の資質を備えているように思う。

もっとも、ロングランでの快適性や悪路走破性という視点で見るなら、前後サスのストロークが長くて(ベーシックモデル:90/65mm、クロスカブ:105/77mm、C125:100/84mm、CT125:110/86mm)、シートのウレタンが厚い他機種のほうが、ベーシックモデルより有利なのだ。

とはいえ、気軽さが魅力のベーシックモデルもロングランは十分に楽しめるし、車格の小ささは安心感や自信に貢献するので悪路も意外にイケる。

いずれにしても、ベーシックモデルの資質に感心した僕は、軽くて小さくてフレンドリーなこの車両こそが、カブシリーズの王道であることを改めて実感。そしてベーシックモデルの株が急上昇したことで、僕の中のカブシリーズの順位は、現在は混沌としているのだった。

新基準原付で1000kmは、厳しかった……

さて、ここまではベーシックモデルならではの魅力を中心にして、カブシリーズ全体に通じる内容を記してきたが、原付一種免許や普通自動車免許で運転できる新基準原付のスーパーカブ110Liteを、僕が多くの人にオススメしたいのかと言うと……、それは微妙なところである。

もっとも第1回目に記したように、市街地でのLiteはかなりの好感触で、既存のスーパーカブ50よりイイかも?と僕は感じていた。

でも普段の自分の感覚でツーリングに使ってみると、印象はイッキに悪化。過去に当企画で取り上げたクロスカブ110やハンターカブCT125が、ノルマの1000kmを楽勝で走れたのに対して、Liteで1000kmはかなりの難事業だったのである。ただしその理由は、Liteの動力性能ではなく、道路交通法だ。

具体的な話をするなら、速度上限は30km/h、片側三車線以上の道路は二段階右折というルールを守って走るのは、僕にとってはストレスだった。

二段階右折はさておくとしても、今回の試乗で僕は改めて、1950年代中盤(1960年という説もアリ)に制定された原付一種の速度の上限に、猛烈な違和感を抱いたのである。

などと言うと、安全のためとか初心者のためなどいう意見が返ってきそうだが、1950年代中盤~1960年と言ったら、国道の半分以上がまだ未舗装で、自転車に原動機を取り付けた車両が数多く存在した時代である(ホンダは1949年に初のモーターサイクルとなるドリームD型を世に送り出しているが、その一方で1952年に自転車に取り付ける補助エンジンのカブFを発売)。

そんな時代から原付一種の速度の上限が変わっていないというのは、どう考えてもおかしな話ではないだろうか。

価値はあるものの、オススメしづらい

もっとも、配達や農作業の移動や営業回りといった用途に使うなら、速度の上限は気にならないのかもしれないし、世の中には30km/hの速度制限を守って50ccライフを楽しんでいるライダーが大勢いると思う。

そして現在の小型二輪免許の取得費用(普通自動車免許の所有者は10万円前後で、何も免許を持っていない場合は15万円以上)を考えると、原付一種免許(費用は9000円前後で、1日で取得可能)や普通自動車免許で運転できる新基準原付には、やっぱり大きな価値があるのだ。

とはいえ、今現在の僕が周囲の友人知人からスーパーカブ110Liteの購入を相談されたら、小型二輪免許を取得してスタンダードのスーパーカブ110を購入したほうが、楽しいバイクライフが送れると思いますよ…と答えそうである。

ただし、原付一種の速度の上限が見直されたら、あるいは、新基準原付を購入したライダーが後に小型二輪免許を取得した際に、ナンバープレートを原付一種から原付二種に変更できるシステムが存在したら、僕の返答は変わってくるのだが、変化や面倒事を嫌う日本の行政を考えると、それはなかなか難しいだろう。

純正指定タイヤはIRCのNF63B Y/NR78(チューブレス)。フロント:70/90-17・リア:80/90-17というサイズも含めて、スーパーカブ110のスタンダードとまったく同じ。

主要諸元

車名:スーパーカブ110Lite 
型式:8BH-JA76 
全長×全幅×全高:18600mm×705mm×1040mm 
軸間距離:1205mm 
最低地上高:138mm 
シート高:738mm 
キャスター/トレール:26°30′/73mm 
車両重量:101kg 
エンジン形式:空冷4ストローク単気筒 
弁形式:OH2バルブ 
総排気量:109cc 
内径×行程:47mm×63.1mm 
圧縮比:10.0 
最高出力:3.5kW(4.8ps)/6000rpm 
最大トルク:6.9N・m(0.7kgf・m)/3750rpm 
始動方式:セル・キック併用式 
点火方式:フルトランジスタ 
潤滑方式:ウェットサンプ 
燃料供給方式:フューエルインジェクション 
トランスミッション形式:常時噛合式4段リターン 
クラッチ形式:湿式多板コイルスプリング・自動遠心式 
ギアレシオ 
 1速:3.142 
 2速:1.833 
 3速:1.333 
 4速:1.071 
1・2次減速比:3.421・2.500 
フレーム形式:バックボーン 
懸架方式前:テレスコピック正立式φ26mm 
懸架方式後:スイングアーム・ツインショック 
タイヤサイズ前:70/90-17 
タイヤサイズ後:80/90-17 
ブレーキ形式前:油圧式シングルディスク 
ブレーキ形式後:機械式ドラム 
使用燃料:無鉛レギュラーガソリン 
燃料タンク容量:4.1L 
乗車定員:1名 
燃料消費率国交省届出値:105.0km/L 
燃料消費率WMTCモード値・クラス1:67.5km/L 

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