GT-Rの心臓と駆動系を得た、究極のR32セダン
BNR32の魂を4ドアに宿した幻のGTB
2代目S50系の途中から7代目R31系の終盤まで歴代スカイラインの開発主管を務め、『スカイラインの父』と呼ばれた櫻井眞一郎氏。その後、オーテックジャパンの初代社長に就任し、1995年に独立すると、特装メーカーのS&Sエンジニアリングを立ち上げた。4ドアGT-Rと言える取材車両のGTBは、そこで生み出された一台となる。

HNR32改という車両型式から分かる通り、ベースはRB20DETとアテーサE-TSを搭載するGTS-4。しかし、ボンネットの下には、独自のチューニングが施された380ps仕様のRB26DETTが収められる。
「以前はオーテックGTB-4に乗っていて、知り合いから引き取る形でこれに乗り替えたのが2014年〜2015年頃。S&Sが手掛けたGTBの正確な生産台数は分からないけど、たぶん10台あるかどうかだと思う。ちなみに、S&SではHCR32ベースでRB26を載せたFR仕様も何台か作っていたみたいね」とはオーナーであり、かつてSRC(スカイライン・レッドエンブレム・クラブ)会長も務めた荻窪さんの話だ。
GTBが誕生した背景には、同じパワートレインが与えられた先発モデル、オーテック時代に櫻井氏が関わったGTB-4の存在がある。その後、櫻井氏が率いたS&Sエンジニアリングの元に、「GTB-4と同じ仕様を作ってほしい」との声が届いたとしても不思議ではない。そんなリクエストに応え、GTBは世に放たれることになった。

S&Sエンジニアリングで組み上げられたコンプリートエンジン。専用ECUで制御されるブーストアップ仕様でパワーは380psを誇る。「380psというのは、プリンス自動車時代に櫻井さんが開発に携わったプロトタイプレーシングカー“R380”に由来するんですよ」と荻窪さん。

ボンネットの裏には、櫻井眞一郎氏、伊藤修令氏、渡邉衡三氏と、歴代スカイラインを手掛けた開発主管による貴重な直筆サインも並ぶ。

ホイールはBNR32純正の16インチ鍛造アルミ。そこに、225/50サイズのアドバンフレバが組み合わされる。また、足回りやブレーキキャリパー&ローターもBNR32と同じ仕様。フロントフェンダーに付く赤いGTエンブレムはKPGC110ケンメリGT-R純正で、荻窪さんいわく、「その時あったエンブレムを付けたんじゃないかな」とのこと。

ダッシュボードやメーターパネル、ステアリングホイールはBNR32に準じたもので、運転席からの眺めもそのままだ。

前席もBNR32純正が装着され、ニスモ製シートカバーで覆われる。また、後席はシート生地がBNR32と同じエクセーヌとダブルラッセルのコンビに張り替えられ、その色合いを含めて4ドアGT-Rに相応しい仕上がりとなる。


ドアとクォーターパネルを専用設計することで、4ドアボディで見事に再現されたリヤブリスターフェンダー。その造形はオーテックGTB-4とは異なり、よりボリューム感が増している。また、フェンダーに合わせて後部を拡幅したリヤドアにも独自のキャラクターラインが追加され、個性的なサイドビューを生み出す。

荻窪さんいわく、「GTB-4もワイドボディだけど、2台を並べて見比べてみると、リヤフェンダーの張り出し具合が微妙に違う。GTBの方がより膨らんでいるんだよね」とのこと。どちらもスペシャルモデルであることには変わりないけど、後から登場したGTBの方が迫力も増しているのが事実だ。
第二世代における4ドアGT-Rというと真っ先に思い浮かぶのはBCNR33改だろう。だが、実はR32の時代にもごく少数ながら存在した。中でも、櫻井眞一郎氏の魂が最も深く宿っていると思わせてくれるのは、このGTBをおいて他にない。
