95.8kWhバッテリーやDIRECT4を採用し、航続距離約620kmを実現

レクサスは2026年5月、新型3列シートBEV(バッテリーEV)「TZ」を世界初公開した。日本導入時期については「2026年冬」と案内されているが、入手した情報によると、日本仕様は12月頃の発売が有力とみられている。

レクサス TZ

新型TZは95.8kWhの大容量バッテリーやDIRECT4四輪駆動システムを採用し、WLTCモード航続距離約620kmを実現。世界最大級のシェード開口部を備えたパノラマルーフや、手をかざすことで操作アイコンが点灯する「Responsive Hidden Switches」、レクサスSUVとして初採用となるオットマンなど、最新技術を惜しみなく投入したフラッグシップBEVである。

しかし、新型TZの価値はスペックだけではない。このモデルは、日本市場におけるレクサスSUVラインアップの「最後の大きな空白」を埋める存在になる可能性がある。

現在、日本で販売されるレクサスSUVは、コンパクトなLBXを皮切りに、UX、NX、RX、GX、そしてフラッグシップのLXまで幅広いモデルが揃っている。一見すると隙のない布陣に見えるが、これまで残されていた大きなカテゴリーがあった。

それが、「3列シートを備えたラグジュアリーSUV」である。

レクサス TZ

もちろん、3列シート車そのものが存在しなかったわけではない。LXには3列仕様が設定され、高級ミニバンのLMも3列シートを採用している。しかし、LXは本格オフローダーという性格が色濃く、LMはショーファーユースを重視した高級ミニバンである。いずれも「上質な3列SUV」とは異なる価値観で開発されたモデルと言える。

一方、日本市場で高い人気を誇るRXは2列シートのみだ。「レクサスブランドで3列SUVを選びたい」というニーズは以前から存在していたが、その受け皿となるモデルはなかった。

その空白を埋める存在として期待されるのがTZである。

さらに興味深いのは、このモデルが単独で開発されたわけではないとみられる点だ。入手した情報によると、TZはトヨタブランドが開発を進める3列シートEVと基本設計を共有する可能性が高く、海外ではトヨタブランドの3列EVとの関連を指摘する見方もある。レクサスブランドが先行し、その後にトヨタブランドへ展開される大型EV戦略の第一弾となる可能性もありそうだ。

では、なぜレクサスは北米で販売するTXではなく、日本にはTZを投入するのか。

その答えは、日本市場とレクサスのブランド戦略の両方にあると考えられる。

北米では大家族向け需要を背景に、ガソリン車やハイブリッド車、PHEVを設定するTXが重要な役割を担っている。一方、日本ではBEV市場そのものはまだ発展途上だが、高価格帯では環境性能だけでなく、静粛性や上質な移動空間といった価値も重視される。BEVならではの滑らかな加速や高い静粛性は、高級ブランドであるレクサスとの親和性も高く、日本市場へ投入する3列モデルとしてTZが選ばれた理由のひとつと考えられる。

現在のラインアップを見渡しても、その狙いは見えてくる。LBXがエントリー、UXとNXが主力、RXがラグジュアリーSUV、GXとLXが本格クロスカントリーという役割を担い、LMは高級ミニバンという新たな市場を切り開いた。そこへTZが加われば、「3列シートのラグジュアリーSUV」という最後の大きな空白が埋まり、レクサスSUVラインアップは完成形へ大きく近づくことになる。

もちろん、TZがLMやLXのユーザーをそのまま置き換えるモデルになるわけではない。LMはショーファーユース、LXは本格SUVという明確な役割を担っている。

一方、日本市場ではアルファードやヴェルファイアをはじめとする高級ミニバンの人気が非常に高く、快適な3列シート車への需要そのものは成熟している。TZは、そうした市場に対して「3列ラグジュアリーSUV」という新たな選択肢を提示するモデルとも言える。高級ミニバンからSUVへの乗り換えを検討するユーザーや、BEVならではの静粛性と3列シートを求める層にとって、新たな受け皿となる可能性もありそうだ。

さらに、TZは今後のレクサスBEV戦略を占うモデルでもある。現在、BEVはRZが2列SUVを担っているが、TZの投入によって「2列」と「3列」という役割分担がより明確になる。レクサスはすべてのモデルを一律にBEVへ置き換えるのではなく、ハイブリッド、PHEV、BEVを車種ごとに最適化しながら展開していく戦略を進めていくとみられる。

新型TZは、新しいEVが1台加わるというだけの話ではない。レクサスが長年築き上げてきたSUVラインアップに最後の大きなピースをはめ込み、電動化時代に向けたブランド戦略をさらに前進させる存在である。

日本仕様の価格やグレード構成などは今後明らかになる見込みだ。その詳細が判明すれば、レクサスが描く次世代SUV戦略もさらに鮮明になってくるはずだ。