「GT 63 SUV」には、厚みが薄く高トルクを引き出せる「アキシャルフラックスモーター(軸方向磁束型)」を3基搭載。さらに、総電力量128kWhの800Vバッテリーは、一般的な角形やパウチではなく「円筒形(シリンドリカル)セル」を採用し、セルを直接冷却液に浸す(Directly cooled)熱マネジメントシステムを備えている。このバッテリー熱マネージメントが注目点の一つだ。
先般、EVgoが「750kW充電器」を発表したが、ついに車両側がその領域に到達したのが今回のトピック。800Vアーキテクチャで710kWを受電するということは、最大で計算上「900A近い」尋常ではない大電流が流れることを意味する。この「充電時の強烈な発熱」と「1153馬力の放電時の発熱」を抑え込むために、円筒形セルの周囲に絶縁性オイルを直接流すことで、各セルを均一に冷却するという強固な熱マネジメント構造を量産車に適用した。
正極材はNCMA(ニッケルコバルトマンガンアルミニウム)。このNCMA型の一般的な性質をおさらいしてみよう。
昨今、電気自動車の航続距離を延ばすためにニッケルの割合を極限まで増やす(ハイニッケル化)開発が進むが、ニッケルを増やすと充電に伴うリチウムの脱離によって構造変化が進みやすくなる。そこで、ごく少量のアルミニウムを構造内に混ぜ込むことで、ハイニッケル系で生じるこうした現象を抑えられる。
デメリットは、組成と微細構造の制御が難しいこと。Alの添加量や分布、合成方法によって、得られる正極材の性能が大きく変わるのだ。また、NCMにAlを導入すると、正極材の構造安定性を高められる一方、Al自体は充放電反応にほとんど寄与しないため、添加量によっては容量が低下する。Alの添加量や分布、合成方法によっても特性は変化し、構造安定性、容量、レート特性のバランスをどう取るかが開発上のポイントとなる。実際、Alの置換によってレート特性が改善したNCMAの研究例もあり、組成と微細構造の最適化が続いている。
今回のメルセデスAMGが用いるセルにこれらがすべて該当することは確認できていないが、NCMA一般の材料設計上の特徴として理解しておきたい。
セル規格は26105(直径26mm/高さ105mm)。次世代量産BEV向けとしてメルセデスが調達を予定している46100セルに比べて、セル中心から表面までの距離を短くして放熱を効率化した。フルタブ設計により内部抵抗を低減し、充電および放電性能を確保した。エネルギー密度は298Wh/kg以上。バッテリー総電力量は「GT 63 SUV」「GT 55 SUV」が128kWh、「GT 53 SUV」が106kWh。直流充電時の最大受入電力は128kWhパックが710kW/106kWhパックが600kW、同じく交流充電時の最大受入電力は両者ともに11kW。