【マクラーレン クロニクル】ビバリーヒルズの発案から誕生した「セイバー」

ビバリーヒルズの発案から誕生したフューオフモデル「セイバー」とは?【マクラーレン クロニクル】

ベースとなっているのは、2018年に正式に発表された、アルティメットシリーズの「セナ」。故アイルトン・セナの名前を冠したハイパーカーである。
ベースとなっているのは、2018年に正式に発表された、アルティメットシリーズの「セナ」。故アイルトン・セナの名前を冠したハイパーカーである。
今回のマクラーレンの中でもレアな限定車「セイバー」を紹介する。マクラーレンのアメリカ・ビバリーヒルズの発案によって、15人のカスタマーとMSO(マクラーレン・スペシャル・オペレーション)の共同で製作されたフューオフモデルである。

McLaren Sabre

アメリカ市場からの要求によって製作を決断

フロントスポイラー、サイドスカート、ディフューザー、リヤウイングなどは専用デザイン。そのエアロダイナミクスはより最適化され、同時にそのボディのアピアランスもセナとは異なる独特な個性を感じさせる。

どこのスーパーカーメーカー、あるいはそれを超えるハイパーカーメーカーにとっても、最も重要な市場となるのはアメリカだ。それはマクラーレンにとっても同じ事情であり、時にはアメリカ市場からの要求によってニューモデルの製作を決断する時もある。

ここで紹介する「セイバー」はその代表的な例で、これはマクラーレンのアメリカ・ビバリーヒルズの発案によって、15人のカスタマーとともにMSO(マクラーレン・スペシャル・オペレーション)との共同で製作された限定車となっている。

セイバーのベースとなっているのは、2018年に正式に発表された、アルティメットシリーズの「セナ」。伝説のF1ドライバーであり、マクラーレンにとっては最も貴重な、故アイルトン・セナの名前を冠したハイパーカーである。リアミッドには4.0リッターV型8気筒ツインターボエンジン「M840TR」型を搭載し、最高出力で800PS、最大トルクでは800Nmのスペックを誇り、この数字は内燃エンジンのみを搭載するマクラーレンのモデルとしては史上最強のものだった。

独特な個性を感じさせるアピアランス

最高速はセナが340km/hであったのに対して、セイバーは350km/hと10km/hのアドバンテージがある。
最高速はセナが340km/hであったのに対して、セイバーは350km/hと10km/hのアドバンテージがある。

このセナがアルティメットシリーズの前作であるP1と大きく異なったのは、エレクトリックモーターを搭載しなかったことで、結果その重量は1198kgにまで低減することに成功した。この世界最高水準のハイパーカーを、MSOと15人のカスタマーはさらにどのように進化させたというのだろうか。

MSOがまず手がけたのは、さらにボディのエアロダイナミクスを向上させることだった。オンロードでの走行を想定しない、そしてあらゆるレースカーのレギュレーションからも解放されたセイバーのボディは、フロントスポイラー、サイドスカート、ディフューザー、リヤウイングなどが専用デザインとされ、そのエアロダイナミクスはより最適化され、同時にそのボディのアピアランスもセナとは異なる独特な個性を感じさせるものとなった。

そしてMSOは、セイバーにセナからさらに35PSをパワーアップした、835PSの最高出力を発揮する(最大トルクに変化はない)、よりチューニングを進めたV型8気筒ツインターボエンジンを搭載。最高速はセナが340km/hであったのに対して、セイバーは350km/hと10km/hのアドバンテージを得ることに成功。ちなみにこの最高速は、2シーターのマクラーレン車としては史上最速のものとなる数字だった。

15人のカスタマーはテストドライブのプログラムにも参加

一般道走行を想定しない、そしてあらゆるレースカーのレギュレーションからも解放されたボディがセイバーの魅力だ。
一般道走行を想定しない、そしてあらゆるレースカーのレギュレーションからも解放されたボディもセイバーの魅力だ。

セイバーをオーダーした15人のカスタマーは、その開発段階からイギリスのマクラーレン本社内にあるMSOでディスカッションを進めたり、またイギリスやアメリカでテストドライブのプログラムにも参加したりすることができたという。

カスタマーとMSOの共同開発でニューモデルを誕生させるというビジネスモデルは、これからますますハイエンドのブランドにおける限定車では一般的な手法になっていくのだろうか。改めてそれを考えさせられたマクラーレンの作品だった。

720Sをベースとするセナのモノコックとエンジン。最高出力800PS、最大トルク800Nmを発揮する「M840TR」4.0リッターV型8気筒ツインターボを搭載する。

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著者プロフィール

山崎元裕 近影

山崎元裕

中学生の時にスーパーカーブームの洗礼を受け、青山学院大学在学中から独自の取材活動を開始。その後、フ…