【フェラーリ名鑑:30】ハイブリッドを得た新世代フェラーリの台頭

フェラーリに訪れたハイブリッド黎明期を振り返る「ラ フェラーリ」「SF90ストラダーレ」(2013-2019)【フェラーリ名鑑:30】

【フェラーリ名鑑:30】ハイブリッドを得た新世代フェラーリの台頭
フェラーリのハイブリッドモデルに先鞭をつけたラ フェラーリ。
スーパーカー界にもサステナビリティの要請が強くなり、ついにフェラーリも電動システムを備えたモデルをリリース。そのトップを飾ったのはHY-KERSを搭載した「ラ フェラーリ」だった。本項ではV12搭載のラ フェラーリと、V8ツインターボ搭載のSF90 ストラダーレを解説する。

Ferrari LaFerrari / SF90 Stradale

システム出力963PSを実現した「ラ フェラーリ」

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F1由来のハイブリッドシステム「HY-KERS」を搭載してリリース。0-100km/h加速3秒以下、最高速度は350km/h以上を記録する。

フェラーリの生産台数は年々増加の傾向にあるが、その一方で気になるのはいつ1万台を突破するか?だろう。なぜならこの1万台という数字は、少量生産メーカーとしてみなされるかどうかのラインであり、それを超えた場合には、フェラーリもCO2排出規制を受けることになるからだ。かつて同社の会長職にあったルカ・ディ・モンテゼーモロは、プレミアム・ブランドとしてのバリューを保つための生産台数の上限は7500台程度だろうと語っていたが、現在の数字はそれを超えて1万台を意識しなければならなくなっている。

この厳しいCO2規制を意識してか、フェラーリは最近、パワーユニットのハイブリッド化に積極的な姿勢を見せている。その先陣を切って2013年のジュネーブ・ショーで発表されたのが「ラ フェラーリ」である。軽量で高剛性なカーボン製モノコックを基本構造体に採用していることや、F140系のV型12気筒エンジンを搭載することなどは、限定生産を前提としたスペチアーレの前作、エンツォから変わらないが、ラ フェラーリではフェラーリ独自のハイブリッドシステム、HY-KERSが採用されたことが大きなトピックスだった。

最高速度350km/h、0-100km/h加速3秒以下

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2013年のジュネーブ・ショーで衝撃的なデビューを遂げた。エンジン+モーターのシステム最高出力は963PSに達する。

HY-KERSのシステムは2個のエレクトリックモーターで構成されており、ひとつはV型12気筒エンジンに組み合わされる7速DCTと一体設計され、必要時に直接エクストラパワーを伝達。またもうひとつのモーターはエンジンの前方にレイアウトされ、二次電池に接続されている。それによって減速時にはジェネレーターの役割を果たし、発生した電力をバッテリーに蓄える仕組みだ。

エンツォ時代のサーキット専用モデル、FXXと同じ6262ccのV型12気筒エンジンが発揮する最高出力は800PS。さらに必要時にはモーターから163PSの最高出力が加わり、トータルで963PSのパワーが発揮される。フェラーリからの発表値によれば、0-100km/h加速は3秒以下、最高速度は350km/h以上に達するという。

V8ツインターボに3モーターを組み合わせる「SF90 ストラダーレ」

フェラーリ図鑑_SF90_ストラダーレ_スタイリング_02
車名のSF90はスクーデリア・フェラーリの90周年に因む。グリッド電源に対応したプラグインハイブリッド方式を採用する。
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フルデジタルスクリーンに加えてヘッドアップディスプレイも備えるSF90 ストラダーレのコクピット。

それから約6年の時間が流れ、フェラーリが2019年5月に発表した「SF90 ストラダーレ」は、さらに進化したハイブリッドシステムをもつ。最大の特徴は外部電源からの充電が可能なPHEVのシステムが採用されていることだろう。

フェラーリとしては初のPHEVとなるSF90 ストラダーレは、780PSの最高出力を誇る4.0リッターV型8気筒ツインターボエンジンに、3個のエレクトリックモーターを組み合わせたパワーユニットをもつモデル。モーターの合計出力は220PSで、前輪の左右各々、そしてエンジンと新開発の8速DCTの間にレイアウトされ、後者のパワーはもちろん後輪へと伝達される。その結果、システム出力は実に1000PSに達している。

インテリアのフィニッシュは、いかにも現代のフェラーリといった印象だ。メーターパネルは16インチのフルデジタルスクリーンによるもので、ヘッドアップディスプレイも標準装備。ステアリングホイールにはエレクトロニック・ビークルダイナミクス・モードセレクター(eマネッティーノ)のスイッチがレイアウトされており、バッテリーがフルチャージの状態なら最大25kmのエレクトリック走行が可能な「eドライブ」のほかに「ハイブリッド」「パフォーマンス」「クオリファイ」の各モードを選択できる。

スクーデリア・フェラーリ90周年記念モデル

4.0リッターV8ツインターボに3基の電気モーターを協調させ、システム最高出力は1000PSの大台を達成している。

フェラーリ・スタイリングセンターによるエクステリアデザインは、斬新かつ高性能なもの。走行中のダウンフォースは250km/h時に390kgと発表されている。また、SF90 ストラダーレではスタンダード仕様と、スポーツ仕様となる「アセット・フィオラーノ」の選択が可能。後者はマルチマチック・ダンパーやチタン製のスプリング&エキゾーストシステムなどを採用。さらに運動性能を向上させるためのアイテムが標準装備される。

0-100km/h加速で2.5秒、最高速で340km/hを誇るSF90 ストラダーレ。SF=スクーデリア・フェラーリの90周年を祝するには、十分すぎるほどの魅力を備えたモデルと言えるだろう。

SPECIFICATIONS

ラ フェラーリ

年式:2013年
エンジン:65度V型12気筒DOHC
排気量:6262cc
最大合計出力:963PS
最大合計トルク:900Nm以上
V12 最高出力:588kW(800PS)/9000rpm
V12 最大トルク:700Nm/6750rpm
電気モーター出力:120kW(163PS)
最高速度:350km/h以上

フェラーリ SF90 ストラダーレ

年式:2019年
エンジン:90度V型8気筒DOHCツインターボ
排気量:3990cc
最大合計出力:1000PS
V8 最高出力:574kW(780PS)/7500rpm
V8 最大トルク:800Nm/6000rpm
電気モーター出力:162kW(220PS)
最高速度:340km/h

※すべてメーカー公表値

解説/山崎元裕(Motohiro YAMAZAKI)

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著者プロフィール

山崎元裕 近影

山崎元裕

中学生の時にスーパーカーブームの洗礼を受け、青山学院大学在学中から独自の取材活動を開始。その後、フ…